星に願いを、
鵲
第一夜
「おぉ」
お菓子の食べカスみたいにぱらぱらとまばらに星が輝く空に、銀糸の様に綺麗な一筋の線が走った。
ほぅっと吐いた息が白く霞み、夜空に溶ける。
今仕方あらわれた光も、息を吐く間に消えてしまった。
「久しぶりに見たなぁ」
それは星座には詳しくなくっても、誰でも知っている星。
「流れ星だ」
そして同時に、それに付随する『おまじない』も、きっと知らない人なんていないことだろう。
流れ星が消えるまでに願い事を3回唱えればその願いが叶う。
きっと誰もが一度は試した経験があるであろう。
おそらく最もポピュラーで、
おそらく最も救われない『おまじない』
まぁ実証したいだけであれば、短い文句にするなり、簡単な願いにするなりあるけれど。
実際には流れ星が見えるのなんてほんの一瞬だ。
突発的なタイミングに、瞬時に反応して3回も願い事を唱えるなんていうのはずいぶんと難易度の高い話である。
だからこそ、願いが成就するなんて謂れが生まれるのだろうけど。
とはいえ、仮にそれが達成されたところで現実には何も変化なんて起きやしない。
そんなことは小学生ですら知っている。
サンタクロースは存在しない。
夢は努力しなければ叶わない。
それでも人は、空を見上げる。
叶わない事を知りながら、燃え尽きる星に祈りを託す。
私は思う。
それはきっと『理由』が欲しいからだ。
努力をしなければ夢が叶わないというのは当たり前のことだけど、努力したからといって夢が叶うとは限らない。
勉強だって、スポーツだって、恋愛だって。
同じだけの努力を重ねても、ゴールが一つなら結局願いが叶うのはたったの1人だけだ。
時には運が作用してしまう事もあるかもしれない。
時間を捧げ、心を捧げ、祈りを捧げ、
それでも。
どうしても。
この世界は平等で、不平等だ。
だからきっと人々は、行き場を失くした感情を、遥か頭上を流れ行く星々に託す。
届かないことを知りながら。
届かなかったと笑う為に。
星は虚構の過去を乗せ、燻る熱で焼き尽くされる。
これはきっと、その為の儀式だ。
努力を肯定する為に。
自分を肯定する為に。
昨日も、今日も、明日もその先も。
私は全力を尽くそう。
だけど私は。
だから私は、今日も星に願う。
星に願いを、 鵲 @hkasasagi
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