第158話 若葉を探して
青嵐寺達に言われて黄嶋の鞄を持って家を出たまではいいんだが。
「そもそもあいつどこに居るんだよ」
あいつがどこにいるかなんて全くわからねぇし。そもそもまだこの近くにいるかもわからねぇ。
鞄を置いて来ちまったってのは気づいてるだろうし、あいつらの言ってた通り戻って来てる可能性もあるんだろうが。
「闇雲に動き回ったって見つかるわけねぇだろうしな。仕方ねぇ、こうなったら変身して探すしかねぇか」
周囲に人の影はねぇが、どこから見られてるかわからねぇし、念のため裏の方に隠れるか。
少し行った場所に良い感じに隠れられる場所があったはずだ。
「……よし、誰もいねぇな。ラブリィチェンジ」
変身するのは一瞬だ。すぐに探知の魔法を発動して黄嶋の場所を探す。
怪人の場所を探すのとは違うが、オレらがつけてる変身するための腕輪はフュンフが作ったもんだ。もしかしたらそれが探知に引っかかるかもしれねぇ。
「独特の波形が出てる箇所を探せばいいんだろ。もしいたとしたらあいつくらいだろうし……どこだ。どこにいやがる」
これであいつも変身してたらもっと簡単だったんだろうが。さすがに変身まではしてなかったみてぇだ。神経を集中させて、オレの持ってる腕輪と似たような波形を探す。
「えーと……あ、見つけた。っていうかホントに近くに居たんだ」
探していた腕輪の波形は思った以上に近くで見つかった。というか、家の周辺を動き回ってるってことは鞄を取りに戻るかどうするか悩んでるだろうな。
ぴょんぴょんと屋根の上を飛んで見つけた場所へと行く。するとやっぱりそこには困った顔をした黄嶋がうろうろとしているところだった。
「ど、どうしよう。あの鞄の中に定期も財布も入ってるし。でもあんな感じの悪い出て行き方しちゃったのに今更戻ったりなんて……」
「ねぇ」
「ひゃんっ!? って、紅咲君!? ど、どうしてここに!」
「この姿の時にそっちの方で呼ばないで欲しいんだけど」
「あ、ごめんなさい」
「まぁいいけどさ。とりあえずこれ、忘れ物」
「わたしの鞄! 届けに来てくれたんですか!?」
「さすがに忘れたままにはできないでしょ。明日学校で渡すのも変な感じになるし。なんか色々入ってそうだし」
「すみません。ご迷惑をおかけしたみたいで」
「それはいいんだけどさ」
「…………」
「…………」
なんとも言えない空気が流れる。まぁさっきあんなことがあったばっかだしな。特にこいつの性格だと気まずいだろうな。
「え、えっと。それじゃあわたしはこれで」
「ちょっと待って」
「っ、な、なんですか?」
「その……理由もわからずに謝るのは違うと思うけどさ、ごめん」
「なんでレッドさんが謝るんですか」
「何か気に障るようなこと言ったんでしょ? 正直まだ理由は全然わかってないけど、そのせいで怒ったんだって空花が言ってたから」
「別に怒ったわけじゃないんですけど。それに、レッドさんは何も悪くありません。全部わたしのせいなんです。わたしの未熟さのせいなんです」
未熟さ……こいつが言ってた、魔法少女としての理想と現実って奴か。
「ねぇ、教えてくれないかな。怒ったわけじゃないにしても、何か引っかかることはあったわけでしょ。でも私にはそれが全然わからない。わかってない。だから、教えてほしい」
「知ってどうするんですか?」
「それは……」
初めて感じた黄嶋からの明確な拒絶の意思。だがそれも無理のないことなんだろう。オレは今こいつの抱えてるものに、こいつの内面に無理矢理踏み込もうとしてんだからな。
だが、だからこそ引くわけにはいかねぇ。
「私はあなたのことを知らない。でも知ることはできるから。知ったから態度変えるとかそういう話じゃないけどさ、でも、知って見えてくることもあるはずだし。何より、同じ部活の仲間が何か悩んでたら助けになるものじゃないの?」
「っ……ふふ、ずるいですね。その言い方」
「こう言ったら話してくれるかなって思ってさ」
「そうですね。ううん、そうだね。わかった。わたしも確かめたいことがあったから。そんなに、大した話じゃないけど聞いてくれる?」
「うん、わかった。でもこの場所じゃちょっと目立つから場所だけ移動した方がいいかも」
「あ、そうだね。その方がいいかも。でも、それじゃあどこに」
「ちょうど良い場所知ってるからさ、着いてきて」
そう言ってオレは黄嶋をある場所へと連れて行った。
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