第92話 水着試着ショー

 うぅぅぅ……陽菜さんの水着試着ショーは健全な少年の身体には毒過ぎるぞ!!


 たまらん!!


 色んなところがたまりません!!


 しかし……陽菜さんは一体、何回水着を着替えたっけ?


 定番?の『三角ビキニ』から始まり『ハイネックビキニ』……リボンを結んだような形をしている『バンドゥビキニ』……片方の肩が露出していてる『ワンショルダービキニ』……それとは真逆で両肩は出ているけど二の腕がひらひらで隠れている『オフショルダービキニ』……普通に可愛い『フリルビキニ』……そして最後にスカートタイプのワンピース……


 っていうか俺、いつの間にか水着専門家みたいに詳しくなってないか!?


 それはそれで恥ずかしいぞ……


「お待たせ、颯君」


「い、いえ……それでどの水着を買われたんですか?」


「フフフ……私が買った水着は颯君が一番興奮した表情をした水着よ♡」


「えっ!? お、俺……そんな興奮した顔をしていましたか!?」


 俺としたことが……知らず知らずに男の本能が出てしまっていたのか?


「で、どの水着を……?」


「フフ、それは夏休みまでお楽しみという事で……」


「えっ、夏休みですか?」


 それって夏休みに水着を着ている陽菜さんに会うって事だよな?


「うん、夏休みよ。だって颯君とデートをするのは今日だけじゃないしね~夏休みになったら海やプールにも一緒に行きたいし……」


「は、はぁ……」


 うーん、そっかぁ……


 生徒会長選挙は九月末だし、それまではまだ日にちがあったんだよな?


 ってことは他の人達も俺とのデートは一回だけだとは思っていない可能性があるって事か。


 イヤイヤイヤッ、ちょっと待ってくれ。


 今まで『陰キャオタク』を続けて来た俺がそう何回も、それも複数の女子達とデートなんてするパワーは残っていないぞ!!


 あっ、そうだ!!


 俺には伊緒奈の家でのバイトがあったんだ。


 お金も稼がなくちゃいけないし、そう簡単にデートなんてする時間も無いし、断る理由に出来るかもしれないな?


「そういえば颯君って徳川さんのお家でアルバイトをしているらしいわね?」


「えっ? な、何でそれを……あっ、俊哉の奴から……」


「フフ、そうよ~俊哉から聞いたの。それに徳川さんのお家って凄い豪邸でお庭にプールもあるらしいわね~?」


「は、はい……ありますね……」


 ちなみに最近、俺の仕事はそこのプール掃除が多いんだよ。


「夏休みに入って、もし颯君がアルバイトの方が忙しくてデートが出来ない状態になっちゃったら徳川さんにお願いして自宅のプールを貸して貰ってさ、そこで今日買った水着姿を披露させてもらうわね~?」


「えーっ!?」


 あの伊緒奈が一応、仮のライバルになる予定の陽菜さんに自宅のプールを貸すだろうか?


 でも陽菜さんは普通に貸してもらえると思っている言い方だよな。



 【伊緒奈&太鳳サイド】


「貸さないわよ……うん、貸さない……絶対貸さない……誰が貸すものか……」


「伊緒奈さん、どうしたんですか? なんか呪文の様に唱えてますけど……」


「えっ!? 私、今何か言ったかしら?」


「・・・・・・」



 【俊哉&直人サイド】


「おい、俊哉!! だ、大丈夫か!?」


「はぁ……だ、大丈夫じゃないよぉぉ……俺、出血多量で死にそうだよぉぉ……」


「と、とりあえずお前はここのベンチに横になっておけ!! そろそろ颯さんと羽柴さんが動きそうだけど、後の監視は俺に任せておけ!! それと知由と八雲にお前の介抱を頼んでおいたから、もうすぐこっちに来るはずだから!!」


「わ、悪いなぁ……直人……お前、本当は良い奴だったんだなぁ……?」


「フンッ!! お、お前程じゃねぇよ!!」



 【颯&陽菜サイド】


「しかし、今日は凄くたくさん買いましたね?」


「うん、そうね。私、お買い物に来たのは久しぶりだから、買いたいものが溜まっていたのよ~でも今日買ったものは全て次に颯君とデートする時に着るお洋服やアクセサリーとかばかりを買ったんだよぉぉ」


「えっ、そうだったんですか!?」


「えーっ!? 気付かなかったの~? でもまぁ、そういう鈍感な所の颯君もとっても可愛くて大好きよ~♡」


「うっ……」


 陽菜さん、可愛すぎるぞ……


 俊哉に対しての申し訳無さがドンドン消えていってしまいそうだ……


 って、ダメダメダメ!!


 俺は何て事を思っているんだ!!


 俺みたいな奴の事を親友って言ってくれる俊哉を裏切る訳にはいかない。


 逆に俺が俊哉と陽菜さんのキューピットになれるもんならなりたいくらいだ。


「颯君? もうお昼だしファーストフード店でも行きましょうか?」


「そ、そうですね。行きましょう」


 よし、陽菜さんにはファーストフード店で『俺と付き合う為の条件』の話をしてみよう。出来る事ならその内容で陽菜さんが気を悪くしてそのまま俊哉の方に気持ちが流れてくれれば最高なんだけどなぁ……



 そして俺達はハンバーガーを食べながら談笑をしている。


 俺はどのタイミングで陽菜さんに条件の事を言おうか悩んでいると、陽菜さんから俺が何か言いたげな表情を察知してくれて……


「もしかして颯君? 私に何か言いたい事があるんじゃない?」


「えっ!? ま、まぁ……そうなんですけど……」


「やっぱりそうなのね~? 私と颯君の間柄で何も遠慮する事は無いから言ってちょうだい?」


「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて……」


 こうして俺はなんとか陽菜さんにも皆に出した条件の話をする事が出来た。


 するろ陽菜さんの口から出た言葉は……


「ふーん、なるほどねぇ……でもこの条件が一番フェアかもしれないわねぇ……うん、分かったわ。本当は生徒会長に立候補するつもりは無かったけど、颯君と付き合う為だったら私、何でもしちゃうわ~」


 俺の出した条件に賛同してくれたのは陽菜さんを入れて五人かぁ……


 でも、そういえば前に俊哉が言っていたよな。


 『俺がこの学園に外部入学をした本当の目的は陽菜ちゃんを生徒会長にする為だ』と言っていたけど……でも俺が出した条件だと俊哉は俺と付き合う為に生徒会長を立候補をする陽菜さんの応援をする事になってしまうぞ!! 


 だ、大丈夫なのか俊哉!?



―――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


次回は大トリ、毛利茂香とのデートスタートです。

どうぞお楽しみに(^_-)-☆

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