第34話 恋に生きる

「ど、同盟ですって!? な、何であんたが織田乃恵瑠なんかと同盟を組むのよ!?」


「フフ、そんなこと簡単な事じゃ無い。今年、私は織田さんを応援する。そして来年、私が卒業したら織田さんがカイトを応援する。まさにこれはお互いにウィンウィンでしょ?」


 なるほど。


 上杉さんはもう生徒会長に立候補できないから弟に夢を継がせようとしているんだな。そしてその為にも現在、一番力のある織田会長を今のうちに仲間に引き入れようと考えた訳か?


 学年二位の実力者の上杉さんは『策略家』でもあるんだな……



「許せない……」


 えっ?


「静香、何が許せないのよ?」


「あんたみたいな子が織田乃恵瑠なんかに媚びを売るだなんて許せない……」


「別に私は媚びを売っている訳じゃ……」


「同じ事よ!! 私はあんたのこと嫌いだけど、ある部分では認めていたのに……」


 なんかマジで武田さん、怒っているぞ……

 そんなに上杉さんが織田さんと同盟を組むのが許せないのか……?


「だって仕方が無いじゃない。私達はもう『生徒会長』にはなれないのよ? それなら『後継者』を立てて応援する喜びを味わった方が残りの学園生活も楽しく過ごせると思わない? ってか、あんたも誰か『後継者』を立てなさいよ? そうすればまた私達、争えるじゃない?」


 この二人は争いたいのか?


 それを楽しんでいるってことなのか?


「私が許せないのは、一番嫌いな女と手を組んだって事が許せないのよ!! それに私はもう『生徒会選挙』なんてどうでもいいわ。『後継者』? フン、生徒会長なんてやりたい人がやればいいのよ。これからの私は『恋』に生きるんだから!!」


「 「 「え―――――――――――――っ!!??」 」 」


 そ、そりゃぁ、さすがの上杉さん達も、いきなり武田さんの口から『恋に生きる』なんてことを聞かされたら驚いてしまうよな!?


 逆に武田さんの取り巻き達はため息をついているけど……


「ちょ、ちょっと待て、静香? あんた今、『恋に生きる』って言わなかった?」


「言ったわよ。なんか文句でもあるの?」


「あんたも私も中等部の頃から男子達の告白をことごとく断ってきたのに、急にあんたの口から『恋に生きる』って聞かされたら誰だって耳を疑ってしまうじゃない!!」


「疑う必要は無いわ。これは事実よ!! 遂に現れたのよ!!」


「えっ? 現れた?? 何が??」


「だから……私の『理想の男性』が遂に現れたのよ!!」


「ば、バカな事を言わないでよ!! あんたも私も理想が高過ぎて今まで彼氏が出来なかったのに……そんなあんたが恋に落ちてしまう様な人が現れたっていうの!?」


 うわぁ……武田さん、上杉さんにも俺の事を言ってしまうのか?


 これはまた色々と面倒なことになるような……



「あぁ、もしかして武田さん? 遂に僕の事を好きになってしまったなんて言わないでくださいよぉぉ? さすがに姉貴のライバルとは付き合えませんのでぇぇ……」


「黙れ、クソガキ!! お前なんて興味は無い!!」


「ヒエェェェェェェ!!」


 カイトっていう奴は見た目とは違ってショボい奴なのか……?


「私の『理想の男性』はここにいるわよ!!」


「えっ、どこにいるのよ?」


「ここよ、ここ!! このメガネをかけた子よ!!」


「えっ!?」


 うわーっ、遂に上杉さんに見つかってしまったというか、さっきから俺、ずっとここにいたけど、上杉さん達、誰一人、俺の方を見なかったよな?


 俺を中庭のオブジェとでも思っていたのか?


「はぁあああ?? 静香、今この子って言った?」


「言ったわよ!!」


「あんた、私をバカにしているの!? この子があんたの『理想の男性』な訳無いじゃない!! 冗談も休み休みにしてよね!? って、この子さっきからここにいたっけ?」


 いたよ!! ずっと一何も言わずにいたよ!!


 まぁ、一言も話したくはないけどな……



「私が彼に『愛の告白』をする為にここに呼び出したのよ」


「ハッハッハッハ!! 武田さ~ん、勘弁してくださいよ~? 武田さんみたいな女性がこんな『瓶底メガネ陰キャオタク』みたいな奴のことを好きになるはず無いじゃないですか~」


 久しぶりにはっきり『フルネーム』で呼ばれた気分だぜ……


「黙れ、クソガキ!! お前は引っ込んでろ!!」


「ヒエェェェェェェ!!」


 やっぱこいつ、ショボい奴だわ……



「静香、うちの弟になんて酷いことを言うのよ!? カイトの言う通りじゃない!! まさかこんな……少し大人しそうな少年のことを好きになるなんて……」


 上杉さん、あんたは出来た人だ!!


 俺に凄く気を遣った言い方をしてくれて有難う。


「そうですよ。武田先輩!! この子のどこに好きになる要素があるのですか? 私も全然、理解が出来ませんね。あっ、もしかして何かの罰ゲームみたいなやつですか?」


 この人は二年の……カノンって呼ばれていた人だな?


 こいつが女子じゃなかったら一発殴ってやりたいところだな。


「はぁ……ケイトだったら少しは彼の魅力を分かってくれると思ったけど……残念だわ。本当は嫌だけど私が好きになった人をここまで侮辱されるのは耐えられないわ。竹中君お願いがあるの。ケイトにメガネを外した姿を見せてやってくれるかな?」


「えっ、え―――――――――――――っ!!??」







――――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


上杉ケイトが織田乃恵瑠と同盟を組んだことに怒り心頭の静香。


でも、そんな静香は『恋に生きる』宣言をし、好きな人が颯だとケイト達に伝える。

しかし誰も颯のどこが好きになったのか理解してもらえず、静香は颯にメガネを外すようにお願いをしてきた……


ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆





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