第5話「余裕でクエスト達成!」
「──よっし! 300本達成!」
採取時間を確かめながら、クラウスはどんどん毒消し草を集めていった。
数本ずつ採取量を増やしていくことで小まめに群生地を移動し、思わぬ場所に自動採取後の移動をしないようにするためだ。
幸いにも、毒の沼地に踏み入ることなく、際にはかなりの量が自生していたので、すでに背嚢の中は毒消し草で一杯だった。
「こりゃ、大量だな! まだ時間はあるし──行けるとこまで採取してしまおう」
採取の達成感はないものの、スキル使用後に手元に大量にある毒消し草を見るのは実に気分がよかった。
採取量を少しずつ増やすことで、群生地を一網打尽にし、態勢を整えて次に群生地を自動採取する。
一つの群生地に大体10~30本ほど生えているので、効率も今までの目視による採取とは段違いだった。
しかも、疲労度も少なく。
信じられないことだが、一度もアンチポイズンを使っていない。
どうも、自動資源採取時のクラウスは、本人の無意識化にすさまじく効率的かつ安全に動いているようだった。
「……いっそ、狩りつくしても毒を受けない様に行動できるのかもしれないな」
ここまでくるとどうしても欲が出てしまう。
巡回馬車が近隣を通過するまでにまだ時間もあるし、ここでクラウスはちょっとした欲を出してしまった。
これまでは思わず場所に移動してしまわない様に小まめな採取に終始していたのだが、それでは10~30本と言った数しか採取できない。
それでも、段違いに効率的なのだが、これは検証も含めているということを思い出し、つい冒険に出てしまったのだ。
「…………ちょっと、数を増やしてみようかな?」
そう考えたクラウスは30本程度で抑えていた採取本数を大幅に増やしてみた。
ブゥン……。
※ ※
《採取資源:毒消し草×99》
⇒採取にかかる時間「00:30:39」
※ ※
「お────……99本採取しても30分程か、それくらいなら大した移動距離にならないだろな」
自動資源採取で少し怖いのが、自動採取に終わった場所で意識が元に戻ることだろうか。
スキル使用後に小移動して正気に戻るのはちょっとしたスリルがある。
「ま、今のところ安全だし────よし!」
スキル発動!
フッと、
これまでのように『自動資源採取』を使ったとき同様に意識が飛ぶ────…………そして、気付いたときには、
ズシリとした重みを両手に感じる。
「やった!!──大量だぜ!」
持ちきれない量の「毒消し草」が両の手にあり、それを溢れた「毒消し草」は、足元に積まれていた。
(なるほど。持ちきれない分は近くに置かれている、と──────あれ?)
ふと、正気になり周囲を見回したクラウスはサーっと血の気が退く。
「ま、マズイ……!」
ふと見まわした周囲は最後に採取した位置から随分と離れており、よりにもよって……。
「ぬ、沼地のど真ん中?!」
途端に、プシュー! と濁った水が瘴気を噴き出し、肺を汚染する。
ぐ……。
「し、しまった!」
胸が焼けつくような激痛に、毒に侵されたことを理解する。
とっくにあらかじめ飲んだアンチポイズンの予防効果は切れている。
「──か、は……ポーション入れ……」
しびれる腕を懸命に動かし、腰のポーション入れからアンチポイズンを取り出すと、口を切って飲み干す。
舌までしびれ始めていたので飲み下すのに苦労したが、即効性のアンチポイズンが回り始め濁り始めた視界も回復を始めた。
「は、っは……はー…………死ぬかと思った」
口に中に溜まった苦い水分を吐き出し、裾で拭う。
キツイ思いを下が教訓も得た。
「……よ、欲張っちゃだめだな──」
ふぅ、危ない危ない。
それでも、採取した毒消し草はちゃんと背嚢に収め、沼地から脱出しようとする。
だが、事はそう簡単には運ばなかった。
これまで調子に乗って採取してきたツケが来たのだろうか?
「ち……! そりゃ、フィールドだもんな」
ゲロゲロ
ゲロゲーロ!!
「──モンスターくらいいるよな!!」
ゲコゲコと喉を鳴らしながら沼地を泳いでやってきたのは、毒々しい青色をしたポイズンフロッガー──……沼地の毒大ガエルだった。
時に冒険者を丸のみにするとも言われる巨大カエルが二匹、クラウスに気付いてスイスイとやってくる。
こいつらの動きはさほど早くはないが、舌だけは超高速で動くにで危険だ。
そして何より────。
ゲロォ!
