帝国史 帝国関連史

 ある世界に、ノース大陸と呼ばれる大陸が存在する。


 その大陸では昔、魔王軍と勇者達が激戦を繰り広げ、その苛烈さゆえ、森を焼き、山を砕き、地を赤く染め、大陸の地形を大きく変えたとされている。


 そんな魔王と勇者の戦いから、2000年以上が過ぎた世界。そして、その戦いは、神話として人々に語り継がれていた。


 しかし、ノース大陸の地から、争いの文字が消える事はなかった。




  世暦せいれき1689年


 24の国々による覇権争いが200年近く続き、各国では貴族たちによる政治腐敗も深刻化、人々の顔にはかげりが見え始めていた。


 しかし、大陸南西に位置するゲルト王国にて、ライヒス1世が国王に即位して状況が一変する。


 ゲルト王となったライヒス1世は、まず国の腐敗を一掃すると、獣人族に対する奴隷制度の撤廃、貴族制度の廃止などを行った。


 また、身分や種族関係なく、有能な人材を集めるなどの政策を行い、その人徳さから、国民から絶大な支持を得ていった。


 その後、ライヒス1世は、他国の、悪政で苦しむ人々を憂い、彼等を救うことを目的とし、周辺諸国への侵略を開始。


 戦いの勝利を繰り返し、瞬く間に領土を拡大していった。




 世暦せいれき1711年


 王国は大陸の3分の1を支配するまでに至り、ゲルト王国はゲルマン帝国と名乗るようになる。


 その後も、他国への侵略、併合を繰り返し、世暦1722年には大陸の西半分を支配するまでとなっていた。




 世暦せいれき1738年


 パピエル1世の時代を経て、ライヒス1世の孫であるハインリッヒ1世が皇帝に即位すると、獣人族に対する奴隷制度と貴族制が復活し、貴族には人間族のみを採用した。


 ハインリッヒ1世は祖父が無くした制度を復活させ、国を40年以上も前の状態に戻してしまったのである。




 世暦せいれき1763年


 大陸の北方に位置する島国、ジョンブル王国を中心に、魔工革命まこうかくめいと呼ばれる魔導技術の大革新が起きる。


 ジェームズ ・ヘロンによる魔導機関まどうきかんの開発、アレクサンダー・G・メウィッチによる通信機の開発など、魔導技術が大きく進歩したのである。


 しかし、帝国ではその大革新が遅れていた。


 帝国貴族たちによる技術の独占、それを妨げるための、技術者、魔導士の暗殺が横行したのである。また、他国への侵略を繰り返していた為、各国との国交は断絶状態となっており、他の国の技術が帝国に流入することもなかった。




 世暦せいれき1783年


 大陸第2位の国土を有する隣国、ブルボン王国にて、テミドール・ボナパルトを指導者に、市民たちを中心とした革命が勃発する。

 これにより、ブルボン王国は滅亡。大陸初の共和制国家、ブリュメール共和国が誕生する。




 世暦せいれき1785年


 ブリュメール共和国はゲルマン帝国に対し、宣戦布告を行う。

 この日を持って、130年近く続く、ゲルマン帝国とブリュメール共和国の全面戦争が始まった。




 世暦せいれき1853年


 パピエル3世によるジョンブル王国との通商条約締結、政府を中心とした技術開発により、帝国でも魔導技術の進歩が見られるようになる。

 しかしその時には、技術開発の遅れが災いし、周辺諸国の侵略により、領土の3分の1を失っていた。


 パピエル3世はライヒス1世の時代を再現する為、獣人族に対する奴隷制度を廃止させる。

 そして、貴族制の廃止にも乗り出すが、世暦せいれき1855年、何者かによって暗殺される。




  世暦せいれき1914年


 帝国はブリュメール共和国を中心とする周辺諸国との戦いを続けていた。


 一方で、貴族による政治権力の私物化が進み、政治という文字から腐臭が漂い始めていた。


 腐敗と言う名の病が帝国をむしばみ、国は既に末期の状態にあったのである。

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