第29話 初めてのコラボ
趣味でライブ配信をするようになったけど、ボクが【姫宮ユリ】だと気づくコメントは今の所無い。意外とバレないものだね。まぁ役に成り切っているボクと素のボクじゃ印象が違うか。
チャンネル登録数が伸びてきたせいか、コラボのお誘いが増えてきた。ゲーム上手い系の配信者が腕試しの勝負をして欲しいというのが殆どだ。中には女の子好きの女の子からのお誘いもある。どれも通話しながらやるオンライン上でのコラボなので移動時間とかもないから受けても良いかな、と思いカンで選んだ人に了承のお返事を送っておいた。嫌な予感のする相手にはお断りの定型文を作って送った。
☆
というわけでコラボ、というより対戦のお願い?の第一弾をやる日になった。時間は午後8時、予定時間は30分ほどだけど盛り上がったら1時間まで伸びるとのことだった。30分前には打ち合わせと機材の調整があるので7時半に集合した。
『こんばんは!プロゲーマー目指してる系チューバーのビッグわんこです!今日はよろしくおねがいします!!』
「こんばんは。百合姫です。ビッグわんこさんよろしくです。」
ビッグわんこさんのチェンネルに乗っている情報によると、現在大学生の男性で、大学卒業までにプロゲーマーになるのが目標なんだとか。爽やかな青年なのでファンも沢山いる配信者なようだ。一応、彼の動画やアーカイブをチェックした感じだとプロゲーマーと遜色のない実力だった。
『とりあえず、お互いに音の調整をして、配信が始まってからも音の調整出来るんで大丈夫ですよ!』
「OKです。こっちはちゃんと聞こえます、そちらは大丈夫ですか?」
『ちょっとまってね・・・よし!OK!今日は告知に出したように【アレックス】でチームを組んでプレイするよ。勝負内容はキル数勝負になるね。』
「あのゲームはスリーマンセルですよね?あと一人はどうなります?」
『あぁ、ウチのチャンネルの相棒がいるのは知ってるかな?そいつにお願いしてるんだよ。』
ビッグわんこさんには時々登場する謎の相棒がいる。無口だけど時折ボソッとしゃべる女の子の声には結構な数のファンが付いている。ビッグわんこさんは【相棒】としか呼ばないけど、ファンの間ではビッグわんこさんの対義語?みたいな感じで【ミニにゃんこ】と呼ばれている。ファンの推測ではビッグわんこさんの妹説が有力だった。ちなみに実力はプロ並。
「ミニにゃんこさんですね。」
『あ~・・・そう呼ばれてるね。まぁ本人もその名前が気に入ってるみたいだから良いんだけど。』
『そう。』
「あ、こんばんはニミにゃんこさん!」
『こんばんは、百合姫さん。』
『珍しいな。お前が通話に声出すなんて。いつも通話は無言で聞くだけなのに。』
『義兄さんみたいにお喋り上手じゃないもの。』
「やっぱり妹さんなんだ!」
『そう。義理の妹だけど。』
『おいおい!・・・百合姫さん。この事は内密に。』
「大丈夫ですよ。他に漏らしたりしません。」
『私。百合姫さんのプレイ見たの。凄い。貴女にしか見えない世界がある気がする。私もその世界が見たい。』
「ボクにしか見えない世界?よくわからないけど、友達になりたいって事で良いのかな?」
『そう。』
「わかった。よろしくね!」
『こんなに喋るの始めてみたんだけど・・・』
身内の自分より、出会ってばかりの百合姫に義妹が饒舌(当社比)になった事にちょっとショックを受けてその後のコラボの試合がボロボロになるビッグわんこであった。
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