「ち! 飛び道具は厄介だな!」
ビュビュ! と吐きかけられす黄色の液体!
そいつが地面に降りかかるとシュウシュウと音を立てて植物を溶かす。
「──毒入りの強散弾……食らったら大やけどするぞ!」
そういうが早いかクラウスはショートソードを引き抜き、一気に肉薄する。
足場は悪いが、ポイズンフロッガーもクラウスを食べようと接近してきたため一挙動の距離だ!
「てぃ!!」
沼地に落ちるのを覚悟しながら、クラウスは一匹目に剣を叩きつける。
「ゲコォォオオ?!」
ズバァ……! と奴の大腹を切り裂き、絶命させる。
その瞬間には生臭い体液が溢れて剣と皮鎧に掛かる。
「く……!」
わずかに肌を刺激するくらいには掛かってしまったようだ。
強散弾を生み出す体液も十分に危険なのだ。
ゲコゲコォォ!
相方を殺された残る一匹が怒り狂ってとびかかってくる。
それを好機と見たクラウスは体液でドロドロになるのも厭わず、剣を突き上げる。
向こうから飛び込んでくるのだ、好都合というもの────……。
「な?! 剣が────……」
突き立てようとしたときに妙な感触を覚えて目を向ければ、愛用のショートソードが半ばからぽきりと折れてしまった。
どうやら、さっきポイズンフロッガーを切り裂いたときに、酸でやられて
「くそ……このぉぉぉおお!」
それでも折れ残った剣で、ポイズンフロッガーに果敢に立ち向かうクラウス。
幸いにもポイズンフロッガーは特殊攻撃が厄介だが、個体としてはそこまで強い魔物ではない。
そして、懐に入ってしまえば下級冒険者でも十分に立ち向かえるほどだ。
ズブズブと奴の内臓を掻きまわす感触を感じながら強烈な悪臭とも戦うクラウス。
ついに、
「ゲゴォ……」
くたぁ、と力なく沼に浮かぶポイズンフロッガーを見て、何とか勝利した。
「あーあ……。大事に使ってた剣なのに」
ポイズンフロッガーの酸性の体液でさらに解けていくショートソード。
もう二度と使い物にならないだろう。
「くそ! 二度と来るか、こんなとこ……!」
全身が泥まみれになったクラウスを悪態をついて、ポイズンフロッガーに喧嘩キックをくれてやった。
だが幸運にも、ポイズンフロッガーの二体ともが魔石を持っており、多少の経験値を得ることができたのは大きい。
※ ※ ※
クラウス・ノルドールの
※ ※ ※
初めて倒した魔物ということもあり、魔石とモンスターからの経験値で、なんと二日連続のレベルアップだ。
やはり、冒険者たるもの──冒険をしないと成長できないのかもしれない。
「お、おい! 何でそんなにドロドロなんだ?! そ、そのままじゃ乗せねーぞ!」
「す、すみません……」
だが、かわりに迎えに来た乗合馬車の御者に凄い匂いだなと嫌な顔をさて、一緒に乗り込んだ冒険者からは総すかんを食らってしまった。
とほほ……。
※ 本日の成果。 ※
~ドロップ品(討伐証明)~
ポイズンフロッガーの舌×2
~ドロップ品(素材)~
ポイズンフロッガーの毒腺×2
~ドロップ品(魔石)~
魔石(小)×2⇒使用済み
~採取品(草木類)~
毒消し草×545(自動採取)
アーロエ×3
キリモリ草×4
※ ※ ※
レベル:13
名 前:クラウス・ノルドール
スキル:【
Lv1⇒自動帰還
Lv2⇒自動移動
Lv3⇒自動資源採取
Lv4⇒????
● クラウスの能力値
体 力: 150(UP!)
筋 力: 87(UP!)
防御力: 63(UP!)
魔 力: 40(UP!)
敏 捷: 89(UP!)
抵抗力: 24(UP!)
残ステータスポイント「+5」(UP!)
スロット1:剣技Lv2
スロット2:気配探知Lv2(UP!)
スロット3:下級魔法Lv1
スロット4:自動帰還
スロット5:自動移動
スロット6:自動資源採取
スロット7:な し
● 称号「なし」
〇臨時称号「悪臭漂う者」
⇒体を洗うまで、周囲の人の好感度を自動的に下げる
※ ※ ※
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます