雪の魔女

猫町大五

雪の魔女

 光る。それは酷く眩しく、明るかった。深夜十二時。街には雪が降り積もる。――異常な程。

「・・・そろそろ、来るかもな」

「何がです?」

「――魔女だよ」

 途端、一区画。粉微塵に、吹き飛んだ。


「アハハッ!!」

 時計塔。屋根に佇む少女。

「・・・綺麗」

 煌々と燃える教会。白い雪に、返り火が美しい。

「熱いのはねえ。でも、綺麗だからいいや」


「魔女?」

「魔女さ。寒いと出てくる。特に、こんな雪の日には」

 男。傍には困惑顔の、少女。

「で」

「ああなる」

 煌々と燃える教会を指した。

「・・・街、全部が?」

「なり得るな」

「・・・止めないと」

「そういうこと、行くぞ」


「おわっ!!」

時計塔、その屋根。滑り落ちる少女。

「わあっ!!」

 滑落、滑落。そして。

「ふっわああ!!」

 足下が、消えた。その刹那、頬を掠める何か。

「・・・くふ」

 ペロリとなめ取る少女。ケチャップにあらず。

「・・・楽しそうじゃん」


「ちょ、あの」

「何だ」

「街中で銃ぶっ放して何が?!」

「だって魔女怖いし」

「うええ?!」

 男の手。白煙を上げる拳銃。

「で、その拳銃、何なんですか」

「何が?」

「いや・・・魔女に使うんだったら、なにか仕込んであるかなって」

「魔弾とか?」

「はい」

「教会の銀十字溶かした弾丸とか?」

「はい!」

「・・・普通にホームセンターで買った」

「・・・・・・は?」


「・・・ねえ」

 魔女。

「何だ」

 男。

「・・・寒い」

「だから?」

「・・・・家、泊めてくれない?」

「えっ」

 ・・・少女。


「・・・あの人、何だったんですか」

「だから、魔女だって」

 夜更け、男の家。ベッドはない、占領済みだ。

「だって」

「もっと凶悪だと思ったか?」

「だって。あの教会」

「ああ。あれ、取り壊し予定だったのさ。許可も貰ってる」

「え?」

 少女、怪訝な顔。

「・・・魔女ってのは本当さ。でも最近、『そんなおとぎ話』と信じない奴が多いだろ?」

「・・・まあ」

「承認欲求・・・いや、アイデンティティをなくしたくないのか・・・それとも、ただの寂しがり屋なのか。大雪が降るといつもああだ」

「・・・・・・」

 外は大雪。その雪も、いつかは融けるだろう。

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雪の魔女 猫町大五 @zack0913

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