第21話 保健室にて
はぁ……しかし、危なかったなぁ……
織田会長に襲われるかと思ったぞ。こんな俺なのに……
とりあえず教室に戻っても前田達がうるさいだけだから、昼休みが終わるまでどこかに隠れていたいんだけどなぁ……あっ!!
そうだ。保健室に行ってみよう。
恐らく羽柴副会長がいるはずだからな。
もし起きていたらここは思い切って織田会長のことを相談してもいいかもな。
寝ていたら……ゴクッ……いや、俺は何を考えているんだ!?
五時限目に遅れてしまっては副会長として恥ずかしいだろうから俺が起こしてあげればいいんじゃないか……うん、それでいこう!!
【保健室前】
ガラッ…ガラガラッ
「し、失礼します……羽柴副会長はおられますかぁ……?」
ん? 誰もいないのか?
でも、ベッドで誰か寝ているような感じはするけど……
俺はカーテンがされているベッドの前に行く。
そして「す、すみません……起きてますか?」と声をかけるが反応が無い。
ていうか、『スースー』という寝息が聞こえている。
俺は意を決してカーテンをゆつくりと開ける。
そこに寝ていたのはやはり羽柴副会長だった。
とても可愛い寝顔だ。
それにしてもとても気持ち良さそうに寝ているよなぁ……
でも昼休み時間はもうすぐ終わるから、起こした方がいいよな?
「あ、あのぉぉ……羽柴副会長、そろそろ起きてください……昼休み時間、終わりますよ……」
俺がそう言うと羽柴副会長の身体がピクッと動いた。
そして何とも言えない声を出す。
「う、う~ん……だ、誰? もう朝なの……?」
少し寝ぼけている羽柴副会長も可愛いなって、俺は何を考えているんだ!?
俺は『陰キャオタク』なんだ。身の程を知らなければ……
「羽柴副会長……い、今は朝じゃなくて、昼休みですよ。もうすぐ五時限目が始まりますよ……」
「えっ!?」
羽柴副会長は驚いた表情をしながら飛び起きた。
そして俺の顔を見て更に驚いた。
まぁ、目の前に『瓶底メガネ』をした奴がいたら普通は驚くよな……
でも俺は少し心が痛いけど……
「た、竹中君!? ど、どうしてあなたがここにいるの!?」
「い、いや……あの……生徒会室から逃げて来たというか……でも教室にも戻りたくなかったし、羽柴副会長が起きていたら少し相談したいことが……でも寝られていたら五時限目が始まる前に起こそうかと思いまして……」
あっ? 俺って今でもこんなに長い『セリフ』を言えるんだな?
俺がどうでもいいことに感心していると羽柴副会長はクスッと笑った。
笑った顔もほんと可愛らしいよなぁ……徳川や織田会長とも種類が違う笑顔だな。
「フフフ、そうなんだ。今の竹中君の言葉には結構たくさんの情報があって何から聞こうか迷っちゃうけど……でも簡単に言えば乃恵瑠ちゃんから逃げて来たってことよね?」
「は、はい……ん? の、乃恵瑠ちゃん?」
「ハハハ、私が織田会長のことを乃恵瑠ちゃんって言ったのが驚いたのかな? でも私達は同級生よ。乃恵瑠ちゃん、陽菜ちゃんって呼び合うのが普通でしょ?」
まぁ、言われてみればそうだな……
「はい、そうですね。では昨日の集会での会話は演技みたいなものですか……?」
「演技? フフフ、まぁそんな感じかもね。私は乃恵瑠ちゃんが生徒全員に『最高の生徒会長』と思ってもらう様にするのが使命だと思っているから……だから、ああいった集会では敬語で話す様にしているのよ」
さすがは副会長だな。
今、俺に言っていることがどこまで本心かは分からないけど、悪い人では無いのはたしかだと思う。
「ところで竹中君は視力がかなり悪いの?」
「あ、はい、かなり悪いです」
「そうなんだぁ……コンタクトとか、もう少しオシャレなメガネなどにはしないのかな?」
「はい……俺はこのメガネが好きなんです」
「ふーん……竹中君は結構、こだわり屋さんなのね? ウフ」
羽柴副会長にそう言われた俺は顔が少し赤くなってしまった。
「あ、あのぉぉ?」
「ん? 何かな?」
「羽柴副会長は……今日、織田会長が俺を生徒会室に呼び出した理由を……知っているのですか?」
「うん、知っているわよ。昨日の集会が終わってから私と平手さんは『遂に王子様を見つけた!!』って興奮している乃恵瑠ちゃんの話をずっと聞かされて大変だったんだから……フフフ」
お、王子様って……
ガラッ…ガラガラッ
「ひ、陽菜ちゃん!! 大丈夫か~っ!? どこが悪いんだ~っ!? って、えっ!? は、颯……何でこんなところに……」
「ま、前田……」
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
乃恵瑠から逃げて来た颯は保健室にいるはずの陽菜に相談しようと考える。
そして寝ていた陽菜を起こし、少しだけ会話をしていた最中、突然、血相を変えた前田が保健室に入って来たのだった。
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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