58話 事の終わり1

「はは、あのおばさん本当にあのバケモノを倒しやがった」


 サントスは乾いた笑いを浮かべていた、司祭を捕まえ池に向かおうとして遠くからその光景を目にしていた。


「しかも、サントス団長。被害は最小と言っていいでしょう。我が騎士団に死者は数名でましたが、全体でみると街の被害も北側の門付近のみ、怪我人は多数出ていますが街人に死者はいません」


 そう、使者が産まれたばかりなののあったが、被害は驚くほど少ないのだった。


「我々騎士団だけでアレの相手してた場合はどうなったと思う?」


 サントスは部下に尋ねた。部下は少し思案すると。


「おそらくですが、騎士団は全滅、その後食料を得た使者がビレシワへとなり国が滅んでいたかと」

「うはははは、そうだよな。そうなるよなぁ」


 サントスは部下肩を叩いて笑った。


「さて、私達も街の片付けを手伝うとしようか」


 サントス達が移動しようとしたときに、一行の前に飛竜が数匹降り立った。

 飛竜からは先ほど駄々こねてた国王が降りてきた、サントス一行は何とも言えない表情になっていた。


「おお、サントスよ。首尾はどうだ?」


 何の前触れもなく、そして緊張感の欠片も無く国王は飛竜から降りた途端にサントスに状況を聞いてきた。


「王よ突然やってきて何がしたいのですか?」


 サントスは呆れた様子で国王に返す。普通に考えると国王に対して随分な塩対応である。

 塩対応なのも気にせず、サントスの問いに答える国王。


「うむ、皆の者をねぎらいに来たのだ、それで今の状況はどうなっておる? ワシが来たからには皆のテンション爆上がりじゃろ?」


 何言ってるんだコイツ? この国の国王大丈夫か?


「王よ、来たところ悪いが。この件はすでに終わったよ。アンジェリカというオバさんがあの使者と呼ばれる化け物を倒してくれたよ」


 サントスの言葉を聞いて国王はびっくり。


「な、なんと? もう終わったじゃと?」

「ええ、オバさんが優秀でしてね」


 サントスの話を聞いて驚く国王、それはそうだろうオバちゃんがラスボス倒したとか普通はあまり聞かない。


「サントス、そのオバちゃん……ご婦人に挨拶せねばならんだろう! 案内せい」


 オバちゃんをご婦人と言い直す辺りは国王であった。


「んぐぅ、仕方ありませんな……」


 こうして知らぬ間に国王とアンジェリカ達が出会うことになったのだった。


 ――

 ――――


 アンジェリカ達は町長の屋敷に集まっていた。

 あんな大騒動があったにも関わらず街の被害も人的被害も少なかった。

 数名の犠牲者である騎士団のメンバーの遺体も街の教会へと運ばれていた。


「おお、アジャルタさん……本当によくやってくれた」


 町長が涙と鼻水で顔をグシャグシャにしつつアンジェリカ達を迎えてくれた、正直きたねぇ

 皆疲労が凄かったが、表情は晴れやかであった、自分たちで街を守ったと泣く者もいた、やり切った顔をしているものもいた。


「ええ、ええ、孫の為に頑張ったわよ」


 アンジェリカも満足げな顔だった。ヴィヴィアンもやり遂げた顔で像を抱えていた。

 さて、これからも忙しくなるぞと言うところで屋敷のドアが開いた

 そこにいたのは、国王であった。

 王の姿を確認した町長はあんぐりと口をバカみたいに開いて動きを停止したのであった。


「え? あ? 国王陛下?」


次回は『事の終わり2』になります


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る