36話 悪神ビレシワ
アンジェリカ、リヴァイアサンとマーシャにリノゼノは森の中にいた。
本日はマーシャ達が受けた依頼にアンジェリカも同行していたのであった、マーシャ達の依頼はこの森に最近出没するようになったモンスターの討伐であった、そしてアンジェリカはこの森に生息すると言う虫の採集である。
「はぁ、目的のモンスターも無視も見つかりませんね」
リノが肩を落とし、ため息交じりにぼやいていた。妹がぼやく中、兄は地面を注意深く観察しながら進んでいた。
「マーシャ、依頼の魔物ってのは巨大なイノシシのような魔物って話だったな」
「そっすね、普通のイノシシの三倍くらいの大きさで背中には苔が生えてるそうっすよ」
「なるほどな、そうなると得物に近付いてるぞ」
ゼノが地面を指さして皆を呼んだ。
「これを見てほしい」
「あらまあ、これは大きな蹄の後ねぇ」
そしてアンジェリカが何かをつまんで持ち上げた。
「これは? 苔と動物の毛かしら?」
「苔と体毛か、なるほどな目撃情報の特徴と一致するわけだな」
アンジェリカのつまみ上げたモノを見たリヴァイアサンも頷いていた。
ゼノがリヴァイアサンの
「リヴァイアサンの言った通り、多分そいつは目標のモンスターのモノだと思う。蹄跡はここまで来て引き返してる跡がある、こいつを辿れば巣があるかもしれない」
ゼノがそう推理していると、リノが蹄跡を見つつまたまた肩を落とした。
「兄さん……この蹄の跡どうみても三倍以上ないかなぁ」
「まあ、五倍はあるよな……」
ゼノが苦笑いしつつ答えた。ゼノリノ兄妹が目標がとんでもない相手だと項垂れているのに対して、何故かアンジェリカは気合を入れていた。
「このサイズだと食べがいがありそうね!! イノシシみたいなモンスターなら食べられそうよね」
ということだった。
――
――――
「……」
ヴィヴィアンが何か虚空を見つめていた、それは割としょっちゅうな気もするが。いつもと何かが違う。
それに気づいたのかメルリカ婆さんが話しかけた。
「ヴィヴィアンあんたどこみてるんだい?」
話しかけられた後も少し見ていたが、やがてメルリカ婆さんの方を向きながら普段よりはしっかりとした口調で答えた。
「嫌な、ケハイがする」
そのしっかりとした口調に違和感を覚えるメルリカ婆さん。
「ヴィヴィアン、アンタ何を思い出したんだい?」
首をカクンと四五度傾けながらヴィヴィアンは口を開いた。
「ワカラナイ、完全には思い出せない、頭に霧がかかってるようだ、でも、とても邪悪な何かが動き出そうとしてる」
「ヴィヴィアン前より流暢に話せてるねぇ、アンタ一体何者なんだい?」
「イマはゾンビ」
ただ、ヴィヴィアンの記憶が、日に日に鮮明になってきているのは確かな事だった。どうもそこが引っかかるメルリカ婆さんであった。
(こいつは、もう一度試験場の隠れたエリアを調べないとだめかもしれないね。探索や探知の得意な冒険者でも雇ってみるかね……ん? そう言えば一人いたじゃないかねぇ)
メルリカ婆さんが最近までここの生徒だった背の高い女性の事を思い浮かべつつ。探索部隊を編成するために学園長をどう丸め込もうか考えるのであった。
――
――――
アンジェリカ達が普通の生活を送っている間に、せっせと正直どうでも良い目的で暗躍する者たちが今日も頑張っていた。
バーモント卿と部下数名がとある建造物の中を進んでいた
「まさか最近見つかった迷宮が、ビレシワ様に関する場所であったとは」
「ええ、ここと魔女学園の試験で使っていた場所。両方がビレシワ様に関わる場所だったのは盲点でした」
突然ビレシワなる聞きなれない単語を連呼する危ない集団。様と呼ぶからには名前のようである。
まあ、ぶっちゃけサブタイになってる時点でお察しだが……
「ここと、向こうにある祭壇にビレシワ様の像を置く」
バーモント卿がビレシワの像が入った箱を眺めながら呟いた。
「はい、バルトン教授と我ら祖先が残した書物を照らし合わせるとそうなります」
「いよいよなのだな?」
「間もなくかと。復活の儀が成功すれば、ビレシワ様の使いが降臨し人の魂を万捧げれば神は復活されるとなっております」
万とかとんでもない事を言ってる狂人ども、その目的は不明であった。
「ふふ、ビレシワ様が復活されれば一度人類を滅ぼし新たな世界を創造してくださる。我々は新たな人類の祖になるのだ。悪神、邪神、破壊神だの唐変木だの黒光りするクソ虫だのと言われてきたビレシワ様だが、その本質は浄化と再生の神であることは我々だけが知る事実」
「ええ、バーモント卿。我々は新たな歴史に立ち会うのです」
……目的不明とかいったそばから彼らの目的があっさりと露呈してしまった。
さて、狂人たちがモンスターを蹴散らしつつ進んでいくと、そこには物々しい装飾の扉が現れたのであった。
そしてこの作品の主人公は狂人達が計画を進める中、イノシシ型のモンスターを追い回していたのであった。
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