約140字創作百合ログ

篝遊離

Twiiterでほぼ毎日投稿、当サイトでの更新は不定期・1

・佑と先生


「ゆうちゃんは煙草なんか吸っちゃダメだよ」

そう言って先生は煙を吐いた。反面教師そのものだ。ダメなことほどやりたくなるのが人のサガで、中学生の佑は大人になったらこの人と同じのを吸おうと既に決めていた。

「煙草って美味しい?」

先生は首を振る。笑っているから多分嘘なのだろうと思った。






・バーチャル配信者の女と同居人の女


クリスマスもゲームをしてキャラ通りお喋りしてコメントも確認。バーチャル配信者とは大変な仕事だ。

音を立てずに新しく水の入ったペットボトルを近くに置く。部屋を出ようとした時、振り向いた彼女が声には出さず「ありがとう」と言う。画面に映る分身は笑顔のままぐりんと後ろを向き固まっていた。







・宅配便のお姉さんと在宅勤務のお姉さん


「今日も寒いですねぇ」

宅配便のお姉さんはこんな日でも変わらぬ太陽のような笑顔を向けてくれる。

人見知りだから「風邪ひかないでくださいね」とも言えない。配達地域に住みよく通販を利用するから顔を合わせることが多いだけの仲。友達になりたいなぁと思いながらはやくも二度目の冬が来ていた。






・一人暮らし大学生女と入り浸り大学生女


クリスマスの朝、と言っても昼前。枕元にあったのは二日酔いに呻く同級生。悪い夢のような光景にも慣れ、さっさと顔を洗い白湯を用意してやるくらいの余裕もできた。

「起きろアホ、午後から授業だろ」

軽く尻を蹴っても目覚める気配はない。次から出禁、の次が来ないままこんなとこを繰り返している。






・天才女とバカ女


バカだなぁと笑う声がした。彼女の罵倒は心地いい。反論しようと思えばいくらでもできるのだ。現に授業の成績だって彼女よりずっといい。

「お前は天才だもんね。今度のテストは教えなくても大丈夫かな」

「それとこれとは別」

彼女の言動なら大抵のことは許せる。彼女は人に愛される天才なのだろう。






・ギタボの女とベーシストの女


一人また一人と離れていく。ずっと一緒にやってきたベーシストの彼女でさえ。一人じゃバンドはできないのに。

「あんたの言う『たかが』や『くだらない』はうちにとってはそうじゃない……あんたと音楽やるの、しんどい」

いつだって楽しそうに弾いていた彼女に、とうとうそんなことを言わせたのだ。






・無口な歳上女とお喋りな歳下女


休み時間に廊下のガラスケースに並ぶ剥製を眺める。自分だけの楽しみという思いは、一人の下級生の出現であっさり破られた。

「お姉ちゃんこの鳥好きなの?」

四年生に平気で話しかける彼女は名札の色を見るに一年生。返事をする前にその子は一人で話し出す。長きにわたる腐れ縁はこうして始まった。






2020.12.21から2020.12.27投稿分

・佑と先生(歳の差)

・バーチャル配信者の女と同居人の女(公にできない関係)

・宅配便のお姉さんと在宅勤務のお姉さん(友達未満)

・一人暮らし大学生女と入り浸り大学生女(胡乱)

・天才女とバカ女(女子高生同士)

・ギタボの女とベーシストの女(夢と現実)

・無口な歳上女とお喋りな歳下女(幼馴染)





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