4-129 終結

 武神との戦いを終え、第10軍団本陣へとエルヴィン達が帰還したのと時を同じくし、グラートバッハ上級大将自ら全軍へ通信がもたらされた。



「皆、良くやってくれた! 時刻1520をもって、共和国軍は撤退を開始した。繰り返す、共和国軍は撤退を開始した。我々の勝利だ‼︎」



 総司令官から告げられた共和国軍撤退と勝利の報。つまり、戦いは終わった。


 要塞を守り切り、勝利した。


 自らは生き残って、勝利した。


 そう、勝ったのだ。


 今度こそ、ヒルデブラント要塞攻防戦は、本当に終結したのだ。


 帝国兵達はジワジワと湧き上がる喜びを肌で感じながら、抑えきれず、沸騰させた。



「「「オオオオオオオオオオオオオオッ‼︎」」」



 全て終わった、勝って終わった、生き残って終わった。


 終わったのだ、多大な犠牲と、流血が終わったのだ。


 帝国兵達は一様に喜び、ある者は軍帽を投げ飛ばし、ある者は戦友と肩を抱き合い、ある者は神に感謝した。


 喜びに溢れた帝国軍、第3、第8、第10、第11軍団、要塞守備隊、独立部隊、総司令部。帝国兵が居る各所で、喜びと歓喜が一帯を支配する。




 喜びに満ちる帝国軍。そんな中でも、エルヴィン達、第11独立遊撃大隊の兵士達は、何十倍もの喜びに溢れていた。


 新兵だらけで構成されながら、武神の相手をし、3分の1にまでうち減らされたにも関わらず、まだ100人近くもの兵士達が生きている。


 死ぬ可能性に支配された戦いで、見事、生き残ってみせたのだ。


 これを喜ばずにはいられないだろう。


 しかも、更に喜ぶべき事があった。


 生き残った部隊員ほぼ全員の、昇進が決まったのである。


 たった1階級上がるだけ、しかし、1つ上がるだけでも貰える給料の差は激しく、貧困故ひんこんゆえに軍に入った兵士達にとっては、大変喜ばしい辞令でだったろう。


 生き残った部隊員達、幸福が訪れた彼等は、この奇跡を作り出した人物を尊敬せずにはいられなかった、感謝せずにはいられなかった。


 自分達を生き残らせてくれた、最後に昇進までさせてくれた、我等が素晴らしき隊長に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る