第123話 傭兵団『血鬼壊戦』
青嵐寺がクラスの連中に注意を飛ばした直後のことだった。
凄まじい揺れがオレ達の教室を襲い、次いで衝撃。教室の窓ガラスが全部吹き飛んだ。
「青嵐寺!」
「わかってる!」
クラスの連中に当たらないように飛んできた窓ガラスの破片を腕輪から発動できる簡易魔法で吹き飛ばす。
それでも簡易魔法ってだけあって微調整は聞かない。そのせいで完璧に防げたとは言えなかった。だがほとんどは防いだ。ぱっと見ても大きな怪我をしてる奴はいねぇ。これならすぐに逃げれるだろう。
この状況でどこに逃げるんだって話だが。
突然のことにクラス内は阿鼻叫喚の様相となっていた。教室から逃げ出す奴、机の下に隠れる奴。反応は様々だ。
まぁオレ達にとっては都合がいい状況だ。今クラスの連中の視線はオレ達に向いてない。しかも好都合なことに窓は割れててわざわざ開ける必要もない。
「良平、空花。急用ができた。お前らも隙見て逃げろよ。できるだけ遠くまでな!」
「あ、おい! 晴輝! って、青嵐寺さんまでどこに行くんだよ! ってここ何階だと思ってんだ!」
「オレらのことは気にすんな! いいか、さっさと逃げろよ!」
説明に時間かけてる暇はねぇ。
言うやいなや、オレと青嵐寺は窓から身を乗り出し、飛び降りた。
「ラブリィチェンジ!」
「ブレイブチェンジ!」
地面に着地すると同時に変身が完了する。
「『緊急招集』の通知……これが来たってことは昨日の怪人レベルってことだよね」
「えぇ、感覚的には昨日のよりもマズい気はするけど」
「私も同じ。なんていうか……うまく説明はできないけど」
昨日のメタルリザードのような大型怪人が現れたわけじゃねぇ。それがなおのことオレの中の危機感を刺激する。
「イエローはまだ来てないみたいだね。ってまぁ当然か」
「すぐに来ると思うわよ」
「え?」
「なんでもないわ。すぐに来ると思う。だから先に行きましょう」
「う、うん」
なんですぐに来るなんてわかんだ?
まぁいいか。確かに悠長に待ってる時間もねぇ。
オレ達はすぐに気配のした方向、グラウンドの方へと向かった。
「これは……」
「凄まじいわね」
体育なんかでいつも使うグラウンドは、もはや全く変わり果てていた。地面は深く抉れ、大きなクレーターができており、端に設置されていたサッカーゴールはさっきの衝撃で壊れていた。
そして、グラウンドの中心にできた深く大きなクレーター。その中心に奴は、奴は……奴らはいた。
「っ……」
思わず息を呑む。昨日の怪人みたいな、でかいからこその威圧感みたいなのはねぇ。
だが、そこに、その場にいるだけで全てを呑みこむような圧倒的な存在感があった。特に二人いるうちの一人、例えるなら鬼みたいな姿をしたそいつは、今までに会ってきたどの怪人よりも……。
はは、マジかよ……昨日の今日でこれは無しだろ。
「……ふぅ……」
緊張で乱れそうになる呼吸を無理矢理整える。今更ながらに今朝フュンフが言ってたことが脳裏をよぎった。
「こういうことだったんだ。それにしたって洒落にならない気がするけど」
「どうしたの? まさか怖じ気づいた?」
「それこそまさか。行こう」
どっちみちこのまま引き下がるわけにもいかねぇんだ。
「来たか」
重苦しい声が響く。
「そっちこそ。ここに何か用があるわけ? ずいぶんな登場の仕方だと思うんだけど」
「この場に用はない。用があったのはお前達だけだ」
「私たち?」
「どういうこと?」
「そのままの意味だ。ラブリィレッド、そしてブレイブブルー。ホープイエローはいないのか……だが、まぁいい。我が名はオウガ。傭兵団『血鬼壊戦』の頭を務めている」
「傭兵団……聞いたことがあるわ。ヴィラン組織に雇われて働く怪人専門の傭兵がいるって。まさか本当に実在していたなんて」
「そんなのがいるの?」
「怪人の世界にも色々あるということだ。怪人の敵は魔法少女だけではないからな。だが、今はそんなことはどうでもいい」
オウガの目がギラリと輝く。その目はまっすぐにオレのことを射貫いていた。
「構えろ」
「っ!」
「俺が望むのは最高の闘争。かかってこい、魔法少女。お前たちが敵わなければ、この俺がこの街を破壊し尽くしてやる」
そう言ってオウガは鬼気を放った。
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