第149話 リハビリがてら怪人を探しに

「ずいぶんと長話だったね」

「そんなに長いこと話してたかしら」

「うん。飲んでたお茶がすっかり冷めるくらいには」


 こっちが細々と茶菓子を食べてる間、ブルーとメイスは魔道具についてあーだこーだと語り合っていた。どうやらメイスは言うに及ばず、ブルーもなかなか魔道具好きだったらしい。


「結局どんな魔道具依頼したの?」

「そうね。簡単に言うと剣の出力を安定させるための魔道具よ。この間の戦いで、どうしてもムラが出る部分があったから」

「ムラって、お前の魔力制御でムラが出るって言うなら私はどうなるの」

「求めてるレベルが違うでしょう。私の剣には繊細な制御がいるの。あなたみたいにバカスカ魔法を使ってればいいわけじゃないのよ」

「なんかバカにしてない?」

「してないわよ。むしろ羨ましいくらい。あなたの魔力量だけは私も認めているもの」

「だけっていうのは余計だと思うんだけど」


 認めるのは癪だが、確かにこいつに比べたらオレの魔力制御はまだまだ甘いんだろう。それでもだいぶ成長した方だとは思うんだが。

 まだどうにも感覚を掴みづらいっつーか。少しでいいのにドバッと出て来る感じだ。前よりはマシになったがな。


「それで、この後はどうするの? 教官もプレアナースもここにはいないみたいだし、メイスへの挨拶は終わったんでしょう」

「うーん……確かにもう『グリモワール』に用事はないかな。そういえば今更だけど、フュンフはイエローと一緒にいるの?」

「そのはずだけど。そういえばフュンフはともかく、イエローの方は……」

「イエローがどうかしたの?」

「いえ、この間退院する間際に会いに来てくれたのだけど。少し様子が変だったような気がしたの」

「様子が? 私のとこにも来たけど、特に変な感じは……って、それがわかるほど仲良くはないんだけど」

「せっかく同じ部活なんだから仲良くしなさいな」

「そんなこと言われても」


 なんか妙に避けられてる気がするしな。同じ部活に入ったし、これから一緒に戦うことも増えるだろう。そう考えたら多少は相手のことを知っとくべきなのかもしれねぇが。どうにもな。

 自慢じゃねぇが、コミュニケーションは得意じゃねぇ。こいつと話すようになったのは成り行きだったし、空花や亮平は向こうから絡んできた結果だ。


「はぁ、あなたがイエローに対して壁を感じる理由はわからないでもないけれど。だからってこのままでいいと思ってないでしょうね」

「そんなことはないけどさ。でもどうしろっていうのさ」

「それこそ自分で考えなさい。まぁどうにかする気があるのであれば、多少は手伝ってあげてもいいわよ」

「なんかそれでお願いするのは嫌なんだけど」

「じゃあ自分でなんとかするのね。私は別にどっちでもいいもの」

「ぐっ……」


 こいつ足下見やがって……。


「わかった。わかったよ。今はどうこう言わないけど、もしそのタイミングが来たらお願いする……かも」

「いつもそれくらい素直なら可愛げもあるのに」

「うるさいっ!」

「いちいち噛みつかないの。子供じゃないんだから。話が脱線したわね。それで、この後は結局どうするの? この時間だとまだ外は学校も終わってない時間だと思うけれど」

「そうだね。でもこの姿のままならいくらでも誤魔化せそうだし。このまま街の方にでも行って見る? 件の怪人達、もしかしたら見つかるかもしれない」

「……あなた、自分が病み上がりだってわかってる?」

「もちろんわかってるけどさ。でもあんな話を聞いた後に無視することもできないし。それに病み上がりだからこそちょっと軽く運動したい、みたいな?」

「そんな風に舐めてるといつか痛い目見るわよ」

「舐めてるわけじゃないけど。でもブルーだって気にはなってるでしょ?」

「それは……」

「だったらいっそ自分から見つけにいくのもありかもってね。ヤバそうな奴なら適当に連絡すればいいし、いけそうなら戦えばいいってね」

「前から思ってたけど、あなた変身すると喋り方だけじゃなく、性格もちょっと変わってるわよね」

「え。そ、そうかな?」


 そんなつもりはなかったんだが。いや、でも、もしかしてそうなのか?

 まさかフュンフの奴、オレの喋り方だけじゃなくて精神まで汚染してやがったのか?


「ちょっと今からフュンフに小一時間問い詰めたいけど……それは別に機会にするとして。とりあえず言った通り怪人探してみよっか」

「仕方ないわね。あなたを一人にするわけにもいかないから付き合ってあげる」

「そっちこそ全然素直じゃないじゃん」


 自分も探しに行きたかったくせによ。

 ま、いいか。そんな簡単に見つかるとも思わねぇが。見つかったらラッキー程度のもんだ。

 そしたらリハビリがてら動けるだろうしな。


「よし、それじゃ行こっか」

「えぇ」


 そして、オレとブルーは『ウバウンデス』の怪人を探しに街へと繰り出すのだった。


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