第28話 クサいセリフ
い、痛ぇなぁ……
二人とも女子なのに良いパンチしてるよな……
あっ、またしても俺のメガネが吹っ飛んでしまったみたいだ。
壊れていなければいいんだけどなぁ……買い替えになったらまた親に迷惑かけちまうからな。
「き、君……大丈夫かい?」
「た、竹中君……どうして……」
「ハ……ハハハ……俺は大丈夫ですから……気にしないでください……」
「で、でもだな……」
「私を助ける為に……」
「お、俺はただの通りすがりの者ですから……」
「た、竹中君!! ほ、保健室に早く行こう!!」
やだなぁ、羽柴副会長まで……大袈裟過ぎですよ。
それに昨日、二回も行っている保健室にはさすがに行きたくないですから……
「すみません、羽柴副会長……保健室に行くほどではありませんから……それよりも早く教室に行きたいので……」
「ちょっと待って? 君は竹中君っていうのかい? 何年何組なの? ってか織田会長、あなたは彼のことを知っているみたいね!?」
織田会長、面倒なんで俺のことは何も教えないでほしいんですけど……
「知っていますよ。でもそれは後でいいですか? それよりも彼の怪我の治療をしないと……」
「いや、マジで大丈夫ですから!!」
「た、竹中君ゴメンね……また、助けられちゃった……」
「いいんですよ。そんなことよりも二人とも顔に傷がつかなくて良かったですよ。せっかくの美人が台無しになっちゃいますから……そ、それじゃぁ、俺は教室に行きますので……」
「 「えっ!?」 」
シ――――――――――――――――――――ン……
あれ? 俺……今めちゃくちゃクサいセリフを言わなかったか?
クサ過ぎてみんな引いてしまったんじゃないのか?
まぁ、引かれても構わないけどな。あまり関わりたく無いし……
「た、竹中君……これ……メガネ……」
「あっ、羽柴副会長ありがとうございます」
おっ、メガネは壊れてないみたいだぞ。
良かったぁ、これはラッキーだったな。
まぁ、登校した矢先に美少女二人に顔面を殴られた俺がラッキーと言って良いのかどうかはとりあえず考えないでおこう。
「竹中君……私からもお礼を言わせて? 本当にありがとう……」
「や、止めてくださいよ、羽柴副会長まで……本当に気にしないでください……それでは失礼します」
あっ、書記の平手さん……そういえばこの人もこの現場にいたんだよな?
俺と同じくらいに影が薄いよな。
とりあえず俺は平手さんに軽く頭を下げて通り過ぎようとした時に俺にしか見えない様な感じで親指を立てながら小さな声で、
「竹中君、グッジョブ……」
えっ?
もしかしてこの人は実は面白い人だったりするんじゃないのか?
まぁ、別に俺には関係の無いことだな。さっさと教室に行こう。
それにしても朝からとんでもない目にあってしまったな。
他の生徒数名にも見られているからめちゃくちゃ恥ずかしいぞ。
ど、どうしよう……
これから俺は陰で『二人の美少女に殴られた男』とか言われないだろうな!?
はぁ……今頃になって二人の間に割り込んだことを後悔してしまう。
「おはよう、颯君」
「おはようございます、颯さん!!」
「オッス、颯!!」
「な、なんだよ。き、来てたのか……あ、おはよう……」
「フフフ、颯君さっきの場面、見ていたわよ。ウフッ」
「えっ?」
と、徳川の奴、俺をあざ笑う気だな?
畜生、まさかこいつ等にまで見られていたとは不覚としか言いようが無い……
「凄くカッコよかったなぁ……ねっ、太鳳ちゃん?」
「そうですね。颯さん、めちゃくちゃカッコよかったですよぉぉ!!」
「えっ? う、嘘だろ……?」
「嘘じゃ無いぜ、颯!! お前のとった行動はめちゃくちゃ俺ですら感動したんだからな!!」
お、お前等……
ガシッ
ん? 何だよ、前田? 急に俺の肩に手をまわしてきて……
「武田さんがアレ以上に陽菜ちゃんを侮辱していたら俺が殴り飛ばすところだったよ。でも織田会長が先にブチ切れたみたいだけどな……」
「前田君? 今、颯君に何て言ったの?」
「別に何でもないよ。それよりも早く教室に行って『作戦会議』をしようぜ!!」
何の作戦会議だよ!?
「前田君、何の会議をするのよ!?」
「太鳳ちゃん、それは決まってるじゃん。俺が二学期に『クラス委員長』になる為の作戦だよ!!」
まだ、一学期が始まって一ヶ月も経っていないのにこいつはやはりバカなのか?
それとも、これも演技なんだろうか?
「前田君、あんた気が早過ぎるわよ!! それに今日の出来事であんたが『クラス委員長』になれる日は遠のいたかもよ!!」
「な、何だってーっ!?」
「そうね。今日の颯君の行動をうちのクラスの人が見ていたかどうかは分からないけど、見ていた人がきっと噂するだろうし……ということで颯君の人気度がアップすること間違い無しだと思うよ」
と、徳川伊緒奈……
俺が全然喜ぶことの出来ない様な分析なんかするんじゃねぇよ!!
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
殴り合いになりかけた二人の間に入り殴られた颯。
そんな颯を心配する二人だったが颯は早くここから立ち去りたいと言う思いから大丈夫の一点張り。
しかし、思わずクサいセリフを二人に言ってしまったことが恥ずかし過ぎて仕方ないでいた。
そして徳川達にも見られていたことが分かり、更に恥ずかしくなる颯であった。
ということで次回もお楽しみに(^_-)-☆
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