第3話 新番組「魔法少女オハヨー&オキテ」

「アトゴフンーッ!」


「きゃぁあああっ!」


 怪人の右フックが炸裂し、少女の体が宙を舞った。

 それをもうひとりの少女が受け止める。


「マジ☆オハヨーっ! 大丈夫?!」


「マジ☆オキテ……あばらが2、3本折れたけど、これくらい平気よ」


 怪人アトゴフン──もうちょっと、あとほんの少しだけ……とやっているうちに最終的にちょっと遅刻してしまう恐ろしい敵を前に、魔法少女たちは苦戦を強いられていた。


「無茶しないで! 貴女は大事な数合わせ。私を引き立ててもらわなきゃ困るのよ!」


「心配しなくても、今夜の合コンにはちゃんと出席するわ」


「合体技で一気に決めるよ!」


「普段は陰キャでコミュ障のくせして、変身したときだけ仕切らないで」


「マジカル☆フライパン!」


「マジカル☆オタマ!」


 ふたりの少女が魔法のステッキを構える。


「せっかく作ったのに、時間がないと見向きもされない日もありました」


「昨日の夕飯の残りかと文句を言われる日もありました」


「それでも私たちは作り続ける……健やかな成長、美と健康のために!」


「それでは聞いてください」


「「マジカル☆ハヤクオキテチャントアサゴハンタベナサーーーイッ!!」」


 少女たちがステッキを重ね合わせると耳をつんざく衝撃波が生まれ、怪人の鼓膜を破った。


「ア……アトゴフッ……アト、ゴ……フ……」


 怪人の体が光の粒となって消える。


「「おはよー☆ おきて♪(決め台詞)」」


 こうして今日もまた人知れず、誰かの寝起きが守られたのだった。

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