第3話

きっと、同じだ。

そう思うことにした。

だって、違うって誰が決めるの?


僕は男だ。けれど、好きな相手は同性の男の人。

おかしいと気づいたのはいつだっただろうか。

けれど、今も昔も周りも自分でさえ、同性が好きとは言えない。


苦い気持ちが心の中から消えてくれないんだ。

好きな人が側にいるのに、『好き』って言えない。

ずっともやもやした気持ちを抱えていた。

自分を認められないでいた。


そんな僕の気持ちを変えてくれたのが、沢渡だ。

僕の幼稚園からの幼馴染。

一緒につるんで、毎日、暗くなるまで遊んだ。

母からは、

「あんたたちそれだけずっといて、よく話すことがあるね。子犬のじゃれ合いに見えるわ」

と、呆れ半分で僕の事を見ながら言った。


高校への進学校が別になっても、何かしら理由をつけて遊んでいた。

僕の好きな人は沢渡ではない――。

沢渡は女の子だ。

親友と言ってもいい。

話していて楽だった。気取らないでいい自分でいられたから。


ある日、沢渡が言ったんだ。

僕に

「好き」

って。

けれど、何にも答えることができなかった。

まさか、好きだから一緒にいたとは思っていなかった。

けれど、今から思い返していたら、確かにそんなふるまいを見せていた気がする。

じっと見ていたり、たまに会う日はテンションが高かった。

「好き」という気持ちがわかるから――。

告白する勇気ががわかるから、僕は、沢渡の気持ちを無視したくない。


今まで、ずっと側にいてくれた沢渡だから、僕は僕の本当の気持ちを打ち明けた。


勇気がいるっていうもんじゃない。

心臓が飛び出るかと思うほどに大きな鼓動。

冷汗が背中を伝う。

きっと酷い顔をしていたに違いない。


その時の告白を沢渡はこう言っていた。

「眞白、真っ青な顔をして、瀕死の魚みたいに口をパクパクしてたよ」

そして、こう続けたんだ。

「そっか、私、もしかしたらそうなのかなって思ってたんだ。けど、実際にそう言われたら、辛い」

僕は、その言葉に地の果てまで駆けていきたくなった。居たたまれなかった。ここに居たくなかった。

「眞白、誤解しないで。私がフラれたのが辛いだけで、あなたが誰を好きだろうと構わないの。だって、『もしかしたら、』って思った時点で、色眼鏡で見ていたのなら、あなたから離れていたはずじゃない?それにね、恋するのは自由よ。気持ちは、あなたのもので、誰の物でもない。だから、眞白、恋する気持ちに男も女もないと私は思う」

そう言って、清々しいほどの笑顔で僕を見たんだ。


その時、僕は僕でいよう。

そう思えたんだ。

沢渡、ありがとう――。

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