華国後宮物語
克全
第1話:華朝第一皇子後宮・毓慶宮
第一皇孫で私の婚約者である伯徳殿下が真っ赤な顔をしてこちらに来ます。
明らかに私を目指しています。
何か怒らせるような事をしたか考えてみますが、全く思い当たりません。
直情的で多少怒りっぽい所はありますが基本善人な方です。
何か勘違いされているか、佞臣に嘘を吹き込まれたのでしょう。
華朝の後宮には宦官がいません。
建国皇帝陛下が歴代皇朝が倒れた元凶である宦官制度を廃したからです。
その代わり華朝後宮には女の陰湿な虐めや誹謗中傷が渦巻いています。
常に気を張っていないと、どこで足をすくわれるか分かりません。
最悪毒殺される可能性すらあるのです。
それでも宦官制度があった頃よりはましだというのです。
宦官の弊害がどれほど激しかったかが分かります。
「微微、よくも今日まで私を騙してくれていたな。
いや、私だけではない、皇室を騙そうとしたのだ。
身分を偽って後宮に入るなど族滅の罪だと分かっているのか」
伯徳殿下が何を言っているのか全く分かりません。
私が身分を偽って後宮に入るなどありえない事です。
外戚による弊害も宦官の弊害と同じように亡国の原因になりました。
だから身分ある者や権力のある者の娘は後宮に入れません。
同時に前王朝の失敗を鑑み、容姿だけの馬鹿も後宮入りできません。
健康である程度の知識がある娘だけが後宮入りできるのです。
だから華朝の後宮に入るには色々な規定があるのです。
六品以下の家の女である事。
乗馬と弓射ができる事。
最低でも科挙の童試を合格している事。
妃や嬪になりたいのなら郷試を合格している必要があるでしょう。
まあ、単に女官として後宮入りするなら童試は関係ありません。
武芸や歌舞音曲などの一芸に秀でていればいいのです。
まあ、私の様に武芸と容姿に秀でている場合は、童試合格だけで第一皇孫の妃候補とされ、婚約者に選ばれるという有難迷惑を被ることもあります。
今回もその一つなのでしょう。
誰かが妃候補の座を狙って伯徳殿下を誑かしているのでしょう。
「兄上、微微に怒っても仕方ないではありませんか。
もし本当に身分を偽っているとしたら、それは親や一族がやらせた事です。
まだ幼い微微が自らやった事ではありません。
ここは御父上から皇帝陛下に話していただいて、文武百官の前で公平に審議してもらいましょう。
ここで兄上が騒がれて、もしこれが佞臣の奸計だったら、兄上の評判も悪くなってしまいますよ」
これは本当に何か大変な事が起きているのかもしれません。
英邁の誉れ高い第二皇孫の仲徳殿下が、兄の伯徳殿下を諫められています。
それもただ諫められているだけでなく、皇帝陛下に奏上して文武百官の前で事に真偽を明らかにしようと提案されています。
これは本当に族滅させられるような陰謀に巻き込まれているのでしょうか。
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