第108話 投票部新副部長の天海さん

「おい、颯? あの子、颯と同じ様な瓶底メガネをしているな!?」


「あ、ああ、そうだな……ってか、天海さんが説明してくれているんだからちゃんと聞けよ、俊哉!!」


「ハハハ、すまん、すまん」


 きっと俊哉は天海さんのメガネを笑おうとしたんだろうけど、もし天海さんの素顔を見たら、お前を含めて学園中の奴等が超絶美人過ぎて驚きまくるんだからな!!


 はぁ……天海さん、メガネを外さないかなぁ……


 いや待て。素顔の天海さんを見た瞬間、学園中の野郎どもが言い寄るに違いないから今はメガネを外さない方がいいよな?


やっぱ素顔の天海さんを知っているのは俺だけだという方が嬉しいし……


素顔って言葉で一つ思い出したが、うちの学園の体育の授業は中等部の時もそうだが『選択制』になっている。


今の時期は水泳授業も始まっているが俺は水泳を選択していない。何故かと言えばメガネを外す回数が増えるからだ。


天海さんと同じく俺もメガネを外した素顔を見られたくないというのもあるし、マジでメガネを外すと何も見えないからという理由もある。


前に天海さんも図書室で同じことを言っていた。


まぁ、男としては女子の水着姿を見れないという寂しさもあるが、俺の場合はそんな事は言っていられないのだ。


なので、俺は中等部の頃から球技ばかりを選択していた。


あっ、俺もちゃんと天海さんの説明を聞かなくては……



「まず、『学年人気投票』は七月七日の七夕の日に行われます。そしてクラス委員長選挙同様に投票用紙には皆さんが一番良いと思われた生徒の名前をフルネームで記入してください。そしてご自身の名前も記入してくださいね?」


 へぇ、七夕に開催なんて分かりやすいよな? 何か意味があるのだろうか?


「はい、質問いいですか!?」


 げっ、俊哉!?


「は、はい……構いませんよ……」


「『学年人気投票』が七夕に行われるのには何かロマンティックな意味でもあるんですか!?」


 男がロマンティックとか言うなよな。特に俊哉みたいなのが……


「別にロマンティックな意味は無いと聞いています。ただ、七月といえば七夕が有名ですので、皆さん、投票日を覚えやすいとは思いますが……」


「なるほどーっ!! ありがとう、天海さん!!」


 あっさり納得したのか、俊哉?


「いえいえ、それでは引き続き説明をさせて頂きますが、投票用紙は本日、皆さんにお渡しします。そして七月七日の終わりのホームルーム時間に私が一組から順に回収箱を持って周りますので記入した投票用紙を回収箱に投入してください」


「はい、質問!!」


 ん? 今度は太鳳かよ!?


「はい、どうぞ……」


「もし、投票用紙を無くしてしまった場合はどうなるのですか?」


 おっ、そうだよな。太鳳にしては良い質問だぞ。


「はい、投票用紙を紛失した場合は残念ながら投票権を失います」


「えーっ!? そ、そうなのぉぉ!?」


 えらい、厳しいんだなぁ?


「投票権を失うのは用紙を紛失した場合だけではありません。投票用紙の誤字脱字もそうですが、投票日当日に体調不良等で欠席した場合も投票権は失いますので皆さん、健康管理はしっかりとしてくださいね?」


 ガヤガヤガヤガヤ……ガヤガヤガヤガヤ……


 さすがに教室中がざわつきだしたぞ。まぁ、仕方無いよな?


 たかが『学年人気投票』ごときで、ここまで厳しいシステムとは……



「はーい、皆さーん、静かにしてちょうだーい!! 先生からも一つだけ補足しておきまーす。多分、今の説明で『学年人気投票』ごときで厳し過ぎないかって思った人もいるかもしれないけど……」


 俺の事かよ!?


「この学園内で行われる様々な『人気投票』の結果で今後、皆さんの進路が大きく関わっていくので決して『たかが人気投票』だと思わないでねぇ?」


あっ、そういえばそうだったよな。


順位によって推薦をもらえる大学が変わっていくって前に魔冬から聞いた事があるぞ。


「ちなみにこの『学年人気投票』の一、二年生の一位と二位のみ秋に行われる『生徒会長選挙』に立候補する権利を持つことができるのは知っているわね? でも立候補する権利の無い三年生もこの『学年人気投票』で上位に入れば進路が大きく変わるシステムだから仙石学園生としてはとても大事な行事だという事を忘れないでねぇ?」


 シ―――――――――――――――――――ン


 黒田先生の話でさすがにみんな静かになったなぁ……


 まぁ、うちの学園は進学校だからな。そりゃぁ、みんな良い大学に行きたいだろうし……

 俺もそのうちの一人だけどな。



「最後に一つ、言わせてください。おそらく大丈夫だとは思いますが、くれぐれも脅迫まがいな事はしないようにしてくださいね? もしそういった行為が判明した場合、その人はこの学園を強制退学となりますのでお気をつけてください……」


 きょっ、強制退学!?


 いやマジでうちの学園は『人気投票制度』に命を懸けているって感じがするぞ!!


 まぁ、そのお陰でこの学園には『イジメ』が無いんだから大した制度だけどな。


 ほんと、この制度を考えた昔の生徒会長さんに直接、お礼が言いたくなっちまうぜ。



「『投票部』からの説明はこれで終わりです。皆さん、最後までお聴きくださり有難うございました」


 パチパチパチパチ……


「あっ? 皆さん、くれぐれも『投票部部員』に投票はしないでくださいね?」(ニコッ)


「 「 「 「ハハハハハハ!!」 」 」 」


 え? 天海さんの最後の笑顔……


 眼鏡越しだから分かりにくいけど俺に対してニコッとした様な気が……


 俺、自意識過剰かな?


 最近、美少女達に告白されまくっているから、いつの間にか俺、調子に乗っているんじゃないのか? いかんいかん、俺は『陰キャオタク』なんだぞ!!


 ……しかしアレなんだよなぁ……


 本当は俺、一番話が合う天海さんに投票したかったんだけどなぁ……




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る