27話 釣り竿って武器じゃないから!
リッチはふわりと浮くと、一行目掛けて光の矢を放つ。
「以前の釣り竿の謎機能を改造した新機能よ」
アンジェリカは釣り竿の糸を短くし素早く回すと糸が光だした、そして回転した糸で光の矢を防いだ。
「なんと非常識な防御方法だ……」
「ワケわかんねーっすよね」
リヴァイアサンとマーシャが苦笑いする。
リッチも謎の防御行動で魔法を止められたのが気に入らないのか、光の矢を撃つのをやめる。
攻撃が止んだのを確認するとアンジェリカが今度は釣り竿を振りかぶってリッチ目掛けて振り下ろす。
「そーら! ガイコツの一本釣りよー!」
釣り針が見事リッチのマントに引っかかると、アンジェリカは釣り竿を大きく振りあげた。
「!?」
リッチは引っ張られ天井に激突する。すると鈍い音と共に天井からホコリが落ちてくる。
「な、なんて攻撃だよ、アジャルタさん滅茶苦茶だな」
「オバさん、意外と力持ちなのよー。昔は良く漁の手伝いもしてたのよー」
別に漁に出てるわけではない。だが事実重いものを運ぶことも多く見た目以上にアンジェリカは力持ちである。
「つくづく主は訳が分からないな、見た事無いぞ釣り竿で戦う魔女なんてものは」
「ふふ、オバさんは時代の最先端を行ってるのよ」
しかし相手も上位アンデッド、ダメージを受けてもまだまだ余裕であった。
再びふわりと浮くとリッチは力任せに糸をローブから外した。
「まだ余裕みたいねぇ」
「そっすね」
リッチは先ほどより大きい光の矢を放った、一行は慌てながら避ける。
「うひー、避けるのは苦手よー」
アンジェリカの避け方は非常に情けない、ワタワタと転びそうになりながら避けている。
マーシャはひょいっと横に飛んで避ける、ゼノとリノも慣れた感じに後ろに飛んで躱す、ここら辺はやはり慣れの差である。
アンジェリカが転がってる間にも、リッチは次の攻撃を繰り出そうとする。
「ゼノ!」
「あいよ!」
マーシャは槍を構えると同時に、緑の魔法陣を空中に描く。
魔法陣を書き終えると大きく右回りに走りリッチへと近づく、そしてゼノが魔法陣目掛けてナイフを投げる、すると魔法陣から風が起こりナイフが風を受けて加速する。勢いを増したナイフがリッチの顔を捉える。
慌てて顔を護るリッチ、そこに横からマーシャの飛び膝蹴りがリッチの横っ面に決まる。
たまらずリッチは横に吹き飛び壁に激突する。
「ほう、大したものだ。風の魔法を上手く使う。マーシャはやはり実戦で力を発揮する魔女のようだな」
「オバさんも頑張らないとねぇ、オバさん魔法道具作りと対油黒虫の研究しかしてないものね」
「なんで油黒虫を倒すことばかり考えるんですか?」
「奴らは人類の敵だからよ!」
謎の使命感に燃えるアンジェリカであった。
「釣り竿にはこんな使い方もあるのよ」
アンジェリカは釣り糸に赤い魔法の球を括り付けるとまたまた釣り竿を振り上げる、そしてまたも振り下ろす。
微妙な勢いで飛んでいく魔法球をリッチは難なく避ける、しかし釣り竿を器用に操り魔法球をリッチの左り腕辺りにぶつける。当たった魔法球が破裂し炎上した。
「!!」
リッチの左腕が無くなると、リッチは眼前の敵が想像以上の強敵と判断する。
するとリッチの目の部分に赤い火がともった。
「不味いっすね、リッチが本気になったっすよ」
飛び膝蹴りを入れたあと、アンジェリカの竿攻撃中に一行に再び合流していたマーシャが呟いた。
マーシャの呟きによってアンジェリカ、リヴァイアサン以外のメンバー全員が表情を引き締める。
「……ふむ、すまないがリッチごときそう警戒せんでよいのではないか? リッチロードならいざ知らず」
「リッチごときって、リッチは人間が相手するにはキツイモンスターなんすよねぇ……」
ごときと言い出す魚の尻尾。
