第7話 ドレスのデザインの提案


 準備を終えた女性たちに追い立てられるように、仕切りの向こうへ行く。

 採寸をされ、デザインの話に移る。

 すると、待ってました!とばかりに、両親が参加してくる。

 あーでもない、こーでもないと話し合いながらデザインを進めていっている大人たち。

 そのデザイン画を、大人たちの間からひょっこり覗いて見て……顔が引き攣るのが分かった。


 そこには、頭に大きなリボンを付け、胸元と腰、裾に至るまで、これでもか!とこれまたリボンを付けられているドレス。

 しかも、色はピンク。

 駄目だ。

 これは駄目だ。

 私の顔は、小ぶりなパーツの中で、目だけは大きい猫目。

 ……正直に言おう、ちょっとつり目がちでキツイ印象を与えるのだ。

 美少女には変わりないのだが、このドレスが似合う顔には思えない。

 ここは、口出しをさせていただこう。


「ねぇ、お父様、お母様」


「なんだい?可愛い天使」


「何かしら? 」


 二人がデザイン画から目を離し、振り向いてくれる。


「私ね、こういうドレスが着てみたいの」


 そして、ビオレッタさんからペンと紙を受け取り、サラサラと絵を描いていく。


 描いたデザインは、胸元と袖の部分はバラの刺繍を入れたレースで、右側の腰の部分にはバラを象ったリボン。

 腰の部分から下は、シースルーの生地を外側に付け加え、中の生地を少し短くして、裾の部分から少し足が見えるようにしたデザインだ。

 色は、ゴマすりをかねて、父の瞳の色と同じ、落ち着いた緑にしてみた。


 満足のいくデザインに仕上がり、ドヤっとばかりに大人たちを見上げると、ギラギラとした瞳が。

 特に、ビオレッタさんの瞳が捕食者のそれだ。


「こ、これは……!何と斬新なデザインなんでしょう!! 」


 どうやら、私の提案はビオレッタさんのデザイナー魂に火を付けたらしい。


「そうだね。確かにさっきのデザインより、アリーの魅力が引き出せるかもしれない…。そして、私の瞳の色と言うのがかなり良い」


 私の意図を察して満足気な父。


「でも、もう少し華やかさが欲しいわね…」


 母の言葉に、裾の部分にパールを付けることを提案してみる。

 揺れる裾がキラキラすると、華やかな印象になるだろうと。

 提案が受け入れられた事に満足した私は、あとはプロと両親に任せようと、ソファに座り、一服する。

 先程からソファに座ったきりのユズに目を向けると。


「お腹からチャポチャポと音がしそうです」


 どんだけ紅茶飲んだのよ…。

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