暗渠

玄武 水滉

暗渠

 大学に受かった。

 家から然程遠くない所にある。周りからはもっと上を狙えたと言われたが、自分はこの程度なのだと思い、そこを受験し、無事に受かった。


 天にも昇る心地だった。勉強は苦痛にしか感じないし、遊ぶ様な時間はない。そんな受験勉強も遂に終わったのだ。


 じわじわと自分を蝕む毒を除き、晴れやかな気持ちになった自分に一つ投石。コツンと当たった小石は、少しずつその衝撃を強めていった。


 こんな事は考えても無かった。だってそれは、人間の歴史の中だけだったじゃないか。時間も希望も、そして感情さえも奪っていく。死神の手はそこまで来ていた。

 表立った衝撃は遅かった。遅かったからこそ衝撃だった。


 まさかなという非現実的な地獄は瞬く間に実現し、人生に牙を剥いた。


 辛い。無理。何故今。ネガティヴな言葉が立ち込める霧の中に、僕はいた。じっとしてなければ焦げてしまうような思考回路の中に、ポツンと一人立っていた。


 友人は笑った。そんな自分を欺くかのように笑って歩いた。その事実が余計に自分を蝕むのだ。


 間違っているのは向こうだと。自分は正しいはずでなにが正しくて自分はもしかして正しくないのかも知れなくてそれも辛くてしょうがない。


 生きていればなんとかなるといった人は藁を掴めた人に過ぎない。藁を掴めない僕は、ただ暗渠に流されるのを待つしかない。


 希望を捨て、絶望に浸り、感情を失った僕に明日はあるのだろうか。その答えは僕にしか分からなかった。

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暗渠 玄武 水滉 @kurotakemikou112

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