第8話 伊緒奈の提案
はぁぁ……昨日は最悪だったな。
あの前田俊哉のお陰で大恥をかいてしまった。っていうか大恥よりも『陰キャ』の俺が目立ってしまったことの方が俺は嫌だぜ……
「おはよう、竹中君」
「お、おはよう……」
なんだと?
徳川は今日も俺に声をかけてくるのか?
てっきり昨日だけだと思っていたぞ。
もしかして徳川は本当に良い子なのか?
俺が皮肉れて考え過ぎているのだろうか……
「ねぇねぇ、竹中君?」
「な、何……?」
徳川、お願いだから、あまり俺に話しかけないでくれないか!?
「竹中君は、お昼はお弁当? それとも食堂に行くのかな?」
何なんだ。この先の展開が読める質問は!?
でもまぁ、それはあり得ないよな。
まさか、徳川が「お昼、一緒に食べない?」なんて俺みたいな『陰キャ』に言うはずが無いからな。
「俺は弁当だけど……」
「私もお弁当なの。もしよければお昼休みにお弁当を一緒に食べない?」
えーっ!? マジで俺にそれを言うのか!?
俺が『陽キャ』だったら飛び跳ねて喜ぶところだが、今の俺にとっては迷惑な誘いで行かない。だから……
「ご、ゴメン……。俺、弁当は一人で食べる主義だから……」
主義って何だよ、俺? 自分で言ってて恥ずかしいわ。
「そ、そうなんだ……残念だけど分かったわ……」
「おーーーっす、颯に徳川さん!! 二人共、早いなぁああ!!」
「おはよう、前田君」
「よ、よぉぉ……」
前田、相変わらず、騒がしい奴だな。
耳がキーンって鳴ってるぜ……
「ところでさ、二人共、今日の昼休みは何してる? もし何も用事が無ければ俺と『作戦会議』をやらないか!?」
何の作戦会議だよ? ってか、俺は訳の分からない作戦会議に参加なんてしないけどな。
「前田君? もしかして、その作戦会議っていうのは前田君が『クラス委員長』になる為の会議なのかな?」
「おーっ!! さすが徳川さんだな!! その通り、俺が一週間後の投票で『クラス委員長』になる為の作戦会議さ。どうだろう、二人共?」
何でお前が『クラス委員長』になる為の作戦に俺が付き合わなくちゃいけないんだ!?
ふっ、ふざけるんじゃねぇぞ!!
「うん、別に私はいいよ」
と、徳川……お前はそんな奴の為に貴重な昼休み時間を棒に振るのか!?
いくら人気を取る為だとしても、さすがにそれは尊敬に値するかもな……
「お、俺は弁当を食べ終わったら直ぐに図書室に行って勉強するから無理……」
前田、今俺が言ったことは嘘じゃないぞ。
俺は中等部の頃から昼休みは図書室で勉強をしていたんだからな。
「へーっ、そうなのか颯!? それじゃあ、作戦会議は図書室でやろうぜ!!」
はーっ!? こいつは何を言っているんだ!?
俺の話をちゃんと聞いていたのか!?
「フフフ、前田君? さすがに図書室で作戦会議は無理だと思うわ。図書室は私語厳禁だしね」
ふぅ……徳川はそういうところは「まともな奴」で助かったぜ。
「そうなのかぁ……それは残念だなぁ……」
クククク、ようやく前田の落ち込む顔が見れて俺の心は晴れやかになったぞ。
「図書室で作戦会議をするのは無理だから、お昼を三人一緒に食べながら会議をするっていうのはどうかしら? ニヤリ……」
と、と、徳川―――っ!!!!
「おーっ!! 徳川さん、それは良い考えだね。颯、それなら大丈夫だよな!?」
徳川伊緒奈……お前はどうしても『陰キャ』なこの俺と一緒に弁当を食べたいのか?
なっ、何が目的なんだ?
それとも何かの『マニア』なのか?
俺が返事に困っていると徳川が俺に近づき耳元で、
「竹中君の図書室での自由な時間を奪われるよりも、食事時間の十数分を諦める方がマシだと思わない? ウフフ……」
俺は徳川の言葉に納得せざるを得なかった……
「わ、分かったよ……」
ガラッ…ガラガラッ
ん? 俺が朝一番からテンションが下がる出来事があったばかりの時に二年生の女子が教室に入って来たぞ。
何で二年生だと分かるんだって?
それは、この学園の制服はブレザーなんだが、男女ともネクタイをしている。
それで、そのネクタイが学年ごとに色が違うので分かるってことなんだ。
そして俺達一年のネクタイの色はグリーンなのだが、教室に入って来た女子のネクタイはオレンジ……そう、二年生のネクタイの色なのだ。
その時、前田と徳川が同時に呟いた。
「「は、
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お読みいただきありがとうございました。
徳川に何故かお昼を一緒にと誘われた颯だがかかわりたくないので断った。
しかし徳川の策略?により結局、一緒に前田を委員長にする為の作戦会議をしながら昼食をとることになってしまった。
そんな中、教室に二年生女子が入って来た。
『羽柴陽菜』……徳川も前田もその二年生女子を知っている様な感じであったが……
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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