第41話 吸血鬼○○○の流浪18
森。昼間。そばに洞窟。周囲に十数人の人間。コトバは聞いたこともないやつでさっぱり判らん。みな毛皮を継ぎ合わせた服。子供が集まってどこかに行く。ついて行く視界の主たる自分。池に着く。煮炊き用の水くみか。水面に自分が写る。彼だ。周囲の同年代子供と較べても一段抜けて美形だ。今より少し幼いか? 他の子供たちと笑いあっている。あんな笑顔私見たこと無いんだけど? ずりーぞ。 昼間なのに出歩いてるってことはこれは人間だったころか? そもそも前は人間だったのか…
さっきの洞窟に戻る。この洞窟が一家の家らしい。大人たちが狩りから戻ってきた。あんな木と石の槍と棍棒だけでよくやるな……獲物は知らない動物だが四つ足で草食のやつだ。この場で捌いてすぐ焼き始める。まだ日は高いのにもう夕食?
全員が食べ終わる頃に空が赤くなりはじめる。子供は洞窟の奥に移動。もう寝るようだ。大人たちはたき火を見つつ入り口側で固まっている。
寝た。
深夜。
つんざく怒号と悲鳴で起きる。入り口そばで大人が何人か倒れている。残りの大人がたいまつ片手に駆け寄る。到着寸前、横たわる大人から何か立ち昇る。人影? ソレが駆け寄る方の大人に触れたかと思うとその大人も倒れた。残った大人たちも次々餌食となり斃されていく。声を押し殺して眺めるままの子供たち。これで叫んだりしないのは野生か親の教育か。さっきの人影が近づいてくる。子供だ。女。銀髪金眼。長い髪が月光を受けて輝き、目は猫のように暗がりで浮かび上がる。その子がこっち(自分)を一瞥し通り過ぎる…
かに見えて止まる。またこっちを見る。しばし固まったのちこっちに来る。目の前に立たれる。顎を掴まれる。顔を触られる。自分は恐怖で震えている。
突然首筋に激痛。吸血か? いや…逆だ。蛇の毒かのように、牙から血を流し込まれている。全身に侵入してくるほんのり冷たい血。身体の内側から灼けるような熱さと痛み。耐えられず倒れ込み、のたうち回る自分。
しばらくして起き上がる。なぜか酷い空腹。喉の渇き。そうだ、夕飯の肉の残りがまだあるじゃないか…………
見るとさっきの子がまだ一族を襲ってる。洞窟奥に追い込まれた子供たちが次々食われていく。
いや違う。襲っているのは、自分だ。
兄も、姉も、弟も、妹も、従兄弟も、従姉妹も、
俺が襲った。
俺が食った。
俺が飲んだ。
憧れの兄貴分も、好きだった女子も、俺が殺した。
銀髪金眼の女子はいつのまにか消えていた。
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