第105話 徳川伊緒奈後援会発足
「竹中君? 竹中颯君、聞こえているかなぁ?」
「はっ!? えっ? ああ、黒田先生……」
「何をボーっとしているのかな? そんなに先生の授業がつまらないの?」
「そ、そんな事は無いですよ!! 黒田先生の授業はとても分かりやすくて大好きですし……」
「えっ? 先生の事が大好きですって? そ、そんな授業中に告白されても先生、困っちゃうわ。そういう事は放課後の体育館裏で言ってちょうだいね?」
「えっ!? そ、そんな事……俺、言っていませんよ!!」
何なんだ? 相変わらず、黒田先生のノリについていけないぞ。
「黒田先生? 冗談はそれくらいにして早く授業を進めてくださいませんか?」
「あら、ゴメンなさいねぇ、徳川さん? 『あなたの颯君』を奪いそうな発言をしちゃって」
「 「 「 「え――――――っ!!??」 」 」 」
ほら見てみろ。黒田先生が余計な事を言うからクラスの奴等がざわつきだしたじゃねぇか!!
「と、徳川さん、黒田先生が言った事は本当なの?」
「ふ、二人は付き合っているの?」
「どおりで最近、徳川さんと竹中君が一緒にいるところをよく見ていたんだわ」
「でも最近、学園の人気者達も竹中君に頻繁に絡んできている様な気がするけど、もしかして……」
オイオイオイッ!? 伊緒奈に対して記者会見が始まったぞ!!
「イライライライラ……」
なんか、太鳳はめちゃくちゃイライラしているし……
それにしても伊緒奈は皆に何て答えるんだ!?
俺に対して『嘘の告白』をしている事を正直に言うのだろうか?
「みんな、お騒がせしてゴメンね? うん、颯君の事が好きなのは本当よ……でも颯君と付き合っている訳では無いわ。私が……いえ、七人の女子が颯君に一方的に告白しているっていうのが正解かなぁ……」
「 「 「 「しっ、七人も竹中君に告白しているの!?」 」 」 」
うわっ、伊緒奈の奴、言いやがったぞ。言って良かったのか?
いや、俺の方がヤバイ目で見られるような気がするんだが……
「でもね、優しい颯君は一人だけを決める事ができなくて……それで颯君が出した条件が今度の『生徒会長選挙』で生徒会長に就任もしくはその人を応援した人と付き合うって事になったの。だから、みんなお願い!! どうか私に力を貸してくれないかな? まずは次の『学年人気投票』で一位か二位に入らないと生徒会長に立候補できないので……どうか私の『初恋』を成就させてください……」
シ―――――――――――――――――――ン……
そ、そりゃぁ、クラス中がこんな雰囲気になるよな?
しかし、伊緒奈の奴、全部しゃべってしまったというか、めちゃくちゃ芝居が上手いよな!? さすが陽菜さんに『タヌキ』と恐れられているだけの事はあるぞ。
「 「 「 「うぉぉぉおおおおおお!!!!」 」 」 」
な、何だ!?
「徳川さん、私応援するわ!!」
「そう、私達クラスメイトはあなたの味方よ!!」
「みんな、健気な徳川さんの初恋を絶対に成就させようよ!?」
「徳川さんが生徒会長になれる様にみんなで力を合わせて頑張りましょう!!」
「徳川伊緒奈後援会の発足よーっ!!」
うわぁぁ……伊緒奈の奴、クラスを一瞬にして『徳川伊緒奈後援会』に変えてしまったぞ。
す、凄い女だ……
「はぁ……」
ん? 今のため息は俊哉か?
「クラスが伊緒奈ちゃんを生徒会長にする為に一丸となったのに俺だけ協力できないなんて辛いよなぁ……」
俊哉も大変だな……まぁ、全て俺が悪いんだけど……でも……
ツンツン
「でもさ、俊哉?」
「何だよ、颯?」
「い、いやさ……伊緒奈が選挙に勝って生徒会長になった方がお前にとっては都合が良いんじゃないのか? 伊緒奈の作戦の事は俊哉も知っているんだろ? 俺と伊緒奈が付き合って直ぐ別れる手はずになっている事も……」
「ああ、知ってるぞ。だから俺も一瞬、伊緒奈ちゃんを応援しようかなって思ったさ。でも……でも俺が仙石学園に外部入学した目的は陽菜ちゃんを生徒会長にする為だったし、それに大好きな陽菜ちゃんが親友の颯と付き合う為に必死で頑張っている姿を見てしまったら……俺としては応援しないといけないだろ……?」
「と、俊哉……」
お前はなんて良い奴なんだ!?
それにお前は俺の事をずっと親友って言ってくれていたのに、それを心の中でうっとおしいと思っていた俺が嫌になってしまうじゃないか。
「はーい、みんな、静かにしてちょうだい。今は授業中なのよぉぉ。隣のクラスに迷惑でしょう?」
いや、事の発端はあんただろ!?
「黒田先生、ご協力ありがとうございました。ウフフ……」
「えっ? 何の事かしら~? そんな事よりも竹中君? 今日の昼休みに職員室に来てちょうだいね? 元々、あなたが授業を真剣に聞いていなかったのが今の騒ぎの発端だから職員室でこっぴどくお仕置きをしてあげるわぁ」
「えーっ!?」
俺が事の発端なのか!?
【業間休み】
「はぁ……」「ひぃ……」「ふぅ……」
「ちょっと三人共どうしたの? 何でそんなため息をついているの?」
「お、俺は陽菜ちゃんの事を考えてのため息さ……」
「うん、それについては前田君に同情してしまうわねぇ。で、颯君は?」
「俺は後で黒田先生にどんなお仕置きをされるのかと思ってさ……」
「フフフ、颯君はそんな事を心配していたの? もっと違う事を心配しているのかと思ったわ。 でもそれは大丈夫だよ。きっと黒田先生の言っている事は冗談だから……それで太鳳ちゃんは何でため息をついているのかしら?」
「うーん……私にもよく分からないんですよ。ただ、クラスのみんなが伊緒奈さんの応援をするってなった瞬間に身体が重くなったというか……本当はとても喜ばないといけないことなのに……」
太鳳はアレだな。きっとクラスの中では自分だけの伊緒奈だったのがクラス全員の伊緒奈になってしまったもんだから寂しさが沸いてきたんじゃないのか?
「お、おい? た、竹中……少し話があるんだけど、いいか?」
え?
な、なんだなんだ?
珍しくクラスの中で数少ない男子数名が俺に話しかけてくるなんて……
俺に一体何の話があるんだろう?
不安だなぁ……
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『学年人気投票』に向けて着々と?準備を進めて行く伊緒奈。
それに対して不安しかない颯。
そんな颯にクラスの男子達が話があるという。
不安が更に大きくなる颯であった。
ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます