第94話 コスプレ大会

 しかし噂では聞いた事あるけど、凄い人だなぁ……


 本来の『陰キャオタク』ならこういったところには喜んで来るんだろうが、俺は出来る限り人と接するのを避けていたからな……


 奴等には『聖地』の様な場所でも俺にとっては『地獄』の様な場所だ。


 はぁ……人混みに酔ってしまいそうだ……


「颯君、大丈夫~? もしかして人混みに酔っちゃったのかな~?」


 しかし、茂香さんは本当に俺の考えている事を直ぐに見抜いてしまうよな?


 何かこれは特殊能力みたいなやつなのか?



「あっ、いたいた!! 茂香ねぇ、遅いよーっ!! 早くしないと間に合わないよ!!」


「えっ? ま、魔法少女ローラちゃん!?」


「萌絵ちゃん、ゴメンね~?」


 も、萌絵ちゃん? どこかで聞いた名前の様な……


 あっ!! 茂香さんの従妹で名前と真逆の人かっ!?


「茂香お姉ちゃーん? 今、エントリーしてきたから早く行きましょう?」


「あっ!! ま、魔法少女ピュアちゃんまで!?」


「ありがとね~柊ちゃん」


 柊……あっ、この人も前に茂香さんと一緒にいた二年生だ。


「そういえば颯君に、ちゃんとこの子達を紹介していなかったわね? このローラちゃんのコスプレをしているのが従妹の吉川萌絵きっかわもえちゃんでぇ、ピュアちゃんのコスプレをしているのが同じく従妹の小早川柊こばやかわひいらぎちゃんっていうのよ」


「い、従兄妹同士だったんですか?」


 どうりで顔が似ていると思ったぞ。


「うん、私達、中等部の頃からよくアニメのコスプレをしていたのよ。で、今日も三人グループで『コスプレ大会』に出場する予定になっていたの~」


「茂香ねぇ、早く行くよっ!!」


「は~い、分かったからそんなにイライラしないでよ~萌絵ちゃん。スマイル、スマイルよ~?」


「わ、分かっているわよ!!」



「それじゃぁ、颯君? 申し訳ないけど、会場席で大会が終わるまでまっていてね~?」


「は、はい……分かりました……皆さん、頑張ってください……」


「は~い、ありがとうね? 私達、頑張るわ~」


 こうして茂香さん達は急いで会場へと向かって行った。



 今日はデートというよりも茂香さんの応援に来た感じだな?


 まぁ、『付き合う為の条件』は前に告白された時に伝えているから、伝えるタイミングは考えなくてもいいし……最後のデートにしては少し気が楽だよなぁ……


 とりあえず客席に座って見学するか。




 【伊緒奈サイド】


「はぁ、やっと会場に着いたけど凄い人だな!? コスプレファンってこんなにもいるのかよ!?」


「直人もコスプレをやりたくなってきたんじゃない?」


「バカな事を言うなよ、太鳳!! 何で俺がコスプレなんてしなくちゃいけないんだ!? 俺はこういう『オタク系』が好きなやつは全然、理解できなんだよ!!」


「伊緒奈ちゃん? そういえば華子って羽柴さんとのデートの途中でいなくなったみたいだけど……」


「ええ、華ちゃんは午後から大事な用事があるからと言って途中で帰宅したわよ」


「華ちゃんにしては少し焦った感じで帰って行きましたよね?」


「へぇ、そうなんだぁ……」




 【コスプレ大会会場】


 ふーん、なるほどねぇ……


 今日の大会のルールは一人でもグループで参加でもOKで、登場する度に事前に決められている会場のお客審査員百名が点数をつけるシステムみたいだな?


 一人、100点らしいけど満点なら10000万点ってことかぁ……


 茂香さん達は何点もらえるんだろう?


 俺が審査員ならあのコスプレは完璧すぎるから絶対に100点満点をつけるけどな。


 ん? 部隊の端にある豪華な椅子に座っているのが暫定一位のコスプレーヤーって事だな? ナニナニ? 暫定一位の人のコスプレは……


 あーっ!? 


 あ、あのコスプレは俺が二番目に好きな忍者アニメ『グルト』のヒロインの『クノイちゃん』じゃないか!?


 いやぁ……めちゃくちゃ似ているし、めちゃくちゃ可愛いなぁ……


 って、イカンイカン!!


 彼女は一応、茂香さん達のライバルだからなっ!!


 で、クノイちゃんの点数は……えっ!?


 9999点……


 これは負けたな……いや、俺が諦めてどうすんだ!?


 って俺がそこまで気にしなくてもいいんだけどさ……でもせっかくだから茂香さん達に優勝してもらいたいよなぁ……


 しかし、あのクノイちゃんの顔……どこかで見た事があるんだけどなぁ……


 どこで見たんだろう……?



「それでは本日最後の出場者の『チーム毛利一族』です!! どうぞ舞台中央に来てくださーい!!」


「 「 「はーい、みんな~こんにちは~!!! さぁ、今から私達の魔法にかかる時間だよ~っ!!!」 」 」


 茂香さん達が登場した瞬間、会場は一瞬シーンとなり、そして……


「 「 「 「うぉぉおおおおお!!!! 魔法をかけてくれ~っ!!!!」 」 」 」



 会場がどよめいた。


 俺の座っている椅子も揺れている様な気がするぞ!!


 客の反応が凄すぎる!!


「 「 「 「ソフィアちゃーん!!」 」 」 」

「 「 「 「ローラちゃーん!!」 」 」 」

「 「 「 「ピュアちゃーん!!」 」 」 」




 【伊緒奈サイド】


「す、凄い歓声ね!?」


「本当ですね、伊緒奈さん……でも毛利さん達のあのコスプレは……私もあのアニメ知っていますけどソックリですよ!!」


「そうね、太鳳……アレはヤバイわ……本物ソックリだわ……」


「うんうん、私もそう思うなぁ……あれ? あの一位暫定席に座っている忍者の子……」


「どうした八雲? あの忍者の子がどうかした……へっ!?」


「八雲ちゃんと直人君、どうしたの?」


「い、伊緒奈!! あの暫定一位席に座っている忍者コスプレーヤーって華子じゃねぇか!?」


「 「 「えーーーっ!!??」 」 」





 【コスプレ会場】



「さぁ、審査員の皆さま~点数をどうぞ~っ!!」


 ジャジャジャジャジャジャジャジャ…………


 ジャンッ!!


「おーっ!! な、な、なんと~っ!! 『チーム毛利一族』の点数は……い、い……」


 茂香さん達の点数、10000点だーっ!!!!


 うぉぉおおおおおおおお!!!!


 会場全体が大盛り上がりだぞーっ!!


 でも二位のクノイちゃんも凄く良かったんだけどなぁ……


 あの子……凄く悔しそうな表情をしているけど、知り合いだったら励ませれるのになぁ……






―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


遂にデートが全て終わりました。

これで次から生徒会長選挙まで颯は静かに暮らせるのか?

まぁ、無理でしょう(笑)


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆

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