13 チャージしてチャージする、いやなんでもない
彼女に声をかけようとして咄嗟にオーガに意識を向ける。
再びオーガの魔力が高まってきている。
流石に連発は出来ないようだが、あのチャージが終われば今度はボクに向けて放たれるだろう。
どうする。
チャージが終わる前に致命傷を与える?
先ほどの突撃により距離が空いている、間に合わない。
あの雷を防御する?
絶縁体でもあればまだしも、むしろ通電しやすい金属の剣を持っている。
考えている間にも魔力をどんどん練っている、身体強化もさらに加速させる。
しかし雷なんて避けることも斬ることもできない。
そうこうしている内にオーガのチャージが終わったようだ。
そして奴はまるで勝ち誇るかのように口角を吊り上げた。
オーガが突撃の体勢をとろうと重心を下げていく。
身体強化の影響か、はたまた火事場の馬鹿力か、その光景がやけにゆっくりと感じられる。
生命の危機に瀕した咄嗟の反応で片手を奴の方に向ける。
雷、防御、絶縁、回避、攻撃。
頭の中は高速で思考を回す。
走馬灯のように記憶が巡る。
前世・現世の家族の顔が浮かぶ。
学院で出会った友人たちとの他愛もない会話が蘇る。
本来のアトリシアであれば付き合いすらなかったであろう面々。
数字に強い割にオカルト好きなバルトロ。
脳筋を地で行くカール。
明け透けだけど抜け目なくて憎めないディアナ。
控えめだけど優秀なエリゼ。
おどおどしているのに行動力があるエミリー。
ここに来る前も皆で買い物に行って色々と話した。
そういえばあの時……っ!!!
「GREEEEEOOOOOO!!!!!!!」
再び咆哮し、完全に体勢を整えたオーガ。
ボクは即座に練った魔力を開放した。
「GREO……?」
また雷鳴による光と爆音が響くが、その一撃はボクには届かない。
ボクの前には突撃体勢のまま困惑した様子のオーガ。
隙だらけのその姿に、高まった身体能力で全速の斬撃を放つ。
加速した世界でなお景色を置き去りにするような速度で放たれた剣閃は、先ほど外された首を過たずに切り裂く。
そのまま奴の背後まで駆け抜け残心をとる。
首を失った身体からは大量の血が吹き出し、足元に転がった頭は呆けたような表情をこちらに向けている。
「勝った……」
思わずへたり込みそうになる身体に喝を入れ、クラーラ軍曹の元に走り寄り容態を確認する。
全身が通電でやけどしているし、まだ筋肉が痙攣しているが脈も呼吸も安定している。
おそらくあのオーガの技は、獲物を仕留めるためではなくて麻痺させるためのものだったのだろう。
これならすぐに治療すればなんとかなる。
皮膚表面と神経系を中心に回復魔法をかけていく。
そうこうしていると木々の向こうから声が聞こえてくる。
良かった、増援が来てくれたか。
これでなんとか、なっ……。
ボクの意識はそこで途絶えた。
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