第36話 吸血鬼○○○の流浪13

 消灯!!


ショタ「隣いいか?」


 来たッ!


女  「どェ、どうぞッ!!」


 寝床に入ってきた。隣に並んでくる。長い沈黙。


ショタ「触ってもいいか?」


 やっぱりヤる気だこいつ!!


女  「ッッどうぞ…」


 手を掴まれた!手を掴まれている!知っての通りのすごい力だ。ぴくりとも動かん。あっっ! 腕に! 腕にしがみつかれている!! 始まる! ヤられる!! 




  ●




 …………次は?

 

女  「……旦那様? 」


 少年の方を見やると、彼は私の腕にしがみついたまま苦悶の顔で震えていた。

 急に恥ずかしくなってきた。一人であんなに盛り上がってなにをやっているのか。これまでずっと良くしてもらってきた自分の主を性欲鬼畜みたいに扱いやがって。なに考えてんだ。

 今の彼はというと、目はびっちりつむって、恐怖だか苦悶だか、そんな感じの険しい顔で震えている。

 豪族や王だって召使いや奴隷ぐらい使う。それに比べてウチの旦那様は…実際一人でやれてるからなのだが、一度も他人を頼りも使いもしないあの旦那様が今は私に縋り付いている。何のために買ったのか、奴隷を買っておいて労働も性奴もロクにやらせないあの旦那様が、誰もが要らないと言った丁稚の幼児にも劣るこの私を今は必要としているのだ。その事実に思ったより喜んでいる自分がいた。

 人間の大人でも岩でも軽々持ち上げ(体験済み)、殴り拳と爪だけで人間を嬲り殺せるあの旦那様が。

 彼からしたら羽虫や小動物相当だろうに、そのか弱い私に頼っている。

 急に可愛く思えてきた。私は空いてるもう一方の腕も使って旦那様を抱きしめた。

 すこしだけ旦那様の顔が安らいだ気がした。



  ●



 朝。

 私は目を覚ました。目の前には旦那様の寝顔。腕の中で眠る旦那様は震えも収まって安らいで見える。思わず顔がにやける。こうして至近からまじまじ見るとやっぱり美形だ。最初の頃は感情を見せない無表情で冷たい印象だったのに、今ではその中に可愛げもあるように思える。何気なく頭をなでようとすると目が合った。旦那様が起きたのだ。


 少年は一瞬で壁まで飛び退くと状況を把握する。昨夜から今までの事を思い出すと


ショタ「ゆうべの事は忘れろ」


女  「ゆうべってどれですか?」


ショタ「  いいから  」

ショタ「  忘れろ  」


 その日は一度も口をきいてくれませんでした。

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