リッチは人間には十分すぎる脅威である、しかしここは上位悪魔であるリヴァイアサンと人間の感覚の差であった。
「なるほど、確かに人が相手をするには難敵だな」
リッチは先ほどまでは光の矢を撃ってきてただけであったが、今度は光の矢ではなく光弾を放ってきた、しかも狙いはアンジェリカである、どうやらリッチはこのオバさんが一番危険と判断したようだ。
「あら? オバさん狙いなの?」
アンジェリカはそう叫びながら頭を抱えて逃げまくる。一発、二発と避ける、案外当たらないものだ。
「はひー、キツイわー」
所詮は最近まで普通だったオバさんだ体力はそこまで高くはない。
「こ、これは。オバさんも体力をつけないと、だ、ダメねぇ」
「ふむ、主が避けて粘ってる間に我がやるとするか」
主人を餌にリッチを倒そうとするリアイアサン。護ってやれよとは言いたい。
「主よ少し粘っているんだぞ」
「えー」
思いのほか余裕なようだ。
「マーシャ、ゼノよ少しだけ主からリッチの気をそらしてくれんか? 我が終わらせよう」
「了解っす」
「わかった」
ゼノとマーシャがリッチの左右に分かれた。
リッチはまだ執拗にアンジェリカを狙っている、しかし何気に器用にヒーヒー言いながらも避けている。
「早くして―、オバさんそろそろ限界よー」
「体力を徐々にですが回復する魔法かけます」
リノがアンジェリカにサポートの魔法をかける。
「す、少し楽になったけど。な、長くは持たないわーふひー」
やはり割と余裕なようだった。
「そーら、骨こいつを喰らうっすよ!」
マーシャが小瓶を投げつける、その小瓶めがけてゼノがナイフを投げた。
パリンという音ともに液体がリッチに降りそそぐ。
「!?」
液体がリッチに触れるたびにシュウシュウと言う音と煙が立ち上る。
「神の祝福の雨っすねー」
「素直に聖水と言え」
聖水で動きを止めるリッチだが少し悶えただけで、そこまでのダメージは無いようだった。
「やっぱ、上位のアンデッドにゃ効果薄いな」
「仕方ないっすよ、流石にリッチは想定してないっすからね」
「いや、それで十分だ!」
リヴァイアサンがそう叫ぶとワカメの手を地面に置き、魔法を放つ。
「ディープ・プレッシャー!」
リヴァイアサンが魔法を使うとリッチの下から水の手が出現しリッチを掴む、すると水の手はリッチを覆うようにして水の球へと姿を変えた。
「この魔法は威力はすさまじいが、初動が遅くてな躱されることも多い」
魚の尻尾がリッチの方を見る。攻撃が止んだことによって、アンジェリカもヒーヒー言いつつリヴァイサンの元へとやってきた。
「だが、マーシャ達のおかげで捕らえたぞ」
「大したことしてないっすけどね」
リッチは水の球から脱出しようともがく、しかしそこは大悪魔リヴァイアサンの魔法、簡単には抜けられない。
「あがくな! 今とどめを刺してやる」
リヴァイアサンが力を込めると、リッチは水球の中で水圧により押しつぶされた。
「まさか、リッチが出てきてここまで楽に終わるなんてなぁ」
「私達だけでリッチを相手にするなら、全滅も覚悟しないといけないものね」
ゼノとリノ今回何度目の感心なのか? そう、リッチはかなり強力な魔物なのだ、本来はここまであっさり勝てる相手ではなかった。
「リッチって強い魔物なのね、オバさん初めて知ったわ。少し強いスケルトンだと思ってたわー」
オバさん、正直普通のスケルトンとの区別はついていない。
「しっかし、リッチまでいるのは想定外すぎっすよ……ここやっぱハズレダンジョンっすね」
マーシャは頭の後ろで手を組み、辺りを見回した。
「宝箱も無いっすもんねぇ」
「とりあえず、上に行ってみぬか?」
「そっすね」
こうして一行は最上階に向かうのであった。
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