8話 素材倉庫に行こう

「よーし、そろってるかい? そろってるね。それじゃあ今日の授業を始めようか」


 今日もメルリカ婆さんの出席確認から一日が始まる。

 そして相変わらず出席は取らない、そういったスタイルなのかと思うが、まあ生徒四名プラス一匹だからね!


「まずは何を作るか決める所から始めようか? とりあえず一時間ほど何を作るか決める時間にするかね。よーく考えるんだよ」


 メルリカ婆さんは何かを思い出したように、注意事項を付け足す。


「あ、そうそう言い忘れたが。今日は学園に貯蔵されてる素材を使っていいことになってる。なのであまり変なモノは作ろうとするんじゃないよ、妥当なところで簡単な薬や小さなアクセサリー程度にしときなよ」


 メルリカ婆さんがそう言うと、生徒一同は話し合いを開始した。


「ふふ、今日は魔女の道具を作る授業よね? オバさんが一番興味あるジャンルね」

「ボクは身体能力向上とかの強化魔法に興味があるんスけどね。道具かぁ何作ろうかなぁ」

「なら強化の薬とかどうかしら?」

「んー、そうッスね。それが妥当ッスかね?」


 元々は冒険者であったマーシャはやはり、冒険に役立ちそうなアイテムが良いようだ。そうなると強化の薬なんかは確かにうってつけである。


「私は、人前であがらない魔法ですかね?」

「それ、おまじないッスよね?」

「あがらないような効果の道具を作ればいいのよ」

「そ、そうですね!」


 ルーシアは身体をくねらせて、アンジェリカのあがらないようにする道具の作成に賛同した。


「そうなるとお守りみたいな道具ッスね」

「き、今日はそれを作ってみますね」


 ルーシアもあっさりと今日作る道具を決めたようだ。そしてアンジェリカはヴィヴィアンの方を見るとヴィヴィアンに尋ねた。


「ヴィヴィアンは何を作る気かしら?」

「うぅぁ、防腐、剤。かからだが、腐らないように……する」

「な、なかなかリアルな理由ね。魔法の防腐剤、面白そうね」


 ゾンビらしい切実な悩みである、そしてその答えが防腐剤であった。しばらく全員でワイのワイのと相談していたがそろそろ時間のようであった。


「よーしそろそろ時間だよ。それじゃあ何を作るつもりだい? まずはヴィヴィアンから順番に言ってみな」


 ヴィヴィアンから順番に、メルリカ婆さんに作るものを伝えていく。


「ヴィヴィアンが防腐剤でルーシアがお守り。マーシャが身体強化の薬……でアジャルタ、アンタは?」

「全自動箒」

「へ? 全自動箒?」

「勝手に掃除してくれる箒ね、これがアレば掃除が楽になると思うのよ」


 なんとも主婦的な思考、しかしそれはとても実用的である。この世界にル〇バは無いのだ。


「なるほどねぇ、アンタは高い魔力を持つ割には思考は地味だねぇ」

「オバさんですもの」

「まあ、いいや。とりあえずアンタたちの作ろうとする物の材料なら、多分ここの在庫で揃うはずだよ。よし、倉庫に取りに行くかね。ついてきな」


 婆に引率されて倉庫に向かう生徒たち、そして見えてくる倉庫の扉。厳重で重厚な作りの扉はなんかどう見ても地獄門、妖怪じみた魔女の引率がさらにそのように見せている。


「な、なんなんでしょうね、このデザインの扉……なんで倉庫の扉の前に、ガーゴイルの像が二体並んでるんですか」


 ルーシアは図体の割には気が小さいので、マーシャの後ろに隠れていた。そして盾にされてるマーシャも苦笑いを浮かべつつ言った。


「まあ、そっスね。扉の周りにやたらゴツイスパイクついてますし。どこの地獄門だって感じっすね」

「我のいた魔界でもここまでゴツイ門は見た事が無いな」


 魔界より凄いデザインの門のようだ。


「でも、この扉だと倉庫だと思って、盗みに入る人は少なそうね」


 さり気にアンジェリカがそう言うと、メルリカ婆さんも含め。ああ、そうかもと納得した顔をしていた。


「そう言えばここは別に警備も置いてないのに、盗みに入られたことはないねぇ」

「この見た目、普通の盗賊なら入ろうと思わないっすよ」

「まあ、いいや。素材を取りにいくよ」


 メルリカ婆さんが鍵を開けるとゴゴゴと重厚な音ともに扉が開く。

 そして壁のパネルに触れると、壁の石が光だし倉庫の中が明るくなった。中には棚が大量においてあり、そこには色々な薬草や、どう見てもガラクタにしか見えないものと色々置いてあった。


「面白いわね、コレとか何に使うのかしら?」


 アンジェリカが何かをつまんで見せた、それは綿のはみ出たウサギのヌイグルミである。


「ああ、そいつは相手を呪う呪術に使う事が出来る人形さ」

「呪いって物騒ねえ……」


 流石は魔女学校、相手を呪うための道具を作る材料が普通に置いてある、というか学校の授業でそんなことやんなよと言いたい気もする。


「……そうなると、これも相手を呪う道具を作る材料なんすか?」


 マーシャも人形を持っていた。着物を着た長い黒髪の童女の人形である。


「あー、そいつは注意しな。それ髪の毛が伸びる曰く付きの人形なんだよ。持ち主に不幸をもたらす。ようするに呪いの品だね」

「ちょっと! なんてものが置いてあるんスか!」


 慌てて元の場所に戻すマーシャ、地獄門は案外的を得ているのかもしれない。


「ひぇっひぇっひぇ、魔女の倉庫さユニークなアイテムもそりゃ置いてあるさ、その人形なんていまでも少しづつ髪の毛が伸びてるんだよ、面白いと思わないかい?」

「不気味なだけっスよ……」


 少し離れた場所ではルーシアが色々とビビリまくっていた、ビビリのくせしてこういう時にはやたら行動が早い奴っているよね。


「うひゃー、なんですかこの不気味な石の仮面は!」

「間違っても被るんじゃないよ、バケモノになりたいなら止めないけどね」

「まるで呪いのアイテム博物館ねぇ、オバさん呪いはあまり興味ないのよ」

「悪魔の我が言うのもなんだが、ここヤバくはないか?」


 なんか呪いのアイテム多すぎじゃないか? ここ? 誰しもが思っているところだが、メルリカ婆さんは、マイペースに必要そうな材料を指示して持ってこさせている。


「ほらほら、呪いのアイテムはどうでもいいから、さっさと材料集めてきな」


 こうして地獄門から材料を回収して教室に戻る一行であった。

 次回へ続く。

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