四夜目
怨霊となった私は、更に復讐した。
計画を後押ししたリルドランの友人を、皆自殺に追い込んだ。
毎晩毎晩、悪霊たちによる悪夢は、彼らを精神的に追い込んだ。
あっさりと自殺してくれた。
日に日に憔悴し、気が触れたように意味不明な言葉を叫ぶ友人達の様を見て恐怖するリルドランに笑いが止まらなかった。
リルドランの家、伯爵家はどんどん傾いていく。
トラブルが続き、領地は小さくなり爵位剥奪一歩手前の状態だ。
リルドランの両親は頭を抱えて、私の実家に泣きつこうとしたけれど。
私がそれを阻んだ。
あらゆる霊障で私の家に近づけさせなかった。
更に見える霊障でリルドランの家はボロボロだ。
割れる窓に倒れる家具、飛び交う本や紙にペン、破れる衣──
すっかり化物屋敷と噂されるようになった家を、リルドラン達は出ようとしたが。
当然許すはずもない。
別の家に移り住もうとしたので、その家をペチャンコに潰した。勿論、誰も死なせては居ないけれど。
それを何回か繰り返せば、当然行く当ても無くなる。
使用人たちは全て出て行った屋敷で、リルドラン達は途方に暮れていた。
「どういうことだ、これは!」
リルドランの父が、すっかり白くなった髪を掻きむしって叫ぶ。
「なぜこんなことに!」
皺が一気に増えたリルドランの母は泣き叫んで床にうずくまった。
「ぼ、僕にも分からないよ……!」
顔面蒼白で泣きそうなのはリルドランだ。
笑いが止まらない。誰にも聞こえないけど、私は大声で笑っていた。
そうだ苦しめ、誰が許すものか!
リルドランも、この男を育てた親も!
けして許さない!
「いや待てよ、こんな事が起き始めたのは、ジュリア様が亡くなられてからではなかったか……?」
ふと、父親がハッとなってリルドランの顔を見た。
ようやく気付いたのかと呆れてしまう。
「そ、そういえば……リルドランが学園に行ってる間は霊障が起きませんでしたわね」
そこで顔を覆って泣いていた母親も、顔を上げて立ち上がりリルドランを見る。
「へ?え?」
一人意味が分からないと慌てるのはリルドラン。
私は笑いが止まらなかった。
そこへ、まだ何とか形をとどめていた花瓶を床に落とす。
ガシャンと響き渡る音に、父親である伯爵が目を見開いた。
「やはりそうだ!これはジュリア様の仕業ではないのか!?お前、あの方に何かしたのか!?恨まれるようなことをしたのか!?」
「ぼ、僕は何も……!」
「ではなぜこんな事になってるのか、お前に分かるのか!?」
蒼白な顔でリルドランは首を横に振って、必死に父親に知らないと言い続けた。
それはそうだろう。
婚約者で公爵令嬢の私を毒殺したなど、即座にお家取り潰し。リルドランは間違いなく死罪だ。
絶対に知られるわけにはいかない。
「知らない!僕は何も知らない、何もしてない!」
「そういえば貴方、最近とある男爵令嬢と仲が良いそうですね」
そこで母親の伯爵夫人が、鬼の形相でリルドランに詰め寄った。
ああ、ようやく耳に入ったか。
そうよね、婚約者の私が死んでまだ一年も経ってないというのに。
不謹慎極まりないわよね。噂なんてあっという間に広がるものよ。
馬鹿なリルドラン。
馬鹿みたいに盛ったリルドランは、一年すら我慢できずに男爵令嬢を──シンディとの逢瀬を繰り返し。
めでたく、皆の噂となった。
本当に馬鹿で馬鹿でどうしようもない馬鹿で……。
私は笑いが止まらなかった。
ほどなくして。
リルドランは家を追い出され、路頭に迷う事となる。
とりあえずこいつはこれでいい。命を奪うのは後回しだ。
それよりも先に、あの女だ。
リルドランを公爵令嬢である私から奪い、私を殺させた元凶。
あの女は許さない。
リルドランは当然許せないけれど。
あの女も絶対に許さない。
私は途方に暮れるリルドランを後にして、男爵家に向かうのだった。
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