第8話  シヴィライゼーション ターンスエズの長城

ピラミッドやアブシンベルの栄光あるエジプト石造建築も今は昔。この職人村は王家からの大規模事業主体だったためその王家の度重なるギャラ未払いに耐えかね一人また一人と職人が辞めていきウチの組も残ったのは俺だけとなった。他の組も同様だ。この村は神殿向けの巨石を扱える数少ない村で、かつては昼寝もできない騒音を轟かせたこの職人村もいまでは小石を切るかすかなさえずりになった。この俺も今では木工や石レンガ作りで日銭を稼ぐ身だ。かつては俺もいつかは大神殿をと夢見たものだが、夢に終わった。政変・クーデターの続く現状じゃ未払いギャラの来るあては無い。前体制の事など知らんとまず間違いなく踏み倒されるだろう。こんな状態で次の仕事と言われても信用できるわけがねえ。そういうわけでこの国じゃもうでかい仕事は諦めてるわけだ。これからどうすっかなあ・・・。国を出るのもいいかもしれねえなあ。北や西では石造の需要が出始めてると聞くし・・・。そのとき。


サアム「たのもう!!たのもう!!村の者は全員中央に集まるべし!!!!!」


全員と言っても今じゃ10人ちょいしか居ないが集まりに行った。


サアム「私は現王家の使いで来たサアムウトと申す!前体制、前々体制のこれまで不払い、先代に代わって現王家がここに詫びよう!とりあえず当座の麦(この時代のギャラとは現物支給である)を持ってきた!記録がある分は残りも必ず払おう!どうか今日の所はこれに免じて新しい仕事を受けてもらえんだろうか?!!!」


隣の組「仕事って何やんだよッ?」

お隣さんの同業者が突っ込む


サアム「それはピラミッドより大きく!カルナックより広く!ナイルの幅よりも長い!かつてない高難度かつ長期事業となるだろう!かつてない大建築で永遠にその名を刻む者はおらぬか!誰もなし得ない高みに挑む者はおらぬか!」


俺は・・・・・・・・・俺は・・・!!!!!!!!!!!!!


職人 「サアアアアムウウトッ!!!俺は!俺はやるぞ!!!」


サアム「そなた!名は?」


プタハ「俺はプタハマイ!歴史あるプタハ組組長プタハマイ!!」

     

     ●


サアム「というわけでシリア・アラビア半島は捨てます。たしかにここは旨い土地ですが旨すぎるがゆえに誰もが狙う激戦地なんですね、そして他国にとってはただの地方資源地ですがウチは違います。ここは地中海と紅海に挟まれた陸の回廊でありここを取られるとエジプト首都まで一直線でガラ空きです。北と東を海で守られたエジプトを狙う奴は必ずここを通る。だからここに要塞線なんですよ」


所詮はミリオタの浅知恵だがプレイヤーは俺だ。

ミナ女王はポカンと聞いていた


ミナ 「お前はなんでも知ってるな」


サアム「所詮は高卒の妄言ですよ」


ミナ 「・・・・?・・・・・・??」


     ●


後日。

プタハ「サアムウトさん何やってんすか?」


サアム「いやね・・・ここに穴開けたいんだけどさ・・・」


石の板である


プタハ「・・・・・・これ使った方がいいスよ」

サアム「なにこれ」

プタハ「ココこうしてそっちをこう・・・」


ぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞりぞり


サアム「・・・・・・・・・・・・・・・ハッ?!」


これは!!アレ(注1)だ!!!!!!

えええええええええマジで???!!!!?!やっっっっっっっべえええエジプト人天才すぎんだろマジ!!!アレこんなんなってんの?!!すっっっげえええぇぇッ!!!!コレ現代にお見せできないの残念すぎるんだけど!

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