第53話 転校してきた理由

 ブレイブブルーにカウンターを決めての勝利、調子乗ってたこいつにカウンター決めれたのは正直相当気持ち良かったが、それで勝ち誇るほどガキじゃない。

 まぁめちゃくちゃスッキリしたけどな! あんだけ散々煽って来やがったブレイブブルーに勝てたのは、調子乗って絡んできた不良共をぶちのめした時と同じか、それ以上にスッキリする。

 そんでもって、オレの予想通りこいつの正体は青嵐寺だったってわけだ。


「……気付いてたのね」

「まぁこれだけたくさんヒントがあれば、さすがにね。というかやっぱり認めるんだ」

「別に積極的に隠す理由もないもの。気付いたなら気付いたで構わないわ。むしろまだ気づかなかったとしたら相当鈍いということになるわね」

「だったらなんで驚いたわけ?」

「あなたは相当鈍いタイプだと思ってたから。その意味で驚いただけよ」

「ぐっ……ば、馬鹿にして……」


 こいつ、もう一発ぐらい蹴ってやろうか。こんな状況でまだそんな言い方するか普通。もっと敗者らしい相応しい態度ってもんがあるだろうが。


「と、とにかく! そっちのこと色々聞かせてもらうから」

「……まぁいいでしょう。どんな言い訳をしたとしても私が負けたのは事実だもの。それで、何が聞きたいのかしら?」

「…………」


 あれ、待てよ?

 なに聞けばいいんだ?

 いや、確かに聞くことはいくらでもあるんだけどな。

 まさかこんなことになると思ってなかったからな、何も聞く内容を考えてなかったな。


「どうしたの?」

「あ、いや……とりあえず、あなたは青嵐寺零華で間違いないんだよね」

「その通りよ。あなたの学園へやってきた転校生にしてクラスメイトの美少女よ。紅咲晴輝」

「っ……そっちもこっちのこと知ってたわけなんだ。というか自分で美少女とか言わないでよ!」

「事実だもの」


 事実とか、自分で言うか普通。こいつどんだけ自分に自信あんだよ。

 まぁ確かに見た目だけで言うならアイドルとかモデルとか女優とか、下手したらそれ以上のレベルなのは事実だ。認めるのは癪だけどな。


「そもそも私があなたのいる高校に行くことになったのはあなたの存在を知ったからよ」

「……はい?」


 いますっごい聞き捨てならないことが聞こえた気がしたんだが。


「だから、私が転校してきたのはあなたがあの学校にいたからよ。どんな人なのか知るために来たの」

「いやいや、それはおかしいでしょ。だってあなたがこっちに来たのって、私が魔法少女になった次の日くらいだったんじゃ……」

「だからずっと前から知ってたのよ。あなたのことはね」

「それってどういう……いや、そもそも知ってたって。そんなに前から私って目を付けられてたの?」

「もうずっと前からね。だから私はあなたを見極めるために、魔法少女として相応しいかどうかを判断するために来たの」

「いやそれは……それだけの理由でわざわざ来たなんて」

「まぁ事前にあなたのことを調べた段階で魔法少女として相応しくないと判断はくだしてたけど」

「事前にって、そこまでしてたの?」

「当たり前でしょう。でも調べてわかったのはあなたが不良と喧嘩ばっかりしてるろくでなしだったってことだけ。その時点で魔法少女に相応しいわけがない。今活動しているのだってお金が目的なんでしょう? そんな不純な動機を抱えてるあなたが魔法少女として活動するのを歓迎できると思う?」

「確かにそこだけ切り取られたら歓迎できはしないけど……」


 そう言われたら相応しいとは思えねぇけど。別に魔法少女に相応しいとか、魔法少女をやりたいから魔法少女やってるわけじゃない。

 不本意ではあるけど、こっちにもこっちの目的がある。その目的のために魔法少女が都合よかったってだけの話だ。

 だが、だからってそのことをいちいちコイツに説明するのも面倒だ。


「戦ってる間に言ったこともそうだけど、それ以外も含めて。あなたは魔法少女として相応しくない」

「め、めちゃくちゃ言うね……完全に否定できないのが若干悔しいけど」

「とはいえ、不意を打たれたとはいえそんなあなたに負けてしまったのが悔しくてたまらないけれど」

「まぁ別に私が魔法少女に相応しいかどうかなんてのは割と本気でどうでもいいけど。なんでそこまで私にこだわるの? 別に魔法少女は私だけじゃないし、私と似たような魔法少女だっているでしょ?」

「男の魔法少女なんてあなた以外に知らないけど」

「そ、そこは今はどうでもいいから! 魔法少女としてのスタンスの話だから!」

「まぁそうね。あなたに注目してた理由はいくつかあるけど、その一つを教えるとしたら……私を魔法少女にした妖精とあなたを魔法少女にした妖精が一緒だから……そんなところかしらね」

「っ、それってやっぱり……」


 薄々気付いてたことではある。つまりこいつを魔法少女に選んだのは……。


「あら気付いてたのね。そうよ。その通り。私を魔法少女にしたのは、あなたを魔法少女に選んだのと同じ妖精——フュンフよ」


 

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