はじまりの神様-序章-

月白藤祕

壱.双子の誕生

ある処に神様の住む国がありました。そこは、すべての世界を統べる始まりの神様:アルテリアが、神々を従える大きな国でした。


ある日、アルテリアに双子の男の子ができました。アルテリアは大変喜びましたが、周囲の神々は気味悪がりました。


この国では、双子の誕生は不吉の象徴とされていたからです。


周囲の神々は、アルテリアに

"どちらか片方を殺してください。そうでないと、不吉なことが起こってしまう"

と言いました。しかし自分の子供ほど可愛いものはありませんので、アルテリアはとても悩みました。


アルテリアは周囲の神々に

”この子達が成人の儀を迎えた時、優秀な方を次の王とし、

 もう一人を罪人として処刑しよう”

と宣言しました。周囲の神々は、王の決めたことなので渋々納得したのでした。


さて、アルテリアに生まれた二人の子供たちはすくすくと元気に育っていきました。


兄はジャキアといい、弟は夜神やみといいました。兄は何事にも興味を示し、元気に外を駆け回るのが好きでした。弟は、そんな兄を見ているのが好きで、兄の遊びに巻き込まれるのが常でした。周囲を笑顔にするほど、とても仲の良い兄弟でした。


二人は父からの厳しい教育を受けました。父は二人に等しく教えました。毎日毎日二人は勉学に励みました。


そうやって過ごすある日、アルテリアは二人を連れて自分の造った世界を見に行きました。そこは、どこもかしこも戦場で、毎日のように人が殺し、殺されといった悲惨な世界でした。


二人はそんな世界を見て、

兄は戦争を引き起こした権力者に憤り、弟は亡くなった人々を思って涙しました。


その日から兄は遊ぶことを止め、父から学べることを学ぼうと、さらに勉学に励みました。弟はもっと命の儚さを知るために外に出て、多くの生き物に触れました。


こうして、二人は成人の儀までの間に多くのことを学んだのでした。

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