第35話  まさかの展開

「メガネを外すのはちょっと……」


「そんなこと言わずにお願い、竹中君!!」


 メガネを外したからって何だって言うんだよ?


 俺の『陰キャオタク』が変わる訳でも無いのにさ……


「静香、この子がメガネを外したからって何があるのよ? やっぱ、あんたどうかしているわね……」


「姉貴、別にいいじゃないか? 武田さんの言う通り、こいつにメガネを外してもらえばいいじゃん。それで何も無ければ武田さんがおかしいということだけだしさ」


「そうですね。カイト君の言う通りですよ。とりあえず、この子にメガネを外してもらいましょうよ」


 何だ、この二人は……


 きっと面白がって言っているだけだろ?


 俺がメガネを外した途端に指を差して笑う気だな!?


「うーん……カイトやカノンがそう言うなら……でも沙耶さや加奈かなはどう思う?」


「別に私はどちらでも……ケイトの好きなようにやりなよ」

「そうそう、私も別に興味無いしさ……でもこの子のメガネを外した顔は見て見たいかも」


 何だよ、この……ネクタイの色からして三年生の二人は?


 興味が無ければ発言するんじゃねぇよ。


「よし、分かった。ということで君? 申し訳無いけど少しだけメガネを外してくれないかな?」


 こ、この上杉さんだけは俺に対して丁寧だから思わず言う事を聞きそうになってしまうけど、やはり俺としては……





 【徳川サイド】


「何で武田さんは颯さんにメガネを外す様にお願いしているんでしょうね?」


「だよな。別に颯がメガネを外したところで何も変わらないと思うんだけどなぁ……」


「フフフ……それが変わるかもしれないんだなぁ……まぁ、『一部の人』だけかもしれないけど……」


「えっ? 伊緒奈さん、それはどういう意味ですか?」


「そうだよ、伊緒奈ちゃん! どういう意味か教えてくれよ!?」


「それは今は言えないの。でも見ててごらん? びっくりするような事が起こるかもしれないから……」






 【中庭サイド】



「姉貴? 待っていても仕方無いから俺がこいつのメガネを外してやるよ。おい、いいだろ? 俺が外してやるから顔を貸しな?」


 上杉カイトが俺の顔に手を近づけてきたので咄嗟に手で払いのけてしまった。


 メガネを外されたくないという思いと、こんな奴に俺の大事なメガネを触らせたく無いという思いが俺の手を動かせてしまった。


「イテッ!! な、何だよお前は? 嫌がるんじゃねぇよ。今のうちに俺の言う事を聞いていた方が身のためだぞ……」


「うるせぇよ……」


「えっ!?」


「お前こそ、俺に綺麗な顔をボコボコにされたくなかったら、メガネに触るんじゃねぇ……」


「な、何だと!?」


 し、しまった!! 怒りのあまりに一瞬『昔の俺』に戻りかけてしまったぞ。


 これは早くこの場を終わらせる為にも、メガネを外した方が良いかもな……


「自分で外すから触るんじゃねぇ……」


「えっ!? 竹中君、メガネを外してくれるの?」


「は、はい……武田さん……でも外しても直ぐに戻しますからね……」


 俺はそう言うと、ゆっくりメガネを外した。


 上杉ケイトを中心とした五名がメガネを外した俺の顔をマジマジと見ている。


 上杉カイトにジッと見られるのは『何、ガンをつけてやがる!?』という思いしか沸いてこないが、他の女子四人に見つめられているのはめちゃくちゃ緊張してしまう。


 特に上杉ケイトさんのブルーの瞳で見つめられた俺はいつの間にか硬直している。


 その横で武田さんが心配そうな表情で俺のことを見ていた。


 俺の顔を見て、真っ先に感想を言ったのは上杉カイトだった。


「武田さ~ん? こいつのメガネを外した顔を見ましたけど、俺としては『だから何?』っていう感じなんですけどぉぉ」


「そ、そうよね……想像していたよりは普通の顔だけど、別に武田さんが惚れ込んでしまう程では……」


 カノンさんだっけ? 辛口のあんたが俺の顔を見て『普通の顔』って言ってくれただけで俺はホッとしたよ……


 そして三年生の沙耶さんと加奈さんも……


「まぁ、瓶底メガネを外したら普通の男の子ね……でも……」

「うん、沙耶の言う通りだわ。私は何の為にこの子のメガネを外した顔をマジマジと見ないといけなかったのかしら? っていう感想だわ……」


「はぁ……あんた達には何も彼の素敵なところが感じなかったの!? あんた達の目は節穴なのかしら!!」


「 「し、静香!! それは私達に失礼よ!!」 」


 いや、でも武田さん?


 普通は相手の顔を見ただけで相手の良いところなんか分かる訳無いでしょう……?


 それが分かれば苦労しませんよ……



「ちょっと待って、静香に沙耶に加奈!!」


「 「どうしたの、ケイト?」 」


 ん? 上杉ケイトさんの様子が少しおかしいぞ……


 ドキン ドクン ドキン ドクン……


 な、何だ? この激しい心臓の鼓動の様な音は??


「き、君の名前を教えてくれないかい?」


「えっ? ああ、俺の名前は竹中颯と言いますが……」


「そ、そうなんだぁ……颯君かぁ……素敵な名前だねぇ」


「あ、ありがとうございます……」


「私から一つ提案があるのだけど、話を聞いてくれるかな?」


「は、はい……別にいいですけど……」


「そっか、ありがとう。それじゃぁ……」


 一体、何の提案をするんだろう?


「は、颯君は静香なんかと付き合うんじゃなくてぇ……わ、私と付き合ってみる気は無いかな?」


 …………えっ?


「 「 「え―――――――――――――っ!!??」 」 」







――――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


メガネを外した颯……

しかし、上杉一派の反応は予想通りだった。

ただ、上杉ケイトだけは颯に提案を持ち出した。


静香なんかと付き合うんじゃなくて、私と付き合う気は無いかと……


颯を始め、全員がケイトの言葉に驚くのであった。


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆







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