第26話 青嵐寺の謎
結局その後、青嵐寺がオレ達に話しかけてくるようなこともなく。かと言ってオレの方からあいつにわざわざ話しかけるような用事もねぇってことで、特に関わり合いになることもなくオレは一日の授業を終えた。
内心ちょっとモヤモヤしてるが、わざわざ解消するほどのもんでもねぇ。どうせ明日にでもなったら忘れるようなレベルのもんだ。
「はぁ~~~っ、今日も疲れたなぁ。まぁ三時間目の自習の時に青嵐寺に話せただけラッキーって感じだけどな」
「あいつと話せたのがそんなに嬉しかったのかよ」
「そりゃそうだろ。急に転校してきた謎多き美少女。それだけで話題性抜群だろ?」
「謎多き美少女ってお前な……」
青嵐寺の奴が綺麗なのは認めるが、それだけでそんなに人気が出るもんのか?
まぁでも確かに昨日は学年、クラス関係なしにあいつのこと見に来てる奴もいたしなぁ。
当の本人は我関せずって感じだったけどな。今日も部活の勧誘を全部断ってさっさと帰っちまったみたいだし。
「なんだお前達。謎多き美少女って、私の話でもしてたのか」
「んなわけねぇだろうが」
「自分の体見てから言えよこのツルペッタン」
「誰がツルペッタンだ!!」
「ぐぼぁっ!!」
マジが。亮平の奴漫画みてぇなぶっ飛び方しやがったぞ。
「ハルも同じこと思ってるのか?」
「い、いや。別に」
拳を握りしめた空花を前に、亮平と同じことを言えるほどオレは命知らずじゃない。
というか、こいつのどこからそんな力が出てるってんだ。昨日作ってたみたいな暗黒物質を食ってるせいじゃねぇだろうな。
「ならいい。ふん、私みたいな超絶美少女を前によくあんな不敬なことが言えるな」
「あいつ大丈夫なのかよ」
「殺してないから大丈夫だ」
「いや、どんな基準だよそれは」
教室の床に転がって床でピクピクと痙攣してる亮平。確かに死んではねぇみたいだが、あれは大丈夫じゃねぇだろう。
「まぁいい。一発殴ったらスッキリしたし。それよりもなんだまた青嵐嬢の話でもしてたのか?」
「あぁ、まぁそうだな。別にあいつがどうこうって話じゃねぇが。そういや、女子の間で青嵐寺ってどんな感じなんだ?」
「どうって聞かれても。まだ転校してきて二日目だからな。だがまぁ、とっつきにくい印象は持たれてると思うぞ。私は別に気にしてないが、今日も遊びや部活に誘ってあっけなく断れてる連中が多くいたしな。しかし珍しいなハル。お前が女生徒……というか、他人に興味を持つとは。やっぱり美少女には興味があるのか」
「そんなんじゃねぇよ。だいたい美少女ってならオレの妹の方が可愛いだろうが」
「あぁ、アキ嬢か。確かにアキ嬢は私にも負けないくらいの美少女だったが。ハルと兄妹なんてとても信じられないくらいだ。アキ嬢もこんな不良が兄じゃさぞ苦労してるだろうな」
「うっせ、余計なお世話だ。ってか別に不良じゃねぇよ」
「ま、とにかく青嵐嬢のことが気になるなら直接話を聞くのが一番だろうな。どうやらハルには興味を持ってるみたいだし」
「オレに?」
「あぁ。今日の三時間目だって、お前がいたから一緒に課題をやるのを認めたんだと思うぞ。なんでかまでは知らないけどな」
「そんなわけねぇだろうが」
「いいや、これは間違いない。なぜなら、昨日リョウと私の二人で声をかけた時はほとんど相手にもされず断られたからな」
「なんだと? っていや待て、お前ら昨日そんなことしてたのかよ」
「当たり前だ。私もリョウも転校生なんて面白い物件には興味しかない。だからと思ったんだが、まぁ結果は他の生徒ともども惨敗だ。しかし今日はどうだ。お前がいる時に声を掛けたらいとも容易く乗ってきた。しかも『クラスメイトと仲良くなりたい』なってことまで言ってな」
「……」
確かにそれはおかしい話だが。だとしたらますます理由がわからねぇ。あいつがオレに真実興味を持ってるとして、なんでオレに興味を持つ。
今までに会ったことがあるわけでもねぇし。自分で言うことじゃねぇが、オレみたいな生徒は一番近づきたくねぇタイプだろうに。
「ふ、気になるといった顔だな」
「なんか知ってんのか?」
「いや、全く」
「知ってねぇのかよ!」
「知らないからこそ私も興味があるんだ。青嵐嬢がハルに向けているのがどんな類の興味なのか。良い意味なのか悪い意味なのかも含めてな」
「はっ、十中八九悪い意味なんじゃねぇかと思うけどな」
もし昨日転校してきた時に睨んできたのが気のせいじゃなかったとしたなら、確実にオレに対して抱いてるのは悪感情だ。好かれる理由があるとも思わねぇが。だからって初対面から嫌悪されるような理由はねぇだろうしな。たぶん。さすがにそこまでではねぇと思いてぇ。
「ふふ、本当のところを知るのは青嵐嬢だけか。面白いそれはそれで興味深いからな。それはさておき、どうだハル。今日は一緒に駅前の方にいかないか? ゲームセンターに行きたいんだが」
「ん、あぁ。そうだな。今日は特に用事もねぇし構わねぇが」
「マジか! なら俺もいくぞ!」
「うおっ、お前もう復活しやがったのか」
「ふふん、俺は頑丈だからな。それより行くなら早く行こうぜ。時間が勿体ねぇよ。さ、早く行くぞ!」
「はいはい、わかったよ」
「現金な奴め。まぁいい、では行くとしようか」
そしてオレ達は鞄を持ち、ゲームセンターへ向かって出発するのだった。
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