第34話 吸血鬼○○○の流浪11

 また次の日。

旦那様は鏡に続いて今度は馬を盗んできました。


ショタ「乗れ」


 ええぇ…馬は荷曳き用であって乗るものじゃないですよ…そう思ってマゴついていると


ショタ「東の方の奴らは男も女も馬を乗り回すし、背中に立って弓射ったりするぞ。お前も覚えろ」


 そんな…


ショタ「やれ」


  ●


 最悪。馬の背中は直接座るとめちゃくちゃお尻が痛いし、股は割れそうだし、この紐(手綱)は全然言うこと聞かないし、揺れるし…


ショタ「まぁ…毎日乗って馬と仲良くなればそのうち乗れるようになる。やっておけ」


 そんなぁ…


  ●


 また別の日。

今度は旦那様は弓具一式を盗んできました。


ショタ「弓を覚えろ。毎日引いて腕も鍛えろ」


そんな……


  ●


 また別の日。

今度は(略

  

  ●



  ●



  ●



  ●



  ●


 起床。まだ夜明け前とすら言えない真っ暗だけど起きる。動物たちは朝がめちゃめちゃ早くてエサが遅れると怒るのだ。最近の一日は朝起きたら馬・ヤギ・牛・羊の草と水換え。自分の食事。弓引きの筋トレ10×10セット。馬の散歩。ミニ畑(家庭菜園的な)の草取り。夏はすぐ水が悪くなるので毎日1日分だけ水くみ。ほか雑事


………………なんか、仕事多くない?旦那様はここ8日帰っていない。さんざんアレやれコレやれ麦の育て方覚えろソイツとコイツも飼えと山ほど命令して出て行った。


ショタ「一応戻る気はあるが、もし戻らなければそのまま一人で生きろ」


 だそうだ。いよいよもってこの生活も終わりだ……ほぼ何もしなくてもごはんが出てくる楽園だったのになあ。顔(表情)は恐いけど顔(造形)は良いあの美少年。いつもあの美横顔をチラ見するだけで元気になったものだ。表情はいつも同じなので機嫌はさっぱり分からなかったけど、怒鳴られたり殴られたり使われたりはしてないし、奴隷主としてはかなり優良物件だったと思う。他で買われたこと無いから本当のランクはわからないけど。

 動物用の草と水を足し、馬の毛繕いをしながらまた考える。このままあの人が帰ってこなかったらどうする私? 言われた通り一人で生きていく? そう言われてもなあ……この家だってどう見ても空き家に勝手に住み着いてるだけだし。暴力担当のあの旦那様が居ないとなれば誰かが取り返しに来るか、それとも別の略奪者に奪われるか。そもそも女の独り身。私ごと持って行かれるのではないか? 娼館でも一回も売れなかったしそれは無い? どうなんだろう。


女  「…旦那様はやく戻ってくれないかな」


ショタ「戻ったぞ」


 ファッ?!!今の聞かれたか?!


女  「おっ、お帰りなさいませ旦那様!」


 私は誤魔化すかのように背筋を伸ばしてお迎えする。いつもの鉄壁の無表情が崩れて今日の旦那様はわかりやすくお疲れ顔だった。


ショタ「僕は寝る。お前はそのまま残りの仕事やっとけ」


 そう言うと旦那様はそそくさと家に引っ込んでしまった。

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