僕の能力はなんだろう

@Yoakira

〜エピソード〜


 傘のない朽ち果てた家屋から満足にもない暖炉の火の粉が限られた飴玉を噛み砕くかのよう、弾ける音と共に消えて逝くー…。

 僕は真白の息を手に吹き掛け、真っ赤な鼻から僅かにオレンジ色に光っている水を啜った。


「ー…デルタ」


 不意に柔らかく、凛とした声が夜冬に響き渡る前に消えた。


「お師匠!」


 聞き覚えのある声に一日千秋の思いをしていたデルタだったが、寒中を感じさせないほど愉しげに振り向いた。


「廃屋から使えそうな薪を持ってきた」


「お師匠!早く、早くしないと消えてしまう!!」


「ライ、火を起こすんだ」


 少し離れた暗やみから師匠を追ってきたデルタと同弟子ライが息を弾ませ、その手には薪を抱え姿を見せた。


「ー…はい、師匠。デルタそこ邪魔。どけよ」


「ご、ごめー…わぁ!」


 ライの能力により、生命が蘇るかのよう炎が息を吹き返す。


「さ、デルタ疲れただろ?もう寝るんだ」


 師匠が能力疲労で疲れ果て刹那眠っているライを寝床に運び毛布を被せた。


「どうした?デルタ。眠れないのか?」


 僕は燃え上がる熱い炎に呑み込まれそうなほど綺麗な赤を見ていた。


「お師匠、僕の能力って何なの?」


「お前の能力はー…コントロールが困難な上に非常に危険だ。」


 ゆっくりと近付き師匠と僕の陰影が並んだ。

 座り込んだ師匠が僕の頭を力強く、けれど優しい手のひらで肩に預けさせる。


「ー…だが、コントロールを成せればお前の能力は強力になるだろう」


「僕も早く……ライやお師匠みたい……に……」


 頬から触れている肩のぬくもりを感じながら、薪が割れるのを最後に視界が闇黒に広がっていったー…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の能力はなんだろう @Yoakira

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