第103話 校門前での戦い再び

 ピンポーン


「おはようございます、颯君とご家族の皆様!!」


「お、おはようございます……えっ?」


「おはよう、織田さん。ウフッ」


「お、おはようございます!! そして初めまして、織田先輩!! 本当に超美人だわ!!」


「おはよう、君が織田乃恵瑠さんかぁ……噂通りの美人さんだねぇ」


「ってか、何故、家族全員で乃恵瑠さんをお出迎えするんだよ!?」


「 「 「当たり前の事を聞くんじゃない!!」 」 」


 えーっ!? 俺が怒られるのか!?


「お、織田先輩!? 今度ゆっくりお話をさせていただけませんか?」


「あなたは妹さんの詩音ちゃんね? ええ、お話でも何でもしちゃうわよ。それと私の事は乃恵瑠って呼んでくれていいからね?」


「えっ、いいんですか!? そ、それでは乃恵瑠さん……ふつつかな兄ですが、どうぞ宜しくお願い致します」


 ふつつかって何だよ!?


「フフフ……颯君の妹さんって面白いわね。本当に今度ゆっくりお話しましょうね?」


「はい、近所ですし、いつでも家に遊びに来てくださいね?」


 はぁ……ほんと詩音は俺と違ってコミュ力が高いよなぁ……




 【電車内】


「颯君? 私、ご家族の皆さんにあんなにも歓迎されるなんて凄く幸せだわ。式はいつ頃、挙げようかしら? それに颯君、子供は何人くらい作っちゃう?」


「えっ!? の、乃恵瑠さんの言っている意味が分かりませんよ!! っていうか今のは冗談ですよね?」


「え~っ? 颯君、果敢な時期の男子なんだから意味くらい知っているでしょう? 本当は興味があるクセに~颯君はむっつりスケベなのね? ウフフ♡」


「ウグッ!!」


乃恵瑠さん、電車の中でこんな話は恥ずかしいからしないでくださいよぉぉ。


「そ、それよりも俺と一緒に登校なんてしたら学園中、大騒ぎになるんじゃないですか? 俺みたいな『陰キャオタク』と一緒にいるだけで乃恵瑠さんの立場が悪くなるのでは?」


「えーっ? そんな事は無いよ。それに私は誰に何を言われ様とも全然、気にしないわ」


 いや、俺が気になるんですけど……


 地味な学園生活を目指していた俺なのに……最近は真逆なことばかり起こっているんだからな!!


 っていうか、もう電車の中からして変な雰囲気になっているのがよく分かる。


 この電車には仙石学園の生徒が結構乗っているからな。


 あちらこちらでヒソヒソ話をしているぞ。


 はぁ……学園に行くのが怖いよぉぉ……



 【仙石学園校門前】


「ちょっとアレ見て!? 織田会長がなんだか地味な男子と一緒にあるいているわよ!!」


「ほんとだ!! なんでとても華麗な織田会長があんな地味な男子と一緒に登校しているのかしら?」


「な、なんだよアイツは!? 学園のマドンナと一緒に登校するなんてあり得ないぞ!!」


「最近、織田会長が男子に告白したって噂があったけど、もしかしてアイツなのか!?」


「そ、それは無いだろう。どう考えてもあの織田会長があんな地味な奴に告白なんてするはずが無いだろう!!」


 はぁ……外野うるせぇよ……


 でもお前達の気持ちはよく分かるけどな。


 俺だって本当は乃恵瑠さんと一緒に登校なんてしたくないんだよ。



「二人、ちょっと待ちなさい!!」


「えっ!?」


「あら、武田さんに上杉さんに毛利さんの三年生トリオの皆さん、おはようございます」


「織田さん、私達を『トリオ』でくくるのは止めてちょうだい!!」


「フフフ……それじゃぁ、武田さん? 『お邪魔虫トリオ』ならどうですか?」


「誰がお邪魔虫なのよ!? それに織田さんだって私からすればお邪魔虫じゃない!?」


 や、ヤバいぞ……またしても校門前で争いが起きそうだ。


「まぁまぁ、静香、落ち着きなさいよ? あんたは直ぐに織田会長の挑発に乗ってしまうんだから。それに今は颯君もいるのよ。ここであんたの本性を颯君に見せるつもりなの?」


 やはりケイトさんは静香さんと違って冷静な人だよな。まぁ、水族館デートの時はめちゃくちゃはしゃいでいたけどな。


「武田さん、私はお邪魔虫では無いですよ。だって前にも言いましたが颯君に最初に告白したのは私なんですから。それなのに次から次と颯君に告白する人が現れて……」


「まぁまぁ、織田さんも落ち着いてよ~私達は別にあなたと喧嘩するつもりはないんだから~」


 よ、良かった……茂香さんも冷静だぞ。


「それじゃあ、何故三人は校門の前で私達を待ち伏せしているのですか?」


「待ち伏せという訳では無いんだけどね~ただ、さっきクラスの子が織田さんと颯君が一緒に登校しているって慌てた感じで教えてくれたから確認しに来ただけだよ~」


「へぇ……確認ですか……それで確認をした皆さんのご感想は?」


 乃恵瑠さん、いちいちそんな事を聞かなくても……


「感想? うーん、そうねぇ……私達が今度の『学年人気投票』に向けて動き出したところへ織田さんだけ違う動き方をしている事に驚いたというのが感想かな~」


「そうね、私も茂香と同じ感想だわ。そしてさすが織田乃恵瑠会長って思うわ」


 茂香さんとケイトさんの口ぶりは冷静さを保とうと努力している気もするけど、本音を言っている様にも思えるな……


「へぇ、そうですか。意外な感想ですけど……まぁ、ありがとうございます。で、武田さんはどうなんですか?」


「わ、私も二人と同じ感想よ!! でも逆に『学年人気投票』前にこんな目立つ行動をとって投票に不利になるんじゃない? とも思ったわ。まぁ、私にとっては好都合だけどさ」


「ハハハ、武田さんは少しだけ私の事を心配してくれていたのですね?」


「し、心配なんかしていないわよ!! だから今、言ったじゃない? 私にとっては好都合だって……」


「まぁ、皆さんの感想はよく分かりました。ただ、この戦いは普通の行動をとってもそう簡単には勝てないと私は思っているんです。私は『学年人気投票』や『生徒会長選挙』だけを睨んでいないって事です。もっと先を見ていないと颯君と付き合う事は不可能だと思っていますので……私が怖いのは三年の皆さんではなく一年生の子達ですねぇ……」


「 「 「・・・・・・」 」 」


 もっと先……?


 乃恵瑠さんの言っている意味がよく分からないけど……


「 「 「織田さん、『助言』をありがとう……」 」 」


 えっ!? そ、そうなの~!?



「あら、乃恵瑠? 二年生は怖くないのかな~?」


「えっ?」


「ひ、陽菜さん!?」




―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


まだまだ校門前の舌戦は続くのか!?

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆

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