第81話 魔法って便利な言葉だな
センリと別れた後、オレは黒の塔を目指しながらグリモワールの中をフラフラと歩き回っていた。
今通ってる場所はなんか店みたいなのがいくつも並んでる。そういうのは白の塔の方にあるって聞いてたけど、こっちの方にもあるんだな。
「うーん、広いなぁ」
正直その一言に尽きる。
オレの勘違いじゃなければ、ここに入る前に見てた以上に広い。
魔法で色々と誤魔化してるらしいけど、もしかしたら空間事魔法で広げてるのかもしれない。マジでなんでもありだな、魔法。うん、魔法って便利な言葉だな。
まぁそのために必要な技術は言うほど簡単じゃないんだろうが。
「っていうか、ホントに目が回りそう」
子供の頃に初めてテーマパークとかに行った気持ちに近い気がするな。常識外のモノが多すぎていちいち目移りしちまう。さすがに興味を惹かれるな。
「あれも全員魔法少女なんだよね」
ふと空を見上げれば、ビュンビュン高速で魔法少女が飛び交ってる。
日常じゃありえない光景。でもそれがここの当たり前なんだよな。
「そう考えたら私もいちいち歩かなくていいのかな。空飛べば黒の塔にも早く着くだろうし」
そう思って飛び上がろうとしたちょうどその時だった。
「あ、ちょっと待ってお姉さん!!」
「っとと……って、え?」
「そうそう。あなただよ。そこの可愛らしい真っ赤な服のお姉さん」
「可愛らしい……」
いや、うん。純粋な外見評価なんだけどな。確かに今のオレの見た目はそう見えるだろうさ。今声をかけてきた奴的には褒め言葉なんだろうけど、正直全然嬉しくねぇ。
「なんでちょっと落ち込んでるの?」
「う、ううん。なんでもない。それよりえっと……あなたは?」
「あ、ごめんごめん。自己紹介がまだだったね。あたしはドワーフメイス。魔法少女だよ」
「魔法少女……」
声をかけてきたのは明らかにガキ。見た目でいうとそれこそ十歳くらいに見えるレベル。こんな小さい奴も魔法少女なのか。
そんなオレの考えが表情に出てたのか、ドワーフメイスがむくれた表情で言い出した。
「あ、今小さいって思ったでしょ」
「ご、ごめん」
「むぅ。まぁ事実なんだけどさぁ。これでもあたし十八歳なんだけど」
「えぇ!? 年上!?」
十八歳って、マジかよ!
え、いや、十八歳……十八歳?
目の前にいるドワーフメイスが十八歳という事実が信じられない。
見た目完全に小学生だぞこいつ。
「あ、変身したら見た目が結構変わっちゃう系だったり?」
オレみたいな例もあるからな。変身したら姿が変わるってのは普通にあり得そうな話だ。というかそれ以外考えられない。
「ううん、そんなことないよ。ほとんど髪色とかはさすがに変わってるけど、後は割とそのまんま」
「えっ!!」
「なんでそんなに驚くかなぁ。そんなに子供っぽい?」
「まぁ正直……かなり」
「うぅ……毎日牛乳飲んでるのに」
もはや牛乳とかそんなレベルじゃないと思うけどな。
「見た目が変わるタイプの魔法少女もいるけど、あんまり変わらない人もいるんだよ。あたしは後者だったけど……せっかくならもっとこう……高身長のボンキュッボンな体型になってくれたらよかったのに……」
ボンキュッボンって……そんな憧れるもんなのか?
まぁ確かに男目線から見るとそういう奴に目が行くのは否めねぇけどな。
「でもほら、そういうのが好きな男子もいますし」
「そんな特殊な人たちに好かれても全然嬉しくないよっ!」
「ですよねー。あ、でも変身前とそんなに差異が無いならバレちゃったりとかあるんじゃ」
「あ、それは大丈夫だよ。一般人相手には認識阻害が働くからね。写真が出回ったりしても同一人物だとは思えないようになってるの。まぁ確かに魔法少女には認識阻害が効きにくいけど、魔法少女相手にはバレてもそんなに問題ないし。そもそもあたしはあんまり表に出るタイプじゃないし」
そういえばそんな話を前に聞いたような。でも言われてみりゃ青嵐寺の奴もブレイブブルーに変身した時は見た目にそんな変化はなかった……ような気がする。
ってそうじゃねぇ。なんでオレこいつに呼び止められたんだって話だ。
「話変わるんですけど、結局何か用ですか?」
「っ! あ、そうだった! あなた今飛ぼうとしてたでしょ?」
「えぇまぁ。飛んだ方が楽かと思って」
「まぁそう思うのもわかるんだけどね。でもあなた飛ぶの慣れてないでしょ」
「なんでわかるんですか?」
「えへへ、まぁ実はさっきあなたが空飛んでるのちょっと見てたんだけど。ちょっとふらついてたりしたから。もしかして初心者なのかなって」
「う、まぁそうですけど」
「だよねだよね。実はあたし魔法技師なんだよ」
「魔法技師……戦う方じゃなくて作るのに特化した魔法少女でしたっけ」
「そうそう。まぁ魔法技師としてまだまだ新米なんだけど。それでね、一つ相談があるの」
「相談?」
なんか微妙に嫌な予感がするんだが。
でもなんかなぁ。こいつのこと見てると千夏と冬也がちらつくんだよなぁ。
ガキっぽいせいか?
「とりあえず話を聞くだけでも! ね? お願いっ!!」
「まぁ話を聞くくらいなら」
「やった! ありがと!」
「それでその相談の内容は?」
「うん。あのね、あたしの魔道具のテスターになって欲しいの!」
「……はい?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます