43話 プロジェクトG
アンジェリカの作戦を聞き終えた面々、ヴィヴィアン以外は何ともいえない顔をしていた。
「どうなんだいそれ? やってみないと何とも言えないが」
最初に口を開いたのはメルリカ婆さんだった。
「油黒虫に似た生態であるならば可能性はあるが、一応は神の使徒であろう?」
「そう言われるとそうなのよねぇ、でもアレどうみても油黒虫じゃないの」
そして、リヴァイアサンも踏み切れないようであった。
しかし、マーシャやゼノ達は違った。
「んー、ボクはアジャルタさんの作戦に乗ってもいいと思うっすね」
「ああ、俺も賛成だ」
「以前調査に来た騎士団の攻撃を全部弾いたそうですし、こちらの攻撃が通用するかもわからないですしね」
リノが騎士団の話をするとヴィヴィアンが頷きながら話した。
「む、我が家に伝わってる、む昔の文献だと、し、使者はビレシワの魂を護るために『鋼鉄のごとし硬さと絶対的な魔法防御』を持つ化け物だったと、し記されていた」
ヴィヴィアンが記憶を辿り使者の防御面の話をする、それを聞いたマーシャは渋い顔をしていた。
「うへ、聞くだけで嫌になるっすね」
ほぼ無敵、実に子供が好きそうな防御力である。
「あー、だから騎士団の攻撃にびくともしなかったんですね」
リノは渋い顔しながら先日の騎士団の調査(いきなり攻撃)結果についてを納得していた。
「しかし、騎士団のあの猛攻にあってもぴくりとも動かなかったのはなんででしょうね」
リノは疑問に思ったことを口にした。
その疑問に答えたのはヴィヴィアンであった、記憶の戻ったヴィヴィアンはビレシワの使者及びビレシワのエキスパートであった。
「姿こそ成虫だけど、アレはまだ蛹のようなもの、だから攻撃しても大丈夫。それより問題はそろそろ卵から残りの使者の使いが産まれてくること」
「使者の使いですか?」
リノは使者の使いについてヴィヴィアンに尋ねた。
「使者へ餌を運ぶ係、使者はエサを食べ成虫へと成長する、そうなると自分から動き出し更なる餌を求める、使者がさらなる餌を確保するとビレシワがよみがえってしまう、なので、そうなる前に倒して死者の魂を封印の像へ再び封じたい」
なんか、さらっとついでに重要な目的まで話しているヴィヴィアンであった。
「そうなると、やはりアジャルタの魔法を撃ちこんでみる価値はあるね」
蛹のような状態と言う事なので動くことはほぼ無いようなので、最大火力をお見舞いしてみようと言う意見が再び出てきた。
「そうですね、それでダメならアジャルタさんの作戦を実行しましょう」
「そっすね、蛹の時点で倒せるならそれに越したこともないっすものね」
「そうねぇ、物は試しにやってみましょうか」
リノやマーシャ達にもモノは試しと勧められたので、アンジェリカもでは試しでやってみようと言う事になった。
――
――――
使者の近くまでやってきた一行。
非戦闘員であるサーシャまでちゃっかりついて来ていた、上空から使者を見下ろす。
使者を退治するために編成されてやってきた騎士団にメルリカ婆さんが事情を説明し、今に至るアンジェリカの攻撃がきかなかった場合、アンジェリカの立案した作戦へ移行する際の協力も取り付けていた。
メルリカ婆さんは王国にも顔が利くようで作戦の事もすんなりと受け入れられていた。
「うーん、やっぱり見た目悪いわねぇ。あの種は基本雑食だけど肉を好むタイプなのよ、羽は無いから飛ばなのが救いね」
「あんた、油黒虫には詳しいねぇ」
「オバさんや主婦の敵ですもの、敵を知り己を知ればってヤツよ」
そして、皆が見守る中メルリカ婆さんの箒にアンジェリカも乗ると、使者の上、上空へと昇って行った。
「本当に動かないねぇ、どじるんじゃないよ」
「しかも、あの大きさだから流石に外さないわよ」
そういって魔力の球を作り出す、凄まじい魔力がアンジェリカの元に集まっていく。
それを見た王国騎士団のどよめきが凄まじかった。
「あのオバさん何者なんだ? 凄まじい魔力だぞ」
「ええ、宮廷魔術師一〇人分、いやそれ以上の魔力量よ」
騎士団の魔術師の男と女が話し始めた、すると騎士団長のサントス、ロウエル両名が話に加わった。
ロウエルって誰よ? って思うかもしれないが第三騎士団の団長である、豪快なオッサン風のサントスと違って、ロウエルは髪の長い優男だ。
「あのオバさんはそんなに凄いのか? 私は魔力を感じないので凄さが分からん」
サントスが魔術師たちに話しかけた、すると魔術師は敬礼して答える。
「は! はい、おそろしいほどの凄まじい魔力です」
男の魔術師が答えた、するとロウエルも賛同していた。
「ええ、サントス卿、彼の言う通りあれは凄まじい。魔族以上魔王に匹敵する魔力です」
「普通のオバさんだぞ? 人は見かけによらんもんだなぁ、はっはっは」
豪快に笑っていた。
「あ、あれを見てください、どうやら魔法の準備がおわったみたいです!」
今度は女の魔術師がアンジェリカ達の方を指さしていた。
「サントス卿、彼女の魔法で傷一つ付かないようなら我々は来た早々お手上げですよ」
「なんか一応これでダメなら次の作戦があるみたいだったけどな」
王国騎士団長が見守る中アンジェリカは魔法の準備を終えたのであった。
次回『だめだこりゃ、次行ってみよう!』こうご期待?
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