第20話 投票部の天海さん

 ヤバい、ヤバい、ヤバいぞ!!


 まさか、こんな展開になるなんて……


「私ね、あなたに助けてもらってから直ぐに親の仕事の都合で転校しちゃったの。そして中学までは転校先の地元の中学に通って、この学園は外部入学で入って来たのよ」


 なるほど、そういうことか。


 だから俺が五年生の途中まで学校に通っていた時も全然、見かけなかったんだな。


 それに俺の予想通り、織田会長は外部入学だったか……


「まさかあなたがこの学園にいるだなんて思ってもいなかったし……本当に驚いたわ」


 俺も驚いたぜ。


 メガネを外せって言ってきたということは、メガネをしたままでも俺かもしれないと思ったってことだよな?


「お、俺のこんな容姿でよく気付きましたね?」


「さすがの私もメガネをかけた状態のあなただと気付けないわ。あの徳川さんって子がお話をしている時にあなた、一瞬だけメガネを外してハンカチで汗を拭き取ったのを覚えていない?」


 えっ!? 


 そ、そういえばあの時、会場の中は暑いし、横で徳川は暴走しているしで変な汗が出て来て一瞬だけメガネを外したような……そ、それで分かったのか?


 織田会長、なんて洞察力だ!!


「一瞬だったから私も確信を持てなかったけど、あなたの目を見た瞬間、私の身体が熱くなったの。だから、もう一度あなたの顔を確認したくて集会を中断してまでメガネを外してもらったのよ。でも私の目に狂いは無かったわ。本当に嬉しいわ……」


 俺みたいな『陰キャ』に対してこんなにも喜んでくれるのは有難いことだけど……


 でも、こんな『超陽キャ』の織田会長と知り合いだということが学園の生徒全員にバレてしまったら俺の平穏な日常が脅かされるのは間違いない。


 どうすればいい?


 それでなくても校内放送で名指しで生徒会室に呼ばれた俺だ。


 きっと前田筆頭に根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。


 なんとかして会長と接触するのは今日だけにできないものか……


「た、竹中君……」


「は、はい……」


「す、好きです。わ、私と付き合ってください……」


「え―――――――――――――っ!!??」


 イヤイヤイヤッ、待ってくれ!!


 織田会長に昔の件もあるから好意を持たれているのは分かるけど、いきなり、それも数年ぶりに会った俺に……それも、どこから見ても『瓶底メガネ陰キャオタク』の俺なんかに普通、告白なんかしないだろ!?


「お、お願い私と付き合って?」


 ギュッ ギュウ……


 うわっ!! 今度は俺の腕にしがみついてきたぞ!!


 それに羽柴副会長程ではないけど、む、む、胸が思いっきり当たってますから!!


「だ、ダメなの? 私と付き合ってくれないの?」


 や、止めてくれ!! そんな上目遣いをしないでくれ!!


 お、俺の理性が……

 お、俺は二次元しか興味が……


「うう……」



 ガラッ…ガラガラッ


「 「うわっ!!??」 」


 生徒会室に誰か入って来たぞ!!


 はぁ……助かったぁ……


「ど、どなたかしら?」


「お取込み中、申し訳ありません。私は『投票部』の者です。後醍部長から一学期の各投票予定表を会長にお渡しする様に言われまして……」


 なんか、この子……俺と同じ様な『瓶底メガネ』をしていて、俺が言うのもなんだけど、めちゃくちゃ地味な子だよな……高等部にも俺と同じ色の女子っていたんだな?


 でも、髪色は銀髪でスタイルは良いのに……勿体ないなぁ……


「あ、ありがとう。私の机の上に置いていただけないかしら?」


「はい、分かりました……」


 彼女はそう言うと織田会長の机に資料を置き、足早に出口に向かう。


 そしてドアの前に立ち止まり一礼をしてから出て行こうとした時、彼女が俺にこう言った。


「あのぉ、そこの君? 生徒会室前でお友達があなたのことを探していたわよ」


「えっ!?」


 前田かな? しかし探すって何だよ?


 お前なら平気な顔をして生徒会室に入って来れるだろ?


 こんな時にお前の性格を活かさなくてどうするんだ。 


 でも……こ、これは脱出のチャンスだ!!


「で、では織田会長!! 友達が探しているということなので俺はそろそろ教室に戻ります!! そ、それでは失礼します!!」


「えーっ!? 返事をまだ聞いて……」


 ガラッ…ガラガラッ バシャン!!



「ふぅ……あれ? 誰もいないぞ……」


「お友達が探しているっていうのは嘘よ……」


「えっ?」


「君が困った表情をしていたから……部屋から出たいのかなって思って……」


「そ、そうなのか? でも……助かったよ。ありがとう……えっと君は……」


 俺が顔を近づけながら名札を確認していると彼女は少し微笑みながら自分から名乗ってくれた。


「私は一年十組で『投票部員』の天海あまみっていうの。それじゃ竹中君、私は教室に戻るわね?」


 そういうと天海さんは立ち去って行った。


 天海あまみさんかぁ……

 なんか、懐かしい感じがしたよなぁ……


 十五歳の明智も天海あまみさんみたいな感じなのかなぁ……





――――――――――――――――――――

お読みいただきありがとうございました。


生徒会室で織田会長からグイグイ迫られる颯

そして『付き合って欲しい』とまで言われ……

そんな中、颯を助けてくれたのは『投票部』の天海さんという颯と同じような瓶底メガネをした天海さんだった。


その天海さんに颯は懐かしい感じがするのであった。


ということで、どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆


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