第39話 初詣その1

 お正月用の撮影が山程あった。毎回着物を着て「新年あけまして云々」を一生分は言った気がする。わざわざ番組毎に着物を用意してたので着替えるのも一苦労だった。


 大晦日になって、やっとお母さんと家でのんびり出来た。オセチも買ったし、年越しそばも用意したし、お餅も買った。万全の体制でお正月を迎えられるね!他にお正月に必要なものってあったかな?お年玉とか?でも我が家で稼いでるのボクだしなぁ。むしろボクがお母さんに上げる側なのでは?


「そういえばユリちゃんにってお祖父ちゃんからお年玉を預かってるわよ。」

「お祖父ちゃん?」

「そう、お母さんのお父さんね。ユリちゃんがテレビに出るようになってから向こうから連絡が来たのよ。」

「へぇ~仲直りしたの?」

「それは今からね。近い内に会いに行く事になりそうよ。」

「オッケ~!」


 本当は直ぐに行くつもりだったけどお仕事が忙しくて忘れてたよ。向こうから連絡してくれて良かった。来なかったらしばらく忘れてたと思う。


 年越しそばは、あったか天ぷらそば。海老天とか磯辺揚げとかを載せたタヌキそばっていうのかな?まぁ美味しければ名称とかどうでも良いのだ!


 小1の肉体では流石に初日の出まで起きてるのは無理そうなので、せめて日付が変わるまでは起きていたい。友達にラインで「あけおめ!」もしたいし。しかし年末進行での披露が溜まっているのかメッチャ眠い・・・


 うっかり寝そうだから歯磨きをしたり、顔を洗ったりして眠気を覚ます。


10・・・9・・・8・・・


 カウントダウンが始まった。ラインに「あけおめ!」と打ち込んで送信寸前まで持っていく。


3・・・2・・・1・・・


「あけましておめでとうございます!」

「あけましておめでとう!はい、お母さんとお祖父ちゃんからお年玉よ。」

「ありがとうございます!」


 ラインも送信!やり遂げたぜ!!おやすみなさい!!・・・ぐぅ



 おはようございます!初詣に行くよ!


「近くの神社で良いかしら?それとも有名な所にする?」

「近くで良いよ~、のんびりしたいから混んでると嫌だし。」

「じゃあ車に乗って。」


 お母さんの車で近くの神社に行った。15分くらいで着いた。歩きだと少し遠いかな。小さい神社だけどちゃんと神主さんが居て清掃も行き届いている。神社の作法は勉強してなかったな。今度覚えよう。


 人も少なめだったから直ぐに順番が来た。お賽銭は5円でいいのかな?前回と今回含めて神社に行くの初めてだから実はよく分かってないんだよね。


『まったく!みんな小銭ばかり投げおるわ!もっと気前よく札のお金を投げてくれんかのう・・・』


 なんか聞こえた。見上げると、鈴をガラガラ鳴らす綱の根本部分に狐っぽい耳と尻尾の生えた女の子が赤と白の巫女服を来てフワフワ浮いていた。


『ん?ワシが見えとるのか?見えとるようだの。』

『狐のお姉さんは妖怪なの?』


 いつもは読み取り専用にしているテレパシーを送信してみた。どうやら普通は見えない存在みたいなことを言っているので独り言だと思われるのは恥ずいので念の為だ。


『ワシは妖怪じゃないぞ!これでも神様なんじゃ!すごいじゃろう?』


 狐のお姉さんはフフンと胸を張った。膨らみが全く無いけど。


『神様って本当にいたんだ!』

『いるんじゃよ!と言っても土着神じゃがな。』

『どちゃくしん?』

『信仰を得て神としての力を得るタイプの神様の事じゃ。神としては下級じゃな!じゃけど下級でも神じゃからな!不思議な力が使えるのじゃ!』


 

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