第5話 パラパラでアゲアゲ

 パラパラと油の弾ける音が、布団の中にまで響いてくる。


 やれやれ、今日も朝からかい? マイハニー。


 俺の彼女は揚げ物が大好物だ。天ぷら、唐揚げ、とんかつ……連日連夜のアブラギッシュ・マキシマムなメニューに、すでに俺のリパーゼは底を突き胆のうはカラカラに干からびていた。

 胃もたれが容赦なく俺を襲うが、逆にこの苦しみが実感させてくれる。これが今の俺にとっての幸せなのだと。


「おはよー☆ おきて♪」


 やれやれ、今日の朝ご飯はなんだい? マイハニー。




 薄暗い室内で目が覚める。


 カーテンの隙間から見える空は灰色に曇り、俺の体内時計を狂わせる。

 昨夜から続く暴風雨が、パラパラと窓に打ち付けられ弾けていた。


 ……そうか、思い出した。


 散らかった室内を見て気付く。俺に、彼女なんていなかった。

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