お料理マシン

 ふふふ、苦節三年六ヶ月。ついに私の設計した全自動お料理マシンが完成する。


「失礼しまーす、やぁ博士!お母さんがスターゲイジーパイ持ってきたよ」


「あぁ、マイケル。ありがとう、そこの机に置いてくれ」


 叔母さんの作るパイは美味い。だが、このマシンがあれば料理なんて自分でしなくても生きていけるようになる。


「ねぇ博士、庭のいかめしいメカはなんなの?」


「あれはなぁマイケル、全自動お料理マシンだ」


 装飾はまだ何も出来ていないが、エンジン部分がむき出しなのがまたクールだと思わないか?


「あのメカ料理ができるんだ!芝刈り機とか着いてるけどほんとに料理なんて作れるの」


「ああ、見ていなさい。ボタンぽちっ」


 ギュイィィィン… ふぅ、駆動音がイカしている…


「わわっ、中から包丁付きのアームが五本でてきたよ博士!」


「多腕はロマンだろう」


 一気にポテト、キャロット、オニオンがスライスされていく、見ていると気持ちがいいな…!


「凄いや、お鍋に入れた野菜を自動で混ぜてくれてる!相変わらず木ベラは五本あるけど…」


「大は小を兼ねると言うだろう、多ければ多いほどいいのさ」


 ギュウゥゥン…


「あれ、メカが止まっちゃった。壊れたのかな」


「違うぞマイケル。お肉投入タイムだ目の前にある肉を鍋に入れてくれ」


「もうこの時点で全自動じゃないよ博士!」


「発明に犠牲は付き物だ。仕方がないのさ」


「なんでよ、今からでもつければいいじゃない」


「容量オーバーなんだ」


「腕を十本も付けるからだよ…ていうか博士、このメカは何を作っているの?」


「まぁそう慌てるな弟子よ」


「弟子入りしてないし」


「マシンがスパイスの調合を始めるみたいだぞ。このマシンにはスーパーコンピューターに勝るとも劣らない立派なCPUを積んでいるからな。しかも最高のカレーを用意するために世界各国から様々な調味料を取り寄せた。このマシンを使えば未だ謎に包まれている国民的フライドチキンをも再現することが可能…実に素晴らしい!」


「こくまろとバーモントカレーを混ぜてるみたいだね。二つのルーを混ぜると美味しくなるってたまに見かける説あるよね」


「これも立派なCPUのおかげさ」


「ふぅん、でもさ博士。メカが作る料理なんて美味しいの?味見もしてないし、母さんの作る料理の方が美味しいんじゃないの?」


「うなぎのゼリー寄せぐらいには勝てるんじゃないか?」


「それは言えてるかもね」


 チーン


「出来たみたいだ」


「早速食べよう!」


「「イタダキマース」」


「うえ、なんだこれ。味は普通だけど匂いが…」


「ああ、何だかガス臭いな」


「メカの動力源は?」


「ガソリンだ」


「多分それだよ!なんだよ全く期待して損した。美味しいカレーが食べられると思ったのに…」


「確かに、制作中用意していた部品が余ったんだ」


「何が余ったの?」


「マフラーだ」


「お料理メカには必要ないでしょ」


「ああ、どこが間違っていたというのだせっかく作ったのに…」


「残念だけど排気廃棄かもね」|

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