第3話:対決
「仲徳の申す通りじゃ、朕は一族や家臣に誑かされたりはせん。
家臣に分際で朕に対する献策を遮るなど許される事ではない。
公台は黙って控えておれ。
仲徳、お前は公台と子高に論戦をさせろと言うのだな」
「はい、皇帝陛下。
ただその前に姚袁微の父親となっている姚袁公路に話を聞かなければなりません。
姜謝公台殿の申す事も完全に間違いではありません。
皇室を腐敗させ国を滅ぼさないために、高位高官の娘を皇帝陛下の妻妾にしない。
それはとても大切な事でございます。
事情のいかんを問わず厳罰に処さなければいけません。
ただ理由を聞き罪を決めるのは皇帝陛下だけの権限でございます。
家臣共の政争の道具にさせてよいモノではありません。
まずは論戦の前に真実を確かめてください」
仲徳殿下は本当に公正無私な方なのでしょうね。
皇族として皇室の繁栄を何より一番大切に考えておられるのでしょう。
昨今の次期皇帝を狙う皇子達に派閥争いに一石を投じたいのでしょう。
いえ、皇帝陛下の厭政をやんわりと諫言しているようにも感じます。
もしかしたら皇帝陛下もその事に気がついておられるのかもしれません。
「そうか、それでは姚袁公路を呼びださねばならぬな。
それとも仲徳が既に呼びだしているのか」
やはり皇帝陛下も気がついておられるようです。
文武百官が緊張しているのがよくわかります。
太和殿が私を詰問しようとしていた時以上に殺気に満ちています。
姜謝公台様ですら何も言えなくなっています。
ここで間違った言葉を一つでも口にしたら、皇帝陛下の逆鱗に触れてしまう。
誰もがその事に気がついているのです。
「いえ、私はそのような事はしていません。
しかし姜謝公台殿が姚袁公路を呼びだしていました。
それどころか母と呼ばれている女や弟妹まで強制的に控えさせております。
姚袁微を問い詰めるのに家族を人質に取る。
これで公平な証言が得られるでしょうか」
「まことか、姜謝宮」
「恐れながら全ては皇帝陛下の御為でございます。
建国皇帝陛下の決められた根本法を護るためでございます」
皇帝陛下が姜謝公台様の諱を呼び捨てにされました。
本心から怒っておられるのが手に取るように分かります。
地獄の閻魔大王の裁判の場に引き出されているような緊張感があります。
自分が皇帝陛下の逆鱗に触れてしまったと分かっているのに、それでも震える事無く言い訳できる姜謝公台様は凄いです。
でも、この状況を作りだした仲徳殿下の方が怖いです。
わずか九歳でこんな事ができるとは信じられません。
仲徳殿下は誰の味方なのでしょうか。
皇室を護ろうとしているのは分かります。
私の事を断罪する気はないようですが、姚孫子高様を断罪する気なら、私も一緒に罪を問われることになります。
姜謝公台様を断罪する気なら、私は罪に問われないでしょう。
でもこれを好機に姚孫子高様と姜謝公台様を一緒に取り除く心算なら、私も巻き込まれてしまいます。
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