〈Interlude 〉タイミングと後悔
日付が変わり、ついさっきまで明日だったのが今日になっていく。当たり前だが、それをあと数百回繰り返せば生徒会長という管理職から解放され、受験生になり、この学校から……あの場所から離れてしまう。時期が遅くても速くてもいいことなんて何もない。物事にはタイミングがあり、それからズレが生じれば生じるほどに不利になる。
だから次のテスト後なのだ。これ以上速くても遅くてもいいことなんて何もないのだ。私にも彼にも。
だからと言ってこのタイミングでならば必ず、なんて訳でもない。そもそもこの世に絶対など有り得ない。どんな事象を重ねてもその頂に辿り着くことはなく、結果を見て後からこじつけを行い、絶対の二文字が付属する。未来から助言でもない限り、今現状で絶対というのはただの見栄であり虚栄だ。だから自身の為に努力をする。だが、努力の結果にはそれほど期待している訳ではない。所詮はただの自己満足だ。
努力しても願望が叶うとは限らない、むしろ叶わない事の方が多い。そんな事で叶ってしまうならこの世から天才は存在しない筈だ。だから努力とは幻想なのだ。
それでも、頑張った事実があれば慰めにはなるし、諦めも付く。そう思った。
他人にこの事を話せばきっと逃げずに頑張るなんて凄い、勇気があるね、なんて言葉が来るのだろう。けれど、それは違う。逆なんだ。
私はすごくもなければ、勇気なんてない。逃げないんじゃない、逃げられないんだ。逃げることも一つの勇気ある選択だ。現実と向き合い、できる事を行う。例え自分のやりたくないことだろうと。
分かっていてもその選択を選ぶことはできない。簡単だ。諦めればそこで解決ができる。それでも嫌だ。一番利口な解決策でも今ここで最優先されるのは自身の極めて簡単な心理的側面だから。
きっと彼はそんな選択を愚かだと笑ってのけるだろう。現実を見ていないからそんな事ができる。そう笑い飛ばしてくれる。
それでもでも私は知っている。誰もが一番利口な選択だけをしている訳ではない事を、彼もまた若さ故の過ちを犯してしまったことを。
そうやって自分の行動を他人のあれこれを使って正当化していく。でもそれも今回まで、このテストが終わればどちらに転ぼうが、歩む道は決まる筈だから。
後悔しない自信なんてないけど、想いを伝えるという進歩があったとか、また自分に言い訳を考えればそんなに傷付かないと思う。そんなことよりも今大事なのはこのことを彼に伝えること。きっと
だってそんな事今まで何度も何度も繰り返して来た。何度気持ちを真剣に伝えようとしても緊張に、恐怖に負けて適当に誤魔化してしまう。変に意識したら会話すら成り立たなくなる。
だから言わなければいけない状況にする。後悔先に立たず。これをすればきっと数十時間後の私は緊張で悶絶しているだろう。でも今の私には無関係。そう思いながら机の上にある携帯端末で文章を打ち込む。とても短く、単純明快にたった一言二言の文字の羅列を彼のプライベートナンバー宛に送る。これで後戻りできない。勇気を絞り出す。
そんな決意を胸に明るくなっていく空を眺めて寝損ねた事を後悔しながらいつもの起床時間までの少しの時間を全力で仮眠に割り当てた。
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