第42話 魔法少女の暗黙の了解
青嵐寺のことについては空花に任せるとして、もう一人話を聞いておかないといけない奴がオレにはいた。
ちなみに青嵐寺本人は巧妙にオレを避けてると言うか、気付けば姿を消し、授業になれば現れる。そんな感じで一向に捕まえることができなかった。
「というわけでフュンフ、色々と聞かせてもらうぞ」
昼休みに入って屋上へとやって来たオレは鞄の中で眠りこけてたフュンフを無理やり引きずり出したたき起こした。
屋上は原則立ち入り禁止にはなってるが、前に校舎内をぶらついてる時に偶然ここで屋上の鍵を見つけた。誰かが隠してたのか、それともなんか事情があるのか。
詳しいことはわからねぇが、見つけてからはたまに勝手に使ってる。ここに鍵を隠した張本人とはまだ会ったことないけどな。
「んもう、なによ~。人がせっかく気持ち良く寝てんのに。邪魔しないで」
「うっせぇ、いいからさっさと起きやがれ」
無理やり起こされたことで明らかに不機嫌そうなフュンフ。だが、こいつの事情はオレには関係ない。
ブレイブブルー……というか魔法少女に関する話を聞くならフュンフに聞くのが一番手っ取り早いからな。
「ふぁ……あー、眠い。それで、話ってなによ。まだ学校なんでしょ? 寝てた時間的に今は昼休みかしら。珍しいじゃない。学校内で私のこと起こすなんて」
「お前に用があったからな。別に今じゃなきゃダメってことはねぇんだが。こういうのはさっさとはっきりさせといた方がいいからな」
「ふぅん。まぁだいたい何が聞きたいかはわかるけど。答えれることなら答えてあげる」
「なら話は早ぇな。何度かオレの前に姿を現したブレイブブルー。そいつのことについてお前が知ってることを教えやがれ」
「ブレイブブルーね。まぁ確かに彼女のことについては全く知らないわけじゃないけど。彼女の何について知りたいの?」
「一番聞きてぇのはあいつの正体についてだな」
「んー、さすがにそれは無理ね。いくらなんでも教えられないわ。魔法少女の正体についてはトップシークレットだもの。それはたとえ魔法少女同士でも同じこと。あんただってラブリィレッドの正体が自分だって知られたら困るでしょう」
「まぁ、そりゃそうだがな」
ちっ、もともとあんまり期待はしてなかったがやっぱり無理か。
こいつも言ったように魔法少女の正体に関してはトップシークレットだ。表に出てアイドルみたいな扱い受けてる魔法少女ですら、変身前の姿は誰も知らない。
魔法少女ランキング一位のユスティヴァイスも、二位のトイフェルシュバルツも、変身前の姿を知ってる奴はいない。
まぁ、魔法少女統括協会はその限りじゃねぇみたいだがな。そっちにはオレらの個人情報は筒抜けだろう。
とにかく、変身前の姿ってのは魔法少女が使う魔法とか以上に秘密にするべきものってことになってる。
チーム組んでる魔法少女とかはその限りじゃねぇんだろうけどな。
正体を知られるってことは、弱点を知られるに等しいことだ。どっかで正体を知られれば、それが怪人側に伝わる可能性がなとも言い切れない。
それだけは避けなきゃいけねぇことだ。
だからたとえ魔法少女同士でも互いの正体を探らないっていう暗黙の了解があるらしい。そうう点で考えりゃ今オレがやってることはその暗黙の了解を破ってることになるんだが……ま、今はそのことを考える必要はねぇだろ。
はっきり言うなら、オレは青嵐寺がブレイブブルーなんじゃねぇかって思ってる。はっきりとした確証があるわけでもねぇけどな。
とにかくオレが今はっきりさせたいのは、あいつがブレイブブルーなのかどうか。そして、オレがラブリィレッドだってことに気づいてるのかどうかってことだ。
もしあいつがブレイブブルーだとしたら今朝のあの態度も、変にオレに絡んでくるような真似をした理由も、理由がわかってきそうだからな。
もし今のまま青嵐寺本人に問い詰めてもあの態度じゃはぐらかされるだけだろう。もし万が一違うかった場合なんかもっと最悪だ。
だから本人を問い詰める前に確証を掴む必要がある。
「ちなみに、お前はブレイブブルーの正体を知ってんのかよ」
「さぁ、どうかしらね。知ってるかもしれないし、知らないかもしれないわ。どちらにせよ、私からあんたに言えることはほとんどないわよ。それに、そんなに深く考える必要はないんじゃない?」
「あ? どういうことだよ」
「そのままの意味だけど。あんたがこれからも魔法少女として活動して続けるなら、ブレイブブルーと巡り合う時は来る。ううん、あんた達はその運命にある」
「だからわけがわかんねぇぞ」
「別に理解する必要もないんじゃない? ま、とにかく私が言えるのはこれくらいだから。変なことに意識割いてないで今日の放課後のことでも考えておきなさい。今日も活動するんでしょ?」
「そりゃするつもりだが……はぁ、まぁいい。お前に喋る気がねぇのはわかったからな」
「ふふ、せいぜいモヤモヤしときなさい。それじゃあ私はまた寝させてもらうから」
一方的にそう言い放って、フュンフは再び鞄の中へと潜りこんで寝息を立て始めた。
このクソ妖精……少しは協力する気ねぇのかって話だ。まぁ今さらだけどな。こいつに期待するだけ無駄か。
「それにしても、巡り合う時が来る……か。わけはわからねぇが、一応頭の片隅程度には留めとくか。さて、そんじゃオレも昼飯食うか」
そのままオレは弁当を取り出し、昼休みが終わるまでの間屋上でのんびり過ごしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます