第114話 技を完成させるために

 オレ達が戦っていた怪獣、もとい大型怪人には『メタルリザード』って名前がつけられた。

 蜥蜴を巨大化したような見た目とあの鉄みたいに硬かった体からそう名付けられたらしい。まぁ安直だが、わかりやすくていいとは思う。

 あの後調査に来たセンリから聞いたが、このレベルの怪人が急に出現するのは結構珍しいことらしい。なんの予兆もなく現れたのは明らかに何か作為的なものが感じられるとかなんとか。

 その辺のことはよくわからねぇが、詳しいことは今後の調査待ちだ。

 不幸中の幸いというべきか、死人はでなかった。それでも怪我した奴はかなりの数いたみたいだが。

 破壊されまくった街の方は二、三日程度で復興できるらしい。メタルリザードが暴れまくったり、オレら魔法少女の魔法やらなんやらで相当滅茶苦茶になってたからな。二、三日で復興できるってのは流石なんでもありの魔法って感じだ。

 残った問題は、オレの手元にある人形のことだ。メイスの前にセンリに見せてもいいかと思ったが、忙しそうだったし、なんとなくオレ自身が気になったからセンリには渡さなかった。




そして放課後。

 オレは人形の件と朝に渡した魔道具を受け取るために『グリモワール』へ再び訪れていた。


「あ、レッドちゃん。見てたよ今日のニュース。すごい活躍だったみたいじゃない」

「あ、メイスも見てたんだ。まぁ活躍っていうか一発でかいの叩き込んだだけって感じだけど」

「戦闘映像見せてもらったけどすごい威力だったねあの一撃。威力だけで言うなら教官の一撃にも匹敵するんじゃない?」

「さすがにまだそこまでじゃないと思うけど。ま、そこを目指してはいるけどね」


 オレ達三人が協力してまで目指したのは、言ってしまえばそこに至るためだ。

 あの教官の絶対無比な一撃。一人じゃ再現できなくても三人ならできるかもしれない。

 今はまだそこまでの威力じゃねぇが。もしあの一撃を完璧に制御できるようになればそこに届くのも夢じゃねぇだろう。


「うーん、安定性には欠けてそうだしねぇ。特に発射後かな。撃った反動でかなりバランス崩してたし」

「そこなんだよねぇ。威力はすごいんだけど、すごすぎてこっちが耐えれてないというか。もし完全にバランス崩したりしたら撃った矢の制御まで手放すことになるし」


 あれは普通の矢と違って撃てば終わりじゃねぇ。撃った後もオレ達自身である程度の自由はきく。だがそれは裏を返せば制御を手放す可能性もあるってことだ。今回も転んだりしてたら矢は明後日の方向に飛んでってただろうな。印はあくまで着弾地点へと誘導しやすくするためのもんでしかねぇからな。


「その辺りも今後の課題かな」

「私ならなんとかできるかもしれないよ」

「ふーん、って、えぇっ!? な、なにさらっと言ってるの!」

「そんなに驚かなくても。ほら、レッドちゃんの飛行をサポートしてる『ビュンビュンちゃん』と一緒だよ。ようは発射をサポートするものがあればいいんでしょ。上半身と下半身の姿勢制御。私もレッドちゃん達の技の完成に興味あるし」

「手伝ってくれるっていうなら願ってもない話だけど」


 なんだかんだこいつの魔道具には助けられてる。もしなんとかしてくれるってなら、それもありかもしれねぇ。


「それじゃあお願いしてもいい?」

「もちろん! でも、三人分だから少し時間かかるかもしれないけど」

「まぁこっちはお願いする側だし。二人も連れて来た方がいい?」

「そうだね。体のサイズとか知りたいから」

「わかった。また連絡しとく」


 気付けばメイスの魔道具のユーザーに。まぁ便利だからいいんだが。頼り過ぎねぇように気を付けないとな。


「あ、そうだ。本題忘れるとこだった。はいこれ。メンテナンス頼まれてた魔道具だよ。最後の調整があるからつけてくれる?」

「うん、わかった」


 代わりに借りてた魔道具を外し、渡された魔道具を装着する。

 お、やっぱりめちゃくちゃしっくりくるな。というか、なんか前以上にしっくり来てる気がすんな。


「どう?」

「うん、いい感じ。なんか動きやすくなってる気もするし」

「そっか。またレッドちゃんに合わせて調整しといたからそのおかげかな。ついでに飛行補助以外の機能も追加したりしてみたから、それも試してみてね」

「そっか。わかった。ありがとう。ってそうだ、私ももう一つ用件があったんだよね」

「ん? なぁに」

「これなんだけど……」


 オレは持ってきていた人形を取り出し、メイスに渡す。


「? なにこれ」

「今回戦ったメタルリザードを倒した後に、その場に落ちてたの。何かわからないかなって思って」

「ふぅん、確かに普通の人形ってわけじゃなさそうだし……預かってもいいの?」

「もちろん。そのために持ってきたんだし。メイスには色々お願いすることになっちゃうけど」

「あはは、そんなの気にしなくていいよ。私もレッドちゃんには色々お願いしてるわけだし。持ちつ持たれつってやつだね」

「そう言ってくれるとありがたいかも。それじゃあお願いね」

「うん、任せて! この人形のことも合わせて、また進捗があったら連絡するから。まぁそれがなくてもいつでも遊びに来てくれていいだけど」

「わかった。また遊びにくるね。というか、たまに来ないとメイスはずっと作ってばっかりになりそうだし」

「えぇ、そんなことないと思うんだけどなぁ」

「そんなことあるから。気をつけてよね」


 こいつに倒れられたらオレの魔道具のメンテする奴もいなくなっちまうからな。

 まぁ訓練のついでに顔出すくらいはしてやるか。

 そして、それからしばらく他愛のない話をした後で、オレはメイスの工房を後にしたのだった。


 

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