第29話 吸血鬼○○○の流浪6
さらに数日が経った。旦那様は昼間は家から一切出ず、ずっと暗がりからこっちを見ている。毎日の仕事はどれも今思いついたような雑用ばかりで、労働という感じがまるで無い。それなのにごはんは毎日たっぷり出た。旦那様のお仕事は何をやってるのかさっぱりわからない。きっと相当なヤバいやつなのだろう。こういうのは詮索しないに限る。下手に首を突っ込んでまた捨てられても困るし。旦那様は毎夜日が落ちると外出し、どんなに遅いときでも日の出前には必ず戻る。お金やわたし用の食料をたずさえて。旦那様は家では一切食べない。曰わく「僕は夜、外で食ってるからいいんだよ」とのこと。昼間はというと家の隅で寝っ転がってるか私の仕事ぶりを見張ってるかのどっちか。
女 「そんなにサボらないかどうかを見張られましても…そもそもする仕事が全然無いのですけど…」
ショタ「いまやってるのは?」
女 「もう終わりますし、これが終わったらもう自分の食事の支度まで暇です」
ショタ「水くみは?」
女 「甕いっぱいです」
ショタ「…縫い物は?」
女 「全部繕いました」
ショタ「道具の手入れとか…」
女 「もともとそんなに溜まる仕事じゃないですよ」
ショタ「じゃあ……なにをやらせればいい?」
こっち(奴隷)に訊かれても……
ショタ「まあ…する事無くなったときはそのへんで遊んでろ」
そうですか…
●
その日の夕方。旦那様が近寄ってきた。
ショタ「ついて来い」
街まで連れてこられた。並んで隣を歩かされる。この街は割と大きい方なので日が暮れてもまだ人出と活気がある。通りを歩くと露天商や屋台の食べ物売りなんかが両側に並んでいる。呼び込みの声がして、見たこと無い知らない果物が目に入る。結構高いな。
ショタ「食うのか?」
女 「えっ? 」
ショタ「いや…アレ食いたいのか?」
女 「もうしわけありません!差し出がましい真似を」
慌てて姿勢を正して深く頭を下げる。
ショタ「お前のエサ代の一部だろ。どうって事無ぇよ。それで、食うのか食わんのか?」
女 「…………いただきます」
果物を剥きながら喋る売り手の話によると、コレは東の彼方から来たという。半分剥いたところでそのまま渡される。囓ると思ったよりやわい。実の中心には種が結構ある。
ショタ「美味いか?」
女 「はい、美味しいです。ありがとうございます」
ショタ「…お前もだいぶ血色良くなってきたな。最初はもっとガリガリで土気色だったのに」
旦那様が私をぢっと見ながら言う
女 「お、おかげさまで…良くしてもらってます…?」
ショタ「……昼間ヒマなら織物でもやるか?覚えれば俺が居なくても食ってけるぞ」
そんな……居なくなることがあるのか!
女 「やっぱりクビですか! 私が能無しだから…」
ショタ「落ち着けよ。今のところお前を捨てる気は無いが、オ…僕だって突然ポックリ逝くかもしれん。そうなったら今のお前の器量じゃ次の奉公先なんぞ決まらず、また道ばたで野垂れ死だろ。一人で稼ぐ方法を覚えておけ」
女 「でもそういう手先仕事は私にはちょっと…」
ショタ「フムン」
そのまま黙ってならんで歩く。しばらくして
ショタ「お前、字は読めるか?」
女 「えっ? いえ、読めません…」
ショタ「ならオ…僕が教えてやる。代筆や計算を覚えればどこでも食ってけるぞ」
なんかそういうことになった。日中ヒマができたら字の練習。話し終わると、その後も一緒に食べ歩く。
